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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第二部♚第三章◆【鳥居香姫は不可思議なグレンの言動に惑わされる】
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第十二話 第二部三章完結 誤解

 私は瞬きをして、グレンを見つめた。


「グレン君、何か覚えていることがあるの?」

「そう言えば、鳥居さんに熱烈な告白をされて呼び出されたような……」


 グレンの表情が生き生きし出した。


「え゛……?」


 なんで、そんな都合の悪い記憶が残ってるんだ!

 私は心の中で絶叫した。


「ほら、データキューブのメッセージも残ってるし」


 し、しまったぁああ! データを消しておけばよかった!

 私はグレンの持っているデータキューブをどうにかしたい気持ちで、それを見つめた。しかし、データキューブはグレンの手の中。どうにかできるような事じゃない。

 でも、私のデータキューブはお陀仏になってしまったけれど。


「い、いや、あれは、何かの間違いで……あはは……! じゃあ、お大事に!」


 ここは誤魔化すしかない!

 私が、後ずさりしながらグレンのベッドから離れようとしたとき、背中に何かぶつかった。なにか、どす黒い気配を感じて振り返ると、澄恋が私を険しい顔で見下ろしていた。


「澄恋君……! 良くなったんだね……よ、良かったよ……」


 私の喉はカラカラになっていた。澄恋はどす黒い視線をまぶたの中に隠してにっこりと微笑んだ。


「うん、ありがとう。それで言いたいことは何かないかな?」

「もしかして、聞いてた……?」

「何か、香姫が熱烈な告白をしたとかなんとか……?」


 ぎゃああああああああああああああああああああ!

 しっかり訊かれてたっ!


「あれは間違いなの! バージル君が!」

「バージル君? もしかして、そいつも香姫と付き合ってるのかな?」


 ああああああああああ! しまった!

 澄恋は、バージルの事を知らないんだったあああああああ!


「バージル君は違うの! そう言うんじゃないの! アレクシス様から頼まれて!」

「ふーん……」


 澄恋の白い目が私に突き刺さる。なんて言い訳をすればいいのだろうか。私は澄恋だけが好きなのに。この際だから、自分の気持ちを正直に告白しようか……! でも、その勇気がない……!

 あたふたしていると、後ろのベッドからカーテンが開く音がした。


「あれ? 香姫さん?」

「じゅ、ジュリアス君……! もうよくなったの?」

「お蔭様でね?」


 空気が変わったような気がした。何なのだろう、この張りつめたような空気は……!


「あ、あれ?」


 気が付くと、ジュリアスと澄恋は対峙して火花を散らしていた。


「あれ? 澄恋さん、魔法学校に何のご用ですか? マクファーソン先生にご用はあっても、医務室にはご用がないはずですよね?」

「ジュリアスに用がないのは確かだね。僕が用があるのは香姫だから。君こそ香姫に付きまとっているみたいだけど? なんなのかな?」

「僕が香姫さんを守ろうと思ってるんですよ。頼りにならない誰かより僕の方が香姫さんを守れるでしょう?」


 ものすごく火花が散っていて、険悪なムードだ。


「あ、あの……!」


 一触即発の空気をどうにかしなければ! 私が逡巡していると、医務室のドアが開いた。


「失礼しまーすっ!」


 明るい声に嫌な予感を覚えながらドアの方を向いた。それは、ガーサイドだった。


「が、ガーサイド君……」


 また嫌なことを言う気なんじゃ。ガーサイドは私を見つけて、こちらに足早にやってきた。澄恋は不機嫌な目で、ガーサイドを目で追っている。


「ああ、鳥居もいたのか! 暫く医務室の入室に許可を貰えなかったんだけど、今日は良いっていうからな!」

「君も香姫に用があるのかな?」


 澄恋がイライラと尋ねた。だが、ガーサイドは首を振った。


「いや、全然ねーよ。俺が用があるのはシェイファーにだよ」

「ジュリアスに?」


 澄恋は拍子抜けしたような顔になった。これで、私の身の潔白が一つ証明された!

