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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第二部♚第一章◆【鳥居香姫は不可思議な転校生に手を焼く】
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第十九話 ファウラーの弱点

 決闘は、昼休みに行われた。グラウンドでは、見物客の生徒たちでごった返している。さすがに、この大勢の生徒たちの前で負けると、主導権がどちらに移っても不動なんじゃないか。

 ついに、リリーシャ&アリヴィナVSイザベラ&ファウラーの決闘の火ぶたが切って落とされた。

 勝負の審判にはマクファーソン先生が駆り出された。マクファーソン先生は研究の途中だったらしいが、リリーシャの変な熱意とファウラーの癇癪に耐えきれず教室から出てきた。なので、マクファーソン先生は普段よりもムスッとしている。


 マクファーソン先生が「うぉっほん!」と咳ばらいをした。


「今からリリーシャ&アリヴィナVSデメトリア&イザベラの決闘を行う!」


 マクファーソン先生が張り上げた声に一同は盛り上がるだけ盛り上がった。


「始まったね?」

「う、うん」


 私はジュリアスと一緒に見物していた。地面に座って二人して応援している。

 賑やかな声が聞こえてきて、私は右隣を振り向いた。


「絶対にリリーシャが勝つと思うけどなぁ」

「な! アリヴィナたちの勝利に間違いないってーの」

「リリーシャ、がんばれ~!」

「アリヴィナ、ほどほどにしとけよ~!」


 ガーサイドとクェンティンも少し離れたところで一緒に応援している。ガーサイドとクェンティンはリリーシャとアリヴィナと同じで、実は馬が合うのかもしれなかった。


 マクファーソン先生が手をサッとあげて「始め!」と合図した。


『可視編成!』


 呪文が一斉に唱えられた。アリヴィナとリリーシャは光と炎の魔法。ファウラーとイザベラは水と闇の魔法。それらがぶつかり合って押し合いしている。アリヴィナとリリーシャが力を込めて手を振ると、塊となった魔法はファウラーとイザベラに命中した。


「やった!」

「リリーシャさんとアリヴィナさんの敵じゃないみたいだね!」


 私はジュリアスと手を叩き合って喜び合う。

 これで、決着がつくのかと安堵したが、土煙が去った後、イザベラとファウラーは無傷で立っていた。


「何ですって!?」

「無傷!?」


 アリヴィナとリリーシャは驚いて身構えている。


「この程度なの