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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第三部♚第一章◆【鳥居香姫は不可思議な賢者の暴走に疲れ果てる】
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第十一話 転校生……?*

 腕輪の事が気になって、昨日の夜から流れる時間がやけにゆっくりに感じていた。無事に朝を迎えた私は、教室に入ってもそわそわしている。


 ジェラルディン・シャード先生に『賢者の腕輪』の事を相談しようと思っていた。『べっこうの腕輪』ではなく『賢者の腕輪』と呼ぶことにしたのも、あの事件があったから。


 ともかく、シャード先生は、私がこの異世界に来てから、何かと親身になって相談に乗ってくれる先生だ。彼を頼るしかない。今のところ、賢者の腕輪は大人しいが……。


 チャイムが鳴って、やっとシャード先生がファルコン組の教室に入ってきた。そして、ショートホームルームが始まった。

 シャード先生は教壇に立ち、生徒たちを見渡した。私が、シャード先生に意味深に見つめられた。なんだろう? 私は瞬きした。


「今日は、新しいクラスメイトを紹介する」


 新しいクラスメイト? また転校生なのか?


「入ってきなさい」

「はい」

「っ!?」


 ドアが開いて、可愛い系の男子が入ってきた。

 入ってきた転校生を見て、私は吃驚して腰を抜かしそうになった。

 彼は、軽く一礼した。


「景山澄恋です。よろしく」


 昨日、ぶかぶかな魔法研究所の制服を着ていた澄恋だが、今はちょうど良いサイズの魔法学校のローブと制服に身を包んでいる。


 澄恋は、私を見つけてにっこりとほほ笑んだ。

 ええっ!? 澄恋が同じクラスに!?

 何度夢見たのか分からない妄想が現実に……!


 隣のジュリアスも驚いていた。

 澄恋は、してやったりの顔で微笑んだ。不敵に口元を吊り上げる澄恋を、ジュリアスはじっと睨んでいた。


「鳥居さんと同じ異国の人だー!」

「なんか可愛い!」


 生徒たちは、転校生の澄恋を見ておしゃべりに花を咲かせている。特に、女子たちは澄恋にハートの視線を送っている。

 澄恋はどこでもモテる。可愛くなってもモテるだなんて。景山澄恋、恐るべし。


「席は、鳥居の後ろにでも座って貰おうか?」

「はい」

「さて――」


 シャード先生はそのまま話を再開している。そして何事もなく、ショートホームルームは終わった。

 シャード先生にお説教されるのかと一瞬焦った。やっぱり、シャード先生に相談するのは止めておこう。そう決心した時、チャイムが鳴った。


「では、ショートホームルームを終わる。あと、鳥居には話があるので放課後残っておくように」

「えっ!?」


 シャード先生はこちらを見て、ニヤリと笑った。そういえば、元の姿の澄恋をシャード先生は知っていたような……? すでに、事件の詳細を澄恋から聞いたのだろうか、それともシャード先生は何でもお見通しなのか。どうやら、シャード先生に隠し事をすることはできない事だけは理解した。


「ううっ、分かりました」


 私は白旗を上げて降参するのだった。


「香姫」


 休み時間になった途端、後ろの席の澄恋が声をかけてきた。澄恋は笑顔を浮かべてご機嫌だ。


「まさか、香姫と同じクラスで授業を受けることになるとはね」

「びっくりしたよ! もしかして、男子寮で寝泊まりするの?」

「そういうこと。シャード先生にお願いして、もう荷物を運び終わっているからね」


 何時の間に……!


「で、でも、魔法研究所は?」

「アレクシスの許可をもらったから大丈夫だよ」

「ふ、ふーん」


 澄恋はアレクシスを呼び捨てにした。王子と付けない限り、アレクシスはありふれた名前だ。周りにバレないようにする私への配慮か。


「澄恋君、ちょっといい?」


 一通り、私と話し終えた澄恋は、女子たちに捕まって質問攻めになっていた。私はすっかり蚊帳の外に追い出された。


 しかし、何を話していたのかは知らないが、この休み時間以降、澄恋に女子が群がることはなくなった。そして女子は、物言いたげな顔で遠巻きに眺めるのみとなった。


 澄恋はモテるのが嫌だったのだろうか。しかし、一体何を話したのやら……。



------------------------- 第161部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

第十二話 魔法会へのお誘い


【本文】

 それから、二時間目の休み時間の事だった。次の授業は古代魔法学だ。古代魔法学の教室に移動したときに、やけに廊下が騒がしいことに気づいた。激しく応酬している声がこちらまで聞こえてくる。