 私はほっと胸をなでおろした。すると、ガーサイドはジュリアスの前に立って、自分のローブのポケットを探った。


「僕に用って何?」


 ジュリアスは怪訝そうな顔をしている。


「お、あったあった! 実は、鳥居から伝言があって」

「えっ、伝言って……!?」


 ガーサイドがポケットから取り出した、メモのきれっぱしを見つけて、私は血の気が失せて行くのを感じた。

 そうだ! 私は、たしか、ガーサイドにジュリアスの伝言を頼んだんだった。でも、それは、普通に読めば大したことない内容なのだけれど――。


 ガーサイドはよりによって、澄恋の前で私そっくりの可愛い声色を作った。


『ジュリアス君へ。風邪なのかな。大丈夫? ノートはとっておくから、早く良くなってね! 香姫』


 普通に読めば、大したことのない内容だが、色気ムンムンの声色で読んだものだから、違った意味に聞こえてくる摩訶不思議――。


 伝言を聞いたジュリアスは、微笑みを浮かべた。


「ありがとう、香姫さん」


 そして、勝ち誇った笑みを澄恋に向けた。

 澄恋は、絶対零度のまなざしで私を見ている。


「ううっ、澄恋君、あの……!」


 言い訳しようとしたら、澄恋は嘲ったように笑った。


「ええと、なんだっけ? グレンに、バージルに、アレクシス様に、ジュリアス?」

「あの、誤解なの! 私が本当に好きなのは……!」

「とんだ男好きだね。将来が怖いよ」


 頭を殴られたような衝撃がした。


「酷い! 言って良いことと悪いことがあるよ!」


 悪いことは重なるもので、丁度その時来てほしくない人が医務室に入ってきた。


「あれ? 澄恋様、何かお取込み中?」

「ふぁ、ファウラーさん!」

「ああ、デメトリアさん。そうだよ。取り込み中」


 澄恋はファウラーに優しそうな視線を投げかけてから、私に白眼を向けた。


「こんなに男をたぶらかして、大きい顔をして僕のことを言える立場なのかな」


 私の眼から涙が零れそうになる。私のは不可抗力だ。

 でも、澄恋はファウラーの事を――。

 泣きそうになっている私をどう思ったのか、澄恋は咳払いして続けた。


「……じゃあ、六の月二日。午前九時。迎えに行くから」

「えっ?」


 澄恋は、紙に走り書きして、私に手渡した。私は唖然となった。どうして、あの流れでこうなるのか分からない。


「澄恋様!」


 ファウラーが文句を言おうとしたとき、澄恋が彼女に微笑みかけた。


「デメトリアさん、香姫と仲良くしてあげてね」

「え、は、はい……」

「じゃあね、香姫」


 澄恋は簡潔に言い残すと、帰って行った。

 この日程って……もしかして、この間のデートの約束……?

 ファウラーは私を震えながら睨んでいたが、気を取り直したようにフンとわらった。


「きっと、その日に香姫さんは澄恋様にフラれるわ!」


 ショックで泣きそうになったが、負けじとファウラーを睨み返した。


「きっと、そんなことになんてならないよ。私が説明すれば、澄恋君は分かってくれる。ファウラーさんなんかに負けない!」


 私が言うと、ファウラーはフンと鼻で笑って、クレア先生と話していた。私は、ファウラーと顔を合わせているのが嫌なので、さっさと医務室を退室したのだった。


☆…┓┏━┓☆…┓┏━┓☆…┓┏━┓☆…┓┏━┓

┃第┃┃二┃┃部┃┃三┃┃章┃┃完┃┃結┃┃!┃

┗━┛┗…★┗━┛┗…★┗━┛┗…★┗━┛┗…★


◆◇◆――……第二部四章に続く……!――◆◇◆


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