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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第一章◆【鳥居香姫は不可思議な転生とジュリアスに戸惑う】
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第十三話 香姫(かぐや)VSガーサイド*

 ガーサイドが、手をかざして呪文を唱える。

 直後、足元がえぐれて穴が開き、私は勢いよくその中に落ちた。

 悲鳴を上げる暇もなく、気が付いたら地面とキスしていた。

 その高さ、二メートルぐらいだろうか。


「いたた……!」


 私は、土を払いのけながら、立ち上がった。打ち身で全身が痛い。

 土を踏みにじる音が聞こえて見上げると、マクファーソン先生とガーサイドが覗き込んでいた。逆光で彼らの表情は見えないが、太陽だけが眩しかった。直後、影が動いた。


「可視――」

「ちょっと待って! 降参、降参です!」


 これ以上、呪文を唱えられては敵わない。私は慌てて、負けを認めた。

 マクファーソン先生が頷いた。


「勝負あり! アミアン・ガーサイドの勝ちとする!」

「えっ……? はぁ!? なんだよそれ!?」


 勝って嬉しくないのだろうか。ガーサイドが、穴に向かって怒鳴った。穴の中で声が反響して、この上なくうるさい。お蔭でキーンという耳鳴りがしている。


「……私は、研究があるのでもう行くからな」


 あっさりとした勝負に呆れて、マクファーソン先生も嘆息した。足音が遠ざかっていく。マクファーソン先生は帰ってしまったらしい。


「俺は、お前を地に伏せることを夢見ていたけど、こんな一方的な勝利なんて嫌だ!」


 な、なんて、我がままなんだ! 負けたのを認めたんだから良いじゃないか!

 文句を言おうと口を開いた時、上からキラキラとしたものが落ちてきた。それは、点々と地面を濡らした。雨かと思ったが、呻くような泣き声が聞こえてきたので、それが涙だと分かった。


 ガーサイドはあっさり負けたせいで、侮辱されたと思っているらしい。私は、戸惑って上空を唖然と見上げた。


「くそっ! なんでなんだよ! ちくしょー!」


 ガーサイドは、男泣きしながら穴の周りを拳で叩きだした。

 上からパラパラと砂が落ちてくる。


「ちょ、止めて! 土壁が崩れて穴が埋まっちゃう!」

「アミアン! アンタ、何やってんだよ!」


 私が助けを呼ぼうとしたとき、女子の怒鳴り声が割り込んできた。

 ガーサイドが振り向いた瞬間、その女子に襟首を引っ掴まえられていた。


「うらぁあああ!」

「うぉおおおお!?」


 ゆっさゆっさと頭を揺さぶられている。あのガーサイドがやられっぱなしだ。


「すごい……強い……」


 私は思わずごくりと唾を呑みこんでいた。


「な、なんだよ! アリヴィナ!」

「えっ、アリヴィナさん?」


 逆光でよく見えなかったが、その女子はアリヴィナらしい。思わぬ援軍に、私はどう反応していいか分からなかった。


「リリーシャはね! 記憶喪失になって大変なんだから、アンタとの相手なんてしてられないつうの!」

「はぁ? 記憶喪失ぅ? 魔法を使わなかったのもそれでなのか?」

「えっ!? 魔法を使わなかった……? あの、リリーシャが……?」


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