「どうしたんだろう」

「さあ?」


 澄恋の問いに答えられるはずもなく、私は首を傾げた。


「リリーシャさんが上級生に声をかけられているんだよ」


 と、クラスメイトのジェイク・グレンが教えてくれた。


「いい加減にしなさいよ! アンタたち!」


 それにしてはリリーシャは喧嘩腰のような気がするけど……。


「リリーシャさんが? 一体何の用で?」


 ジュリアスがグレンに訊いている。


「魔法会への勧誘だよ」と、グレン。


「魔法会?」


 良く見える場所に移動すると、リリーシャが上級生二人組にしつこく迫られていた。


 リリーシャ・ローランドとは私は妙な出会い方をした。それも解決して、今は普通のクラスメイトになっている。私が『可視使い』のことをリリーシャは知らない。

 そして、リリーシャは、この魔法学校の優等生。私は、この魔法学校の劣等生。一般的にはそう言う風になっている。


「しつこいわね! 私は、魔法会なんかには入らないわ!」


 リリーシャはイライラしながら突っぱねている。あの勧誘に弱いリリーシャが? 珍しいこともあるもんだ。


「そんなこといわないで、話だけでも聞いてよ!」

「リリーシャさんは、魔法力が素晴らしいから、魔法会にふさわしいと思うのよ!」

「しつこーい!」


 私は「あ!」と声を上げた。上級生二人には見覚えがあった。


「香姫、どうしたんだ?」と、澄恋が訊いた。

「あの人たち、昨日廊下ですれ違った上級生だよ……」

「えっ? あ、本当だね?」ジュリアスもその事に気づいた。


 グレンが、データキューブを操作する。


「女の方は『ディーナ・アロースミス』高等部の三年生で、魔法会の副会長。で、男の方が、『カーティス・セシル』高等部の二年生。魔法会の会長だよ」


「グレン君、なんでも詳しいんだね」

「いやぁ、そうかな~」


 グレンを褒めると彼は照れた。グレンが、こんなことにも詳しいとは思わなかった。


 廊下の騒がしい声はまだ続いている。


「じゃあ、また来るわね。リリーシャさん」

「来なくていいから!」


 ディーナとカーティスは帰って行くようだ。リリーシャはぐったりしている。


「リリーシャ、大丈夫?」

「クェンティン~! 聞いて! あの人たちしつこいの!」


 古代魔法学の教室に入って、彼氏のクェンティンに抱き付いて愚痴をこぼしている。

 人気者のリリーシャは大変だなぁ。傍観している私もぐったりしてきそうだ。

 一通り同情した私は、グレンたちの方に視線を戻した。


「グレン君、魔法会って一体なんなのか知っているかな?」


 グレンが物知りだと分かったので、ジュリアスが尋ねていた。


「う~ん……」


 グレンは唸って、手持無沙汰にデータキューブを操作している。


「ウワサしか聞いたことないけど、放課後の活動の一種みたいなもんじゃないかな?」


 私は首を傾げて考える。


「放課後の活動? 部活みたいなもんかなぁ……そう言えば、この魔法学校じゃ部活みたいなのあんまりないよね?」


 魔法部ではなく、魔法会か。


「魔法会の他にもあるよ。俺が知っている限りでは、『魔力同好会』に『魔女会』、『ほうきの集い』……。でも、そんなサロンみたいなお誘いが来るのは、リリーシャやアリヴィナみたいな魔法に長けた優秀な人たちだけだよ」

「ふ、ふーん……」私は、気圧された形で相槌を打った。


 実力の世界なのかな。良く知らないけど。


「でもどうして、リリーシャさんは入らないのかな?」

「クェンティンとデートできる時間が少なくなるからじゃないの?」と、澄恋。

「なるほど~」


 クェンティンとの時間を大切にするリリーシャらしいといえばそうだ。

 澄恋は半眼でリリーシャとクェンティンのラブラブを眺めている。やっぱり、澄恋はリリーシャの事が……。じっと澄恋を見ていると、彼が気付いた。そして、意地悪そうに微笑んできた。


「香姫、どうしたの?」

「べ、別に! 何でもないよ?」


 誤魔化すように、私は古代魔法学の教室の中に入ろうとした。


「鳥居香姫さん!」

「えっ!?」


 誰に呼ばれたのか一瞬わからずに、私の視線は辺りをさまよった。

 しかし、振り返って驚いた。上級生の男の方――カーティス・セシルと目が合ったのだ。私を呼んでいたのはセシル先輩!?


「な、何で私の名前……!」


 セシル先輩はクスッと笑って、その問いには答えなかった。


「鳥居香姫さん。またね!」


 ディーナ・アロースミスも私に声をかけた。そして、二人は帰って行った。


「な、なんなの……?」


 私の心臓は、不意打ちを食らって高鳴っていた。

 知らない上級生二人が、何故私の名前を知っているのか。そんな難問に私が答えられるはずがない。それも、リリーシャのような実力者しか相手にしてない魔法会の人なのに。


「な、なんで、あの人たち、教えてもないのに私の名前を知ってるのかなぁ?」


 答えを求めると、ジュリアスやグレンは肩をすくめていた。ただ一人、澄恋だけが難しい顔で考え込んでいたのだった。


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