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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第二部♚第二章◆【鳥居香姫は不可思議なアレクシスの窮地に忙殺される】
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第十三話 ジュリアスの真相2

 私は、グレンが何を言ったのか、心の中で反芻してみた。

 私が、妖魔に狙われている……!?


「えっ、何それ!」


 私は思わず声に出していた。残留思念の彼らが反応を返すことはない。

 ただ、私の心臓が早い鼓動を打っている。


 私はどこかでミスをしたのだろうか。妖魔に狙われてしまうような、凡ミスを。それとも、私が可視使いなことがどこからか漏れている……? 一体どこで……?

 一人で考えても埒が明かない。かといって、残留思念のグレンに訊くわけにもいかない。


 顔を上げると、瞠目しているのは私だけはなかった。残留思念の中のジュリアスも驚愕していた。ジュリアスの見開いた瞳が動揺でゆれている。

 そこに残留思念の私が、間の悪い頃合いで教室のドアを開けた。


『ジュリアス君!』

『香姫さん……!』

『二人して何の話ししてたの?』

『いや……。実は、商店街の知り合いの人が怪我をしたらしくてね……』

『えっ、そうなの?』


 この時、私はもっと疑うべきだったのだ。商店街の知り合いが怪我をしただなんて、ジュリアスの取って付けた嘘だったのだ。


『じゃあ、グレン君。場所を変えて話そうか?』


 ジュリアスは、何も知らない私を巻き込まないようにしたのだ。ジュリアスは一人で解決する気なのだ。


『私も聴いても良い?』

『ダメだよ。香姫さんには関係のないハナシだからね?』

『ええ~っ!』


 ジュリアスの優しい笑顔に私の心が苛まれる。


「ジュリアス君……!」


 そして、私は可視したままドアを開けて、残留思念のジュリアスとグレンの後を追う。

 ジュリアスとグレンは、少し離れた廊下で喋っていた。

 辺りに人影はなく、彼らだけだ。残留思念の夕日が彼らを照らしていた。


 グレンは辺りを窺って、続きを話し始めた。


『鳥居香姫を狙っているのは、『三億ルビーの賞金首・追憶のフィン』だ。それで、どうする?』


 三億ルビーということは、蟻地獄のデュランと同じだ。相当強い。


『勿論、香姫さんの代わりに僕が始末する! それが現れそうな場所を教えてくれないか!』

『ブリリアント町のアレー川付近に午後一時ごろに出没しているとの情報がある』

『分かった、ありがとう。五の月三日に行ってみようと思う』


 ジュリアスとグレンはそこで別れた。


「五の月、三日、午後一時――って、今日!?」


 呆然自失な感覚に襲われる。

 確かに今日の日付だった。とっくの昔に時間は過ぎている。

 なのに、ジュリアスはまだ帰ってこない――。

 それが何を示しているのか、考えたくもなかった。


 私は馬鹿な自分を呪って嗚咽を上げて崩れ落ちた。

 混乱で可視した世界が回る。

 私はそれを止めるように、床を両手の拳で叩いた。

 可視した世界は、私の落ちた涙と一緒に弾けて消えた。


「私は、なんて鈍いの!? この時、一緒について行けばよかったのよ! そして、ジュリアス君の話を聞いて、一緒に解決すればよかったのよ! そうだ、マクファーソン先生に協力してもらって――」


『何かあったのか?』


 ふわりと私の前に人影が舞い降りた。私はその声に疑問を持っていたので、可視してそれを見つけることも容易かった。


「っ!? バージル君!」


 バージルが、私を見て仕方なさそうに笑っていた。


「バージル君! そうだ! バージル君、助けてほしいの!」


 私は、可視したことを一通り説明した。バージルは驚いていたが、力強く頷いた。


『俺様に任せておけ! ひとっ走り行ってきてやるよ! だから待ってろ!』

「うん……!」


 緑の風が舞って、バージルは瞬間移動した。バージルのお蔭で不安が軽くなったが、それも長く続かなかった。

 バージルが去ってから、十分が経過した。


「バージル君、遅いな……」


 私は落ち着きなく、廊下を歩き回っていた。切れかかった魔法灯の音と、夜風が唸る音がしている。それが余計に、私の不安を掻き立てるようだった。


 まさか、バージルに何かあったのだろうか。でも、ここからだと私は可視することもできない。そうだ、クレア先生に相談すれば何か。


 駆け出そうとした私の前に、緑の風が舞う。バージルが瞬間移動の魔法で帰ってきたのだ。

 吹き荒れる緑の風が止んだ。


「バージル君! どうだっ――」


 駆け寄ろうとして、私は思わず足を止めた。


「っ!?」


 可視している私の目に映ったもの。


 それは、顔面蒼白のバージルの姿だった。

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