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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第二部♚最終章◆【鳥居香姫は不可思議な二人の正体に驚愕する】
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第二話 妹か恋人か*

 授業が終わり、私はまっすぐに女子寮の自分の部屋に戻ってきていた。ローブのポケットをあさると、ファウラーからもらった飴玉が出てきた。そして、ひらりと紙切れがベッドの上に舞い落ちた。

 飴玉を勉強机の上に置いて、紙切れを持ってベッドに座る。開くと、景山澄恋が私を迎えに来る時間が書いてあった。


『何、ニヤニヤしてるんだ?』


 バージルの声が聞こえてきて、私は自然に可視して辺りを見回していた。目の前に半透明のバージルが浮かんでいることを確認してにっこりする。


「バージル君、やっぱり、これってデートの約束かなぁ?」


 私は期待していた。澄恋がもしかしたら自分と同じ気持ちかもしれないことを。

 バージルは私の問いを聞いて、何故か偉そうに仰け反った。


『ああ、俺様は知っているぞ! 景山澄恋からそれを貰って戸惑っていたことをな!』


 私が修羅場なのを面白そうに見物していたのか。分かっていたことだけど、良い性格している。

 バージルは偉そうに唸った。


『フツーなら、好きならあそこで嫉妬するに違いないが、景山澄恋は怒らなかったな』


 何故か、バージルの意見はまともだった。バージルの口からそんな正論が出てくるとは意外だ。しかし、私は意気をくじかれたように元気が無くなった。


 澄恋が誘ったのはデートじゃない?

 だとしたら、ファウラーが言ったことが本当なのか?

 私をフるために、わざわざ呼び出したのだろうか。

 ううん!そんなはずない!

 私は心の中でキッパリと否定した。


「で、でも、じゃあなんで、私の事を誘ったんだろ?」

『うーむ、俺様には分からないところだな。嫉妬されたりということはないのか?』


 以前、魔法学校の食堂で澄恋と食事したことを思い出した。その時も訊いたことがあるが、はぐらかされてしまったような――。まさか。


「私、リリーシャさんと身体を交換したことがあるんだけど……」

『ふむふむ……それで?』

「リリーシャさんの身体と私の魂が同化していたときの方が、澄恋君はよく怒ってた」


 その答えは、言葉にしたくなかった。けれども、バージルは無神経にそれを答えに変えた。


『なるほど! 分かったぞ! 澄恋は、リリーシャの事が好きなんだ!』


 澄恋はリリーシャの事が好き……? 嘘だ!


「じゃあ、私の事は? 私の事を守ってくれるのは?」

『多分、妹のように思っているんじゃないのか? そうだ! 妹だ! 俺様の名推理に間違いはない!』


 バージルはそう言ってから、私の様子に気づいてギョッとしていた。

 私が泣いていたからに他ならない。


『い、いや……。間違いだ! うん、気を落とさないようにな! じゃあな!』


 都合が悪くなったのか、バージルは言うだけ言って、上の部屋に天井をすり抜けて帰って行った。私は怒りで震えた。


「バージル君の馬鹿!」


 私は枕を天井にぶつけた。羽が舞って、枕はボスンと床に落ちてきた。私は八つ当たりした枕が可哀想になって腕に抱えた。そして、そのままベッドに横たわる。


「妹か……そうよ。私はまだ十六歳だから、あと五年……あと、五年で綺麗になって、澄恋の意識を妹から恋人に昇格させてやる! 五年計画だ!」


 涙をぬぐう。


「澄恋君の恋人……! フッフッフ……!」


 そして、私はアヤシイ笑いを浮かべた。

 打倒、ファウラー! 打倒、リリーシャ! な、夜だった。


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