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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第二部♚最終章◆【鳥居香姫は不可思議な二人の正体に驚愕する】
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第七話 アレクシスに招かれて2*

「実は、バージルは見えなくなる呪いをかけられたのではありません。私たちがバージルに見えなくなる呪いをかけたのです」


 アレクシス王子が笑顔で言った。


「ちょっと待ってください? 笑顔でなんかすごいことを仰ったような……」

「だから、バージルは呪いを『かけられた』のではなく、私たちが呪いを『かけた』のです」

「っ!?」


 私はケーキの最後の一切れを喉に詰めそうになった。驚きで『フラン・グラン』の味が相殺された。お茶を飲んで呼吸を整えてから、顔を上げる。


「ば……バージル君に呪いをかけたのはアレクシス様なんですか!?」

「もう一人いますよ。サミュエル兄上もです」


 兄上ということは、サミュエルというお兄さんは王子様だろう。

 今日は、アレクシス王子が妙に優しいものだから油断した。

 兄弟そろって良く似ている。鬼畜なところがそっくりだ!


「鬼かっ!」


 思わず怒鳴ると、アレクシス王子が困ったように眉を下げた。


「仕方ないんですよ。一ヵ月前に脅迫状が届きましたからね」

「えっ!? 脅迫状!? アレクシス様のじゃなくて?」

「バージルの殺害予告のですね。それで、バージルを殺すというものだったのですが、一向に犯人が捕まらなくてですね。前日になって、良い案が浮かんだんですよ。バージルを視えなくしてしまえばどうかと思いましてね」

「だからって……」


 普通、見えなくする呪いをかけようと思うだろうか。しかも、アレクシス王子は、それを名案だと思っているらしい。私の身体にドッと疲れがのしかかる。


「サミュエル兄上もそれは妙案だと仰って下さって、二人がかりでバージルに呪いをかけたんです。まあ、あんなにバージルが苦しむとは思わなかったですが」

「当たり前だよね! 呪いだもんね!」


 アレクシス王子は相当に気楽なひとに違いない。そして、脳細胞がミジンコでできているにちがいない。

 私は、アレクシス王子に頼まれてバージルを可視したときの事を思いだしていた。相当苦しんでいた。まるで、死ぬ前のような。


「だから、クレア先生に助けを求めましてね」

「病院に連れて行かなかったんですか!?」

「私たちの仕業だと知れたら、大ごとになりますからね。極秘に済ませたかったのです。でも、その甲斐あってバージルはまだ無事ですから。私たちの作戦勝ちですね」


 私は何も言えなくなってしまった。


 確かに。バージルは呪われているが、殺されてはいないのだ。結果が良かったからいいようなものの……。もし、バージルに何かあったらどうするつもりだったのだろう。

 しかし、私にしろ、バージルにしろ、一応はアレクシス王子に助けられているのだ。

 ただ、やり方が、鬼畜なだけで……。そのせいで、私もバージルも悲惨な目に……。


「香姫さん、どうして泣いてるんですか?」

「何でもありません……!」


 くっ……。涙で前が見えない……!

 涙をぬぐうと、アレクシス王子はこちらを見ていた。


「アレクシス様、それで、バージル君を殺害予告した犯人に心当たりはあるんですか?」


 気まずくなって尋ねると、アレクシス王子は頷いた。そして、ウィンザーを振り返る。


「ウィンザー。アトリー軍警特別第二官を呼んでください」

「かしこまりました」


 ウィンザーは瞬間移動の魔法で消えた。

 そして、暫くするとそれを使って姿を現した。ウィンザーの横にはアトリー軍警特別第二官がいる。アトリーは、アレクシス王子の前で跪いた。


「アレクシス様、お呼びでしょうか!」


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