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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第三部♚第一章◆【鳥居香姫は不可思議な賢者の暴走に疲れ果てる】
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第十話 上級生二人*

 アレクシス王子がまったく意に介しなかったので、私たちはしつこく医務室に留まって考えを巡らしていた。肝心な腕輪はうんともすんとも言わないし……。

 澄恋が、外を見て嘆息した。


「とにかく、アレクシス様が腕輪に魔法もかけずに帰ったんだから、大丈夫ってことじゃないかな」

「う、うん……」

「何、その物言いたげな顔は……」

「なんか……澄恋君、小さくなりすぎじゃない? 十三歳ぐらいに見えるよ……」

「いや、十六歳ぐらいだと思うよ。この後、成長期が来て、一気に背が伸びたからね」


 ということは、その後に私は澄恋と出会ったのか。私が出会った時は澄恋はすでに格好良いお兄さんだったのだから。今は縮んじゃって可愛い男の子になっているけど。

 複雑そうな私をどう思ったのか、ジュリアスが声をかけてきた。


「とにかく、もう腕輪は大丈夫ってことだよね? 香姫さん、ご飯食べに行こう?」


 何故か、ジュリアスはご機嫌だった。私の腕を取って、食堂へと促そうとする。


「えっ、でも、澄恋君が……」


 ご飯の気分じゃない。一刻も早く澄恋を元に戻したいのに。


「気にしないで。また、身長は伸びるだろうし。それに、僕はやることがあるから、二人で先に食べてて」


 澄恋は笑っている。澄恋がさほど気にしていないみたいで私は安堵していた。


「うん、そうするね? 行こう、香姫さん?」

「う、うん……」


 ジュリアスはすごく嬉しそう。私は医務室に澄恋を残して、ジュリアスと廊下に出た。


 ドアが閉まるまで、澄恋はずっとジュリアスを見ていた。ジュリアスは澄恋を見て黒く微笑んでいた。どうして二人は仲が悪いのか。そんなことわかるはずもなかった。


「香姫さん、マクファーソン先生やシャード先生に魔法をかけてもらったらいいと思うんだけど」

「それ、良い考えかも! あ、でも、澄恋君と同じで先生たちも縮んじゃうかも」

「そうだね……良い考えだと思ったんだけどなぁ……」


 向こうから綺麗な歌声が聞こえてきて、私とジュリアスは喋るのを止めた。向こうから男女の二人が歩いてくる。やけに高い身長だ。小さくなる前の澄恋ぐらいはある。


 私は、女の人の歌に聞き惚れて暫く歩みを止めた。二人はこちらを通り過ぎようとした。すると、歌が止んで、女の人がこちらに微笑みかけた。


「こんにちは!」

「こっ、こんにちは……!」


 私は吃驚して瞬きした。先生以外の、それも澄恋以外の、年上の人から声をかけられるなんて、この異世界に来てから初めてだったので驚いたのだ。


 私は焦って一礼すると、そこからジュリアスと足早に去った。


「ジュリアス君、さっきの人って上級生かな?」

「高等部の先輩じゃないかな? 同じような制服着てたからね?」

「うん! 素敵な先輩だったね! なんか優しそうだった!」


 ジュリアスがクスクスと笑っている。


「香姫さん、優しそうだからって、ホイホイついて行っちゃだめだよ?」

「そのくらい分かってるよ~」

「そうかなぁ? 年上のお兄さんがお菓子くれたら付いて行きそうなイメージがあるけど」


 私はガンと衝撃を受けて固まった。小さな子供じゃあるまいし。それに、最近の子供だってもっとしっかりしている。


「ジュリアス君、私を何だと……!」

「ゴメンゴメン」


 ジュリアスは楽しそうに笑っている。まさかジュリアスにからかわれるとは思わなかった。

 とにかく、腕輪がもう暴走しないように祈るのみだ。


 私は、ジュリアスと駄弁に花を咲かせていたので、上級生の二人が話していることに気づかなかった。いつの間にか歌声は止んで、上級生の二人がずっとこちらを見ていたことも――。


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