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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第二部♚最終章◆【鳥居香姫は不可思議な二人の正体に驚愕する】
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第十一話 ファウラーの異変



 満身創痍のリリーシャは、クェンティンの腕の中で笑った。


「実は結構ギリギリだったのよね……!」

「で、でも、賞金首を倒すなんてすごすぎるよ!」

「香姫、おだてないでくれ。リリーシャには反省してもらわないといけないんだから!」

「ご、ごめん!」


 今回の事でクェンティンは、流石に腹を立てているようだった。

 クェンティンはリリーシャを背負って、医務室まで急いでいる。でも、その後ろ姿が、仲睦まじく見えた。背中から、ハートが飛んでくるようだ。早くも二人だけの世界に入っている。


「良かったね? リリーシャさんが無事で?」

「うん、そうだね!」


 私とジュリアスも雑談しながら医務室に向かっていた。本当に、二人が無事で良かった。ファウラーの思い通りにならなくて本当に良かった!


 廊下の角を曲がった時、ファウラーがこちらに歩いてくるのが見えた。今度こそ、ファウラーをやり込められる。私は胸を張った。


「ファウラーさん! リリーシャさん、無事だったの! ファウラーさんの思い通りになんて――!?」


 廊下の向こうにいるファウラーに話しかけていたが、私は彼女の異変に気づいてぎくりとなった。良く見ると、ファウラーの目から涙が零れていた。


 なんで、泣いてるの!?

 私は吃驚して、心臓の鼓動が変になった。まったく、彼女らしくない。

 すれ違いざまに、私は彼女を振り返った。


「ファウラーさん……?」


 私の問いに、ファウラーも立ち止まる。


「私……もし、何もかもが違ってたら。あんたと……香姫さんと、ちゃんとした友達になれていたかもしれないわね……」

「えっ……?」


 それってどういう意味……?


「バイバイ」


 彼女は最後に笑った。


「ファウラーさん!?」

「可視編成!」


 そして、瞬間移動の魔法で消えてしまった。何がどうなっているのか分からない。


「僕、嫌な予感がする。ファウラーさんをこのまま放っておいたら」

「だよね。なんか、今生の別れみたいなこと言ってたもんね……」


 あんなことを言われた後でなにかあったら寝覚めが悪い。こうなったら、手がかりを可視するしかないだろう。


「教室に、ファウラーさんの持ち物があるかもしれないよ?」

「行ってみようよ!」


 そして、私たちは、ファルコン組の教室へと移動した。


 夜も更けはじめた。教室の窓から見える空は群青色に染まっている。教室の明かりをつけると、教室の中だけが鮮明に色づいた。


「ファウラーさん、データキューブを残してた」


 ジュリアスがファウラーの机の中から、データキューブを取り出した。


「それを可視すれば……」


 その時、瞬間移動の風が吹き荒れた。アレクシス王子だ。

 アレクシス王子は私の方まで歩いてくると、ファウラーのデータキューブを取り上げてしまった。


「アレクシス様!? それ、返してください! 早くしないとファウラーさんが――」

「ファウラーさんの事は私が何とかします。だから……」

「本当ですか……?」


 アレクシス王子は微笑んだだけだった。そして、私はファウラーを助けることなく、帰路についたのだった。

 女子寮の自分の部屋に戻ってからも、私は部屋の中を行ったり来たりして終始落ち着かなかった。


『ファウラーを助けに行くか?』

「バージル君!」


 そうだ。バージルが居たんだった。自然と可視モードになると、私の眼は半透明なバージルを捕えた。


「バージル君、もしかして何か知っているの?」

『ああ、アレクシスとファウラーが喋る一部始終を見たからな』


 バージルは珍しく元気がない。私の胸がざわついた。嫌な予感がする。このまま、本当に放っておいても大丈夫なのか……?


「一体、ファウラーさんに何が起きているの? 私、本当に助けなくて大丈夫なの?」

『ファウラーは、アレクシスを毒殺しようとした真犯人だ』

「えっ!? 本当なの!?」


 私の問いにバージルは頷いた。


『ああ。妖魔の哀愁のベローと手を組んでいる。そして、グレンを操り、ジュリアスを追憶のフィンに襲わせた。それだけじゃなく、リリーシャまでも襲わせた。更には、俺様も狙われている……だから』

「一体、何が起きてるの?」

『……アレクシスは、ファウラーを見殺しにしようとしているんだ。罪を許す代わりに、自分で後始末をするように』


 確かに、身から出たさびだ。以前のままの関係なら、ファウラーの事を放っておいたかもしれない。でも――。


「でも、ファウラーさん、泣いてたの。もし、何もかもが違ったら、私たち友達になれたかもって言ってたの!」

『なら、俺様と一緒にファウラーを助けに行くか?』

「行けるの!?」

『アトリーの資料を盗み見たから、居場所も掴んでるんだ』

「うん! 助けに行く!」


 バージルは私の肩に手を置いた。そして唱える。


「可視編成!」


 そして、私は哀愁のベローのすみかまで、瞬間移動したのだった。


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