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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第三部♚第一章◆【鳥居香姫は不可思議な賢者の暴走に疲れ果てる】
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第二十話 アリヴィナの行方

 事件の経緯を説明し終わると、澄恋とジュリアスは納得してくれた。


「香姫さん? ロイドさん宛のカードはまだある?」とジュリアスは微笑んだ。


 私もそう思っていたところだ。すぐに、アリヴィナの机の中を確認する。


「待って。あれ? 何もないみたい……。空振りかぁ。カードの実物さえあれば何とかなると思っていたけど」

「僕も、カードが手元にあれば、仮面のシャンベリーを追跡できると思ったんだけどね?」


 私とジュリアスは考え込んだ。そんな私たちを見て、澄恋は「フフン」と笑った。


「な、何、澄恋君……」

「こんな簡単なことに気づかないのかなぁと思って」


 私とジュリアスは顔を見合わせてから、澄恋を見た。


「景山君? 嫌味を言う前に答えを言ってくれるかな?」

「そうそう!」私は真剣にジュリアスに同意する。

「でないと、香姫さんが可哀想だよ?」

「そうそう! ん? 何で私だけ!?」


 ジュリアスは楽しそうにクスクスと笑っている。


「だって、僕は分かっているもの。景山君、つまりキーワードは机の中でしょ?」

「ええーっ! それだけじゃわかんないよ!」


 私が嘆くと、澄恋はあははと笑った。


「シェイファーご名答! 香姫、机の中をずっと可視してみれば、机の中にカードを入れた人物も、シャンベリーの正体も分かるんじゃないの」

「あ、そっか! 澄恋君もジュリアス君も頭良いー。それもそうだね! 早速、可視してみるね!」


 私は、アリヴィナの机の中を覗き込んだ。机の中はがらんとしている。

 データキューブで教科書とノートの類をまかなえるので、殆どの生徒は、机の中をいつもすっきりさせているのが常だ。これなら、分かりやすくて助かる。


「はぁああ!」


 私は残留思念の時間をさかのぼって可視する。

 すると、机の中にパッとカードが現れた。

 これってもしかしなくても瞬間移動の魔法!?


「ええっ!? 脅迫状のカードが机の中に瞬間移動してきたよ!?」


 振り返ると、澄恋とジュリアスは苦笑いしていた。


「まじで……?」澄恋が呆気にとられている。

「瞬間移動先は可視できる?」とジュリアス。


「どこから瞬間移動してきたのかは可視できないよ。実物があったら別かもしれないけど……」


 こんなのアリ……?


「じゃあ、後は脅迫状のカードを読んだ後のアリヴィナさんの跡をつけるしかないね?」


 ジュリアスが言ったので、私は神妙にうなずいた。

 アリヴィナはどこに行ったんだろう?

 私の眼は疑問を持ったので、可視状態になる。

 残留思念をさかのぼるが、それほど時間は経っていない。


「こっちだよ!」

「ああ」

「わかった」


 私は、澄恋とジュリアスを先導して、可視しながら教室を出て行く。先頭を歩いて行く残留思念のアリヴィナは、いろんなところを探っている。アリヴィナは立ち止まって空を見上げた。今は夜空に星が輝いていて、廊下の照明が明々とついている。


「アリヴィナさん、どこに行くのかなぁ?」

「多分、仮面のシャンベリーを探そうとしているんじゃないかな?」


 ジュリアスの答えはもっともだ。

 アリヴィナは、そのまま屋上の階段を上がっていく。すると後ろから声がかかった。


「鳥居! アリヴィナ居たか!」


 ガーサイドだった。ガーサイドも今まで散々アリヴィナを探していたらしい。


「いなかったけど、後は屋上を探すだけなの!」


 ガーサイドは私が可視できることを知らないので、もっともらしく私は答えた。そして、そのままガーサイドと同行する。

 私たちも階段を駆け上がっていく。

 屋上のドアを開けると、夜風が吹き込んできた。サアッと木々の鳴る音が聞こえる。


「アリヴィナ!」

「アリヴィナさん!」


 声を張り上げると、向こうから人が歩いてきた。


「あれ? みんなおそろいで、どうしたんだ?」


 のんきそうな声を出して、目をぱちくりしている。

 それは、アリヴィナ・ロイドだった。

 私は安心して胸をなでおろした。


「よかったぁ。アリヴィナさんが、脅は――」


 誰かに後ろから口を手で押さえられてしまった。


「香姫さん? 危ないねぇ?」


 私の口を押えたジュリアスはクスクスと笑っている。


 そ、そうだった。脅迫状の事は可視した私たちだけしか知らない事だった。危うく、自分が可視使いのことまで暴露してしまうところだった。


 ジュリアスが、にっこりとほほ笑んだ。私は目だけで苦笑する。

 澄恋が、疲れたように笑って、半眼をこちらに向けている。

 アリヴィナが、怪訝そうな顔をこちらに向けてきた。


「何だって?」

「いや、ガーサイド君がロイドさんを探していたからね?」

「そうそう。誘拐されたのかもしれないってみんなで探しまくってたんだぜ」


 それを聞いたアリヴィナはハッとしたように「あー!」と、声を上げた。


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