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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第二部♚最終章◆【鳥居香姫は不可思議な二人の正体に驚愕する】
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第五話 リリーシャの宣言……?

 私たちは、消沈しているクェンティンを慰めながら、医務室まで歩いてきた。ノックしてドアを開けると、ドアの前にクレア先生が立ち塞がった。


「あら、鳥居。授業をサボるなら入室は許可しないわよ~?」


 いつも、医務室に来るのは休み時間だ。今は授業中だから、クレア先生はサボりだと判断したらしい。クレア先生はどう考えても元気な私たちを追い出すために、戦闘態勢だ。


 私が何か言う前にクェンティンが泣きそうな声を上げた。


「違うんです! また、リリーシャが大変なことに巻き込まれようとしているみたいなんです!」


 私は吃驚した。リリーシャがまた厄介なことに!? そう言えば、私の魂とリリーシャの身体が同化された経緯も、彼女が無茶なことに首を突っ込んだからだった。

 リリーシャ……またなのか。恋人のクェンティンと父親のシャード先生を、また悲しませても平気だというのか。


「どういうこと……? まあ、入って」


 クレア先生も、ただ事じゃないと感じたらしい。人目を気にして、私たちを医務室の中に招き入れた。ドアが閉められる。幸いなことに、部屋の中には誰もいない。


「ちょうど良いわ。けが人も病人もいないから、貴方たちだけよ。話して御覧なさい」


 クェンティンは頷いた。涙をぬぐって、大きく嘆息した。


「実は、占い学の授業が終わった後、リリーシャが『予言者になりたい!』って言いだして」

「よ、予言者……!?」


 あまりのスケールの大きさに、私は唖然となった。スケールが大きいのは、可視使いも似たようなものかもしれないけど。ジュリアスが眉間にしわをよせて、首を傾げた。


「でも、なんでそれが困ったことなのかな? 別に予言者になりたいと思っても良いんじゃないかな?」


 ジュリアスの意見はもっともだ。けれども、前例がある。私はそれで痛い目に遭ったのだ。

 クェンティンは私と同じ気持らしい。悲痛な声を上げた。


「ジュリアスは知らないだろうけど、リリーシャは前にも可視使いになるって言って、妖魔に騙されて――」


 ジュリアスはハッとして、同情したような色を浮かべた。そして、静かに頷いた。


「……そうだったね、全部香姫さんに聞いたよ」


 以前、リリーシャは可視使いにならないかと、妖魔に騙されて魂を身体から抜かれたことがあるのだ。


「でも、一体なんで予言者なんかになりたいって……?」


 私が分からないことはそれなのだ。リリーシャが予言者になると言った取っ掛かりは何なのか。


「多分、ファウラーさんだ……」


 クェンティンが溜まった怒りを吐き出すように呟いた。クレア先生は肩をすくめた。


「私は違うと思うけどね」

「だって、それ以外に考えられないんですよ! じゃなきゃ、リリーシャはいきなり予言者になりたいだなんて言わないですよ!」

「でも、今回はファウラーさんなら、安心じゃないの? ほら、妖魔に騙されているわけじゃないし」


 クレア先生がそう言ったことで、クェンティンの肩から力が抜けたようだった。


「そ、そうですよね。俺の考えすぎなのかな……?」

「そうだね。考えすぎだね」


 ジュリアスがクェンティンを安心させるように微笑んだ。

 私は、だまって考え込んでいた。どうしてファウラーは、予言者になるようにリリーシャに勧めたりしたのだろう。


「そうだよな。なんか、話してスッキリしたよ」


 クェンティンの顔に笑顔が戻っていた。クレア先生も笑顔だ。


「じゃあ、スッキリしたところで、教室に戻って授業を受けないとね」

「はい。相談に乗ってくださってありがとうございました。香姫もありがとう」

「う、うん」


 私は、曖昧に笑った。


「じゃあ、香姫さんも教室に戻ろう?」

「うん。急がないと、シャード先生はお冠だよ」

「そうだね」


 和やかに私たちが出て行こうとしたところで、クレア先生が声をかけてきた。


「ああ、ちょっと待って。鳥居には話したいことがあるから残ってくれない?」


 私はジュリアスと顔を見合わせた。


「分かりました。ジュリアス君とクェンティン君は、先に戻っててくれるかな?」

「分かった。じゃあ後でね、香姫さん」

「ありがとう、香姫」

「うん。またね」


 私は、ジュリアスたちと別れると、医務室のドアを閉めた。

 久しぶりの医務室だ……。薬のこの臭いも、清潔なこの空間も……。私は妙に落ち着くこの空間が大好きなことを再確認した。


「クレア先生、お話って……」


 クレア先生がいないことに気づいて、私は辺りを見回した。クレア先生はデスクの椅子に腰かけて、データキューブを弄っていた。


「あの……?」

「ああ、鳥居。アレクシス様がお話したいって言っているのよ」

「え゛?」


 わざわざ残れって言ったのって、そのために……?


「なかなか鳥居が医務室に来ないから……せっかく来たんだし、ね?」

「うう……」


 私が、戸惑っていると、瞬間移動の緑の風が舞って、良く知った顔が姿を現した。

 久しぶりのアレクシス王子だ。小動物に好かれそうな微笑みを私に向けた。


「ごきげんよう、香姫さん」

「コンニチハ」

「……なんとなく、すごく嫌そうな顔に見えるのは気のせいでしょうか?」

「き、気のせいですよ……」


 スゴイ、正解だ。

 私がそっと目をそらすと、アレクシス王子は半眼をこっちに向けたのだった。


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