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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第二部♚最終章◆【鳥居香姫は不可思議な二人の正体に驚愕する】
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第九話 行方不明……?*

 食堂で夕食を摂った後、医務室に移動した。私は、そこで出会ったジュリアスにアレクシスとバージルの事を報告していた。


 ジュリアスは、アレクシス王子がバージルにとんでもない呪いをかけていたことを知って驚いていたが、次第に笑顔に変わって行った。


「アレクシス様って、やることなすこと凄いね? けれども、僕は恩があるから、酷いことは言えないなぁ」

「こないだしっかり言ってたよ」

「そうだったかな?」


 ジュリアスは人の良さそうな顔をして、クスクスと笑っている。これは、絶対に覚えていると見た!

 デスクで仕事をしていたクレア先生もクスクスと笑っている。

 私の報告を受けて、クレア先生も事情を知ったようだ。


「アレクシス様らしいわね」

「ですよね。あれでも、悪人じゃないところが救いですよね」


 私は、両手にはめている腕輪をじっと眺めていた。一応はお守りだ。けれど、アレクシス王子が言ったことがウソだったら、祟ってやろうと心に決めている。枕元に立つだけでも相当な嫌がらせになるかもしれない。ピンチになった時に腕輪が使えなかったら、私は死んでしまうだろうから。


「失礼しまーす!」

「ちぃーっす!」


 突然、医務室に入ってきたのは、アリヴィナとガーサイドだった。私は、アリヴィナとガーサイドの格好を見てギョッとした。


「アリヴィナさんとガーサイド君、ど、どうしたの……それ……?」

「ああ、香姫、来てたの?」

「う、うん」


 アリヴィナが、私に微笑みかけた。しかし、アリヴィナとガーサイドの格好が、すすけてボロボロになっていたからだ。


「私がね、アミアンに鍛えてもらってたんだよ。その……リリーシャのライバルにふさわしくないと思ったから……」


 アリヴィナは、どこか落ち込んでいるようだった。私は頭を振った。


「そんなことないと思うけど……アリヴィナさんが、リリーシャさんのライバルじゃなかったら誰がライバルなの?」


 私は、リリーシャと対等にやりあえるのは、アリヴィナだと考えている。

 私が、珍しく弱気なアリヴィナの発言を否定すると、彼女は嬉しそうに微笑んだ。


「ありがと、香姫。でも、現時点では、デメトリア以下なんだよ」

「えっ!? どういうこと!?」


 デメトリア・ファウラー以下だなんて。誰がそんな順位を――。

 落ち込んでいる事情を知りたくて、ガーサイドに視線を振ると、彼は苦笑していた。


「こいつ、ファウラーに勝負ふっかけて、負けちまったんだ」

「アリヴィナさん、ファウラーさんに勝負挑んだの!?」


 一体、いつの間に!? 勝負するなら言ってくれれば、こっそりと応援したのに……。

 でも、アリヴィナは闘志を燃やしていた。


「負けたけど、アミアンに鍛えてもらったから! 次は負けないよ!」

「う、うん! 私もアリヴィナさんを応援してる!」


 アリヴィナが私に笑みを返してくれた時、騒々しい足音がして、ドアが乱暴に開いた。ギョッとして皆は一斉に振り返った。私も瞠目したまま呆気にとられている。


「失礼します!」


 騒々しい足音の主は、クェンティンだった。彼は、走り回っていたらしく、汗を頬から滴らせて息を切らしている。誰かを探しているらしく、辺りを見回して右往左往している。


「クェンティン君、どうしたの?」


 様子が尋常じゃない気がして、私は彼に近寄って行って声をかけた。クェンティンは頭を掻きむしった。


「香姫、俺どうしたらいい?」

「誰か探してるの? もしかして、リリーシャさん?」


 そう言えば、大食堂でもクェンティンが居た。その時は、リリーシャと待ち合わせしているんだと思っていた。けれど、違ったようだ。


「リリーシャ、来てないかな?」

「来てないけど……」


 クェンティンはまた泣き出しそうだった。


「リリーシャさんを探しているの?」


 尋ねると、クェンティンは頷いた。


「校舎中を探したんだけど居ないんだ! 授業の終わりにファウラーさんと熱心に話していたことが気懸かりで。それにリリーシャは別れ際に俺にこう言ったんだ。『明日になったら、私は予言者よ!』って。それから、後でリリーシャと待ち合わせしたんだけど、来ないから心配で……!」


 私は、軽いめまいを覚えた。


「何それ……それじゃあ、まるで――」


 これは、リリーシャが魂を奪われた時の二の舞だ。

 足音がして声の方を振り返ると、アリヴィナも訊いていたらしく、瞳がゆれていた。


「私、リリーシャを探してくる!」


 アリヴィナは、クェンティンの横を突っ切って、医務室から飛び出して行った。


「待てよ、アリヴィナ!」


 ガーサイドも彼女に続いて出て行く。

 医務室の中には、私の正体を知っているものと、私の事情をごまかして伝えているクェンティンだけが残った。

 私は、嘆息した。これは、私の正体が分かっても仕方ない事態だ。


「クェンティン君、リリーシャさんの持ち物持ってないかな……?」


 クェンティンは、一瞬固まったように見えた。だが、すぐに私が言っている意味が伝わったらしい。


「えっ!? ちょっと待って……だって、香姫は可視できなくなったって……まさか!」


 クェンティンの目が期待に輝く。リリーシャにバレた時の事は後で考えることにしよう。


「そういうことかな?」


 私は、仕方なく笑った。


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