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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第二部♚最終章◆【鳥居香姫は不可思議な二人の正体に驚愕する】
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第十四話 妖魔VS香姫*

 ベローがゆっくりと私に近寄ってくる。私も、彼から逃げるように後ずさりする。


「香姫さん、貴方もアレクシス王子に大事にされていましたね。だから、貴方も殺して差し上げます」

「なんで、貴方は、アレクシス様の事をそんなに恨んで――ううん! 聞きたくないわ! 私、貴方なんかに同情なんてしたくないもの!」

「あはは、それで良いんですよ! 私も安心して貴方を殺せます!」


 ベローは、攻撃魔法を打ってきた。私はベローに背を向けて走り出す。

 ベローの弱点を可視しても、魔法をちゃんと使えない私では攻撃するすべがない。どうすればいいのだろう!


「可視編成! 可視編成! 可視編成!」


 虚しく考える間も、ベローは私を葬るべく攻撃魔法を連打してくる。

 私は必死で逃げるしかない。ベローの笑い声が私を追ってきた。


「あはははは! どうしました? まさか、反撃できないんですか?」


 どうすれば……!

 そうだ! 腕輪だ!


『ピンチになった時に、私がプレゼントした腕輪を可視してみてください。きっと、貴方を助けてくれることでしょう』


 アレクシスの言葉を思い出した私は、早速、鼈甲の腕輪を可視した。

 けれども、こんな時なのに鼈甲の腕輪を可視しても何も見えない。


「なんで、私、ピンチなのに何も見えないの!?」


 叫んでみても何にも見えない。アレクシス王子は確かに言ったはずだ。ピンチになったら、この腕輪が助けてくれると。


「あっ!」


 私は、躓いて転んでしまった。腕輪に気を取られていたせいだ。

 転んだ私の前で、ベローは立ち止まった。


「いったぁ……!」

「チョロチョロとすばしっこいですね!」

「褒めてくれてありがとう!」


 私は、嫌味を返したつもりだったが、ベローは笑っていた。


「そう言えば、貴方は気になることを言ってましたね」

「えっ?」

「腕輪に向かって『見えない?』まるで、何かを可視できるみたいな物言いですね?」

「っ!?」

「もしかして、香姫さんは可視使いなんですか?」


 窮地に陥ったせいで、思わず口走ってしまったことをベローは耳ざとく聞きつけていた。

 戦慄して肌が粟立った。心拍数が変になって、呼吸がおかしくなる。


「違うよ。私が可視使いだったら、もっとうまくやってるよ」


 喉の塊を呑みこんで、私は答えた。しかし、答えに覇気がないことに、ベローは気付いている。


「では、香姫さんの魂を抜いて、その可視使いの体を貰うことにしましょう」

「っ!?」


 ベローは私を可視使いだと見抜いていた。これでは、どんなごまかしも無駄だ。

 ベローの手が伸びてくる。

 恐怖で私の目から涙が零れる。

 それと同時に、怒りもわいてきた。


「私、身体を取られる前に言っておきたいことがあるの!」

「良いでしょう! 言ってください」


 ベローは私に最後の言葉を許した。

 私は息を吸い込んだ。最後にどうしても言いたかったこと。それは。


「アレクシス様の××! ××! ×××××××! ×××! ×××! ×××! ××××! ××!」


 私の絶叫は草原の向こうまで響いて、木霊となって返ってきた。

 息を切らしている私を見て、ベローは大笑いしている。


「素敵な最期の言葉でしたね! さあ、死んでもらいましょう!」


 私は顔を腕で覆った。

 けれども、時が止まっている様に何も起こらない。


「うむ! アレクシス王子にそこまで言えるとは、気に入った!」

「えっ?」


 どこからか声が聞こえてきて、私は硬く瞑っていた目を開けた。

 いつの間にか鼈甲の腕輪が煌々と光っていた。

 しかし、この腕輪の光は、ベローには見えていないらしい。


「私は、この腕輪に封印された『賢者ディオマンド』である! お主を助けてしんぜよう!」


『エワブ! エワブ!』


 すると、腕輪が古代魔法を紡ぎだす。私の眼は驚きで見開いた。

 私の人差し指に古代魔法の形の光が収束されていく。

 時がゆっくりと動き始めた。


『ウランヌカヌテイ コツレアノトゥ ノムウジュ! アッタ ンウル! アッタ ンウル!』

「なんだと!? 古代魔法だと!?」


 ベローは私の異変に気づいた。


『ラルスセムオ! シャヘアモ!』

「させるか! くそっ!」


 哀愁のベローは飛び掛かってきた。

 哀愁のベローに向かって呪文を解き放つと、ベローは光に呑まれた。


「ぎゃあああああああああああああああ!」


 そして、光が消えた後は、黄色い煙になって消滅した。

 辺りは、しんと静まり返っている。草原の草木の揺れる音だけが静寂の中で響いていた。

 私は、もしかして。哀愁のベローをこの世から葬り去ったのか……?


「あ……! やった!」


 感謝をこめて、鼈甲の腕輪を見る。けれども、腕輪はうんともすんとも言わなくなった。


 キラキラとした緑の光が降ってくる。その光を浴びた私は疲れが癒えて行くのを感じた。それは、他の皆も同じだったらしい。


「あれ……? 俺様……?」

「バージル君!」


 私は彼に駆け寄って、バージルの手を取って喜び合った。


「やったよ! バージル君! 哀愁のベローを倒したよ!」

「ホントか!? やったな! 兄上に報告しないと!」


「ううっ? 私……」


 そして、私たちはもう一つの喜ばしいことに気づいたのだった。


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