表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第二部♚最終章◆【鳥居香姫は不可思議な二人の正体に驚愕する】
135/226

第三話 占い学の授業

 その日も、もやもやした気持ちを抱えたまま、授業を受けていた。私は魔法学校で色々な授業を受けているのだが、今日は、『クリスティン・クリスタル先生』の『占い学』の授業があった。


 クリスタル先生は目の大きい、やせ形で身長の高い先生だ。いつも、色とりどりの占い師のような薄絹のショールを羽織っている。明らかに、占い師としてのカリスマ性があり、女の子から絶大な支持を受けていた。私も、澄恋と自分との相性を聞きたかったが、悪いと決めつけられると辛いので、訊いたことはない。けれども、占いの授業は毎回のように楽しみにしていた。


 しかし、今日。その授業を受けている最中に、後ろを振り返って言い知れぬ嫌な予感に恐怖した。占い学の授業では、今日のインスピレーションに従ってと言って、好きな席に座れるのだが、リリーシャとファウラーは仲良く二人で座っていたのだ。それでも恐怖するのに、クリスタル先生が、彼女たちを見て一瞬息を呑んだのを私は見逃さなかった。賑やかに先生を忘れ去っている生徒たちの中。クリスタル先生は人知れず息を切らし、苦しそうにして、占い学の準備室に駆け込んでいった。


「ジュリアス君、さっきの見た!?」


 私は、恐怖してジュリアスを振り返ったが、当のジュリアスはレヴィー・ブレイクと今日の運勢の事で盛り上がっていた。やっと、ジュリアスが私に気づいた。


「えっ、何? 香姫さん?」

「あのね、クリスタル先生が準備室に――」


 私が振り向くと、いつの間に準備室から出てきたのか、クリスタル先生が整然として椅子に座っていた。息を切らしている様子も取り乱している様子もなく、綺麗な居住まいだ。


「あ、あれ……?」

「香姫さん、クリスタル先生がどうかしたの?」

「う、ううん。なんでもない……」


 私は、得体のしれないクリスタル先生を恐々と見つめた。クリスタル先生は私を見て驚いていたが、すぐにそれが笑みに変わる。一体なんなの? クリスタル先生といい、ファウラーといい。そして、普通に授業が始まった。


「今日は数日間の運勢を見てみるわ。配った水晶を見て?」


 私は大きなビー玉ほどの水晶を覗き込んだ。逆さまの私が水晶に映っている。

 クリスタル先生が手を叩いた。生徒たちの視線が先生の方に集まる。


「水晶占いをやりましょう! やり方はすごく簡単! 綺麗に見えれば、吉。形や色がはっきり見えなかったら、凶。じゃあ、やって見て!」


 生徒たちは面白そうにおしゃべりしながら水晶占いをしている。気楽にやれるのが占い学の授業の良いところだ。クリスタル先生もそれを楽しんでいるし、雰囲気を壊すようなことはしない。


「香姫さん、面白そうだね」

「うん!」


 水晶占いか。水晶を可視してみたら、何か面白いことが見えるかも!

 私はこっそりと可視してみた。

 けれども、準備室に水晶が入れ物に戻されてからは、残留思念には暗闇しか残っていない。


「香姫さん、何か見えた?」


 ジュリアスは、私が可視していたことに目ざとく気づいて、こっそりと聞いてきた。

 私は、つまらなくて嘆息した。


「ううん。何も見えないよ」

「えっ、マジで!?」

「っ!?」


 私は、ガーサイドの大声に驚いた。ガーサイドとアリヴィナがこちらに注目していたのだ。


「クリスタル先生、鳥居が大凶です! 全然見えないって!」


 何も見えないってことは大凶になるんだけど、私は真面目にやってなかったから、大凶なのかも怪しいところだ。


「せんせー! ファウラーさんと、ローランドさんも凶です!」


 メリル・カヴァドールが声を上げて、クリスタル先生に報告している。

 えっ!? ファウラーと、リリーシャも凶!?

 私はギョッとして、後ろの方に座っている彼女たちを見つめた。

 リリーシャとファウラーはらしくなく、青ざめていた。


「占いは注意することで、凶から吉に転じることができるわ。だから、大丈夫よ!」


 クリスタル先生は、神秘的な微笑みで絶望のどん底にいる彼女たちを救いだした。

 しかし、ファウラーとリリーシャは懐疑的な目でクリスタル先生を見つめていた。


 授業が終わり、ファウラーとリリーシャが喋っているのを私は聞いてしまった。


「占いってあてにならないのね! ちょっと期待していたんだけど、占いに絶対はないのね! 絶対がないならどうでも良いことだわ!」

「そうかもしれないわね、行きましょう! 私、リリーシャに良い話があるのよ!」


 ファウラーとリリーシャは楽しそうに喋りながら教室から出て行った。その後ろをクェンティンが追い駆けて行く。クェンティンは大変そうだ。私は少しクェンティンの事が心配になった。


「ジュリアス君、教室に戻ろ――!?」


 しかし、振り返って驚いた。


「うん。香姫さん、戻ろうか。どうしたの?」


 ジュリアスは居たのだけど、その後ろでクリスタル先生が突っ立ってファウラーたちを神秘的なまなざしで見つめていたのだ。


 もしかして、リリーシャたちの暴言を聞いていたんじゃ……!?


 先生に同情していると、クリスタル先生はクスリと微笑んだ。


「あ、あの……! 占いは私大好きなんです! だから、リリーシャさんたちが言ったことは気になさらないで――」

「鳥居さん、お話があるの。少し良いかしら?」

「え? は、はぁ……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ご感想・評価をお待ちしております。ポチッとお願いします→小説家になろう 勝手にランキングcont_access.php?citi_cont_id=186029793&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