第十三話 香姫(かぐや)VSガーサイド*
ガーサイドが、手をかざして呪文を唱える。
直後、足元がえぐれて穴が開き、私は勢いよくその中に落ちた。
悲鳴を上げる暇もなく、気が付いたら地面とキスしていた。
その高さ、二メートルぐらいだろうか。
「いたた……!」
私は、土を払いのけながら、立ち上がった。打ち身で全身が痛い。
土を踏みにじる音が聞こえて見上げると、マクファーソン先生とガーサイドが覗き込んでいた。逆光で彼らの表情は見えないが、太陽だけが眩しかった。直後、影が動いた。
「可視――」
「ちょっと待って! 降参、降参です!」
これ以上、呪文を唱えられては敵わない。私は慌てて、負けを認めた。
マクファーソン先生が頷いた。
「勝負あり! アミアン・ガーサイドの勝ちとする!」
「えっ……? はぁ!? なんだよそれ!?」
勝って嬉しくないのだろうか。ガーサイドが、穴に向かって怒鳴った。穴の中で声が反響して、この上なくうるさい。お蔭でキーンという耳鳴りがしている。
「……私は、研究があるのでもう行くからな」
あっさりとした勝負に呆れて、マクファーソン先生も嘆息した。足音が遠ざかっていく。マクファーソン先生は帰ってしまったらしい。
「俺は、お前を地に伏せることを夢見ていたけど、こんな一方的な勝利なんて嫌だ!」
な、なんて、我がままなんだ! 負けたのを認めたんだから良いじゃないか!
文句を言おうと口を開いた時、上からキラキラとしたものが落ちてきた。それは、点々と地面を濡らした。雨かと思ったが、呻くような泣き声が聞こえてきたので、それが涙だと分かった。
ガーサイドはあっさり負けたせいで、侮辱されたと思っているらしい。私は、戸惑って上空を唖然と見上げた。
「くそっ! なんでなんだよ! ちくしょー!」
ガーサイドは、男泣きしながら穴の周りを拳で叩きだした。
上からパラパラと砂が落ちてくる。
「ちょ、止めて! 土壁が崩れて穴が埋まっちゃう!」
「アミアン! アンタ、何やってんだよ!」
私が助けを呼ぼうとしたとき、女子の怒鳴り声が割り込んできた。
ガーサイドが振り向いた瞬間、その女子に襟首を引っ掴まえられていた。
「うらぁあああ!」
「うぉおおおお!?」
ゆっさゆっさと頭を揺さぶられている。あのガーサイドがやられっぱなしだ。
「すごい……強い……」
私は思わずごくりと唾を呑みこんでいた。
「な、なんだよ! アリヴィナ!」
「えっ、アリヴィナさん?」
逆光でよく見えなかったが、その女子はアリヴィナらしい。思わぬ援軍に、私はどう反応していいか分からなかった。
「リリーシャはね! 記憶喪失になって大変なんだから、アンタとの相手なんてしてられないつうの!」
「はぁ? 記憶喪失ぅ? 魔法を使わなかったのもそれでなのか?」
「えっ!? 魔法を使わなかった……? あの、リリーシャが……?」