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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第二部♚最終章◆【鳥居香姫は不可思議な二人の正体に驚愕する】
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第一話 行けなくなった医務室*

 あのときから、澄恋もジュリアスも回復して医務室を去った。そして、グレンもすっかり良くなったようだ。だから、医務室に行くためのお見舞いの口実も使えない。そうこうしているうちに、医務室に行く回数はすっかり減ってしまった。


 いや、本当ならクレア先生と喋るのが好きなので、医務室に行きたい。けれども、行けない理由があった。

 回復した私たちと入れ替わる様に、今度はファウラーが医務室に入り浸る様になってしまったのだ。医務室に行くと必ずのようにいるのだ。


 ファウラーと仲の悪い私は、当然仲良くできるわけもない。居辛くなり、段々と医務室から足が遠退いて行った。


「居場所を取られたような気分……」


 私は机に片肘付いてふて腐れていた。ジュリアスが隣で苦笑している。


「ファウラーさん、医務室に何の用だろうね」

「さあ……?」


 ファウラーは悔しいことに頭が良いし運動神経も抜群だから、授業が退屈なのかもしれない。だからサボりたいのかもしれない。

 ファウラーは、アレクシス王子と同じで殺したって死なないタイプだ。だから医務室なんて全然似合わないのに。


 そんなことを話しながら、私とジュリアスが休み時間に教室で喋っていると、背後に気配がした。私は、目をそちらにやってギョッとした。ファウラーが陰険な目を細めて勝気に微笑んでいたのだ。


「あら、私の心配してくれているの?」

「ファウラーさん……!」


 私がおっかなびっくりして苦笑していると、ファウラーは顎を上に向けた。


「それはその……」

「心配してくれてありがとう! 澄恋様からあなたと仲良くするように言われたから、これをあげるわ!」


 何の目的か考えると恐ろしいが、ファウラーは私の机にセロハンに包んだ飴玉を一つ置いた。見覚えがある飴玉だ。その飴玉の正体を知ってげんなりした。


「これってまさか、マジックショップの……?」

「良く知ってるわね。これを機に、仲良くしましょ?」

「は、はぁ……」


 困っていると、ファウラーは肩をすくめて自分の席に戻って行った。

 ジュリアスが隣の席で微笑んでいる。


「良かったね、香姫さん。これで苛められる心配が無くなったね」


 私は飴玉をつまんだまま、ロボットのようにジュリアスの方を向いた。


「良くないよ。これって絶対に嫌がらせだよ! これってジュリアス君がくれた口の中に入れると破裂する飴玉と同じモノだもん!」

「あはは、やるなぁ、ファウラーさん! でも、あのマジックショップには文句を言ってやりたい気分だよ」

「そうだね。悪質な商品や欠陥商品しか売ってないんだからね」


 何の意図があって、ファウラーはこれを私に寄越したのだろう。

 私は飴玉を可視した。しかし、例によって飴玉を可視することはできなかったけれど。どうして、ファウラーの持ち物が可視できないのかが分からない。なんか、もやもやする!

 私の肩に手が乗ったので、私は隣を見上げた。それは、アリヴィナ・ロイドだった。


「香姫、アンタもデメトリアの様子が変なことに気づいた?」

「アリヴィナさん」

「香姫、後ろ見てご覧よ」


 私は、後ろの席を振り返って吃驚した。

 ファウラーがリリーシャと仲良く喋っている!? あんなに敵対していたのに!?


「ど、どうなってるの……? どういう風の吹き回し?」


 リリーシャとファウラーは仲良く喋っているけれど、その隣のクェンティンは困惑している。私と同じことを考えているに違いない。


「香姫も、デメトリア・ファウラーと仲良くしようって言われたんでしょ?」

「う、うん……アリヴィナさんも……?」

「うん。でも、私は様子見。あんなに敵対していたのに、不気味だよね」


 本当に不気味だ。嵐の前の静けさのような。豪雨の前の生暖かい気温のような。


「デメトリア、あんたとは本当に馬が合うわね! 親友になりましょ!」

「そうね、私もあなたとは昔からの親友のような気がしてならないわ!」


 親友!? ファウラーとリリーシャが!?


 リリーシャとファウラーががっしりと握手した場面が鮮明に瞳に映った。私の隣ではアリヴィナが複雑そうな顔をして立っている。

 ファウラーとリリーシャがそんなことを話しているのを、イザベラが後ろで聞いていた。イザベラは明らかに困惑している。ファウラーの親友というのも自分だと思っていたに違いないのに。


 そんなことよりも重要なことがある。ファウラーとリリーシャが手を組んだら、ファルコン組はどうなってしまうんだろう! 私は眩暈を覚えた。


 しかし、事態はもっと深刻な方に向かって行っていることに、私はまだ気づいていなかった。


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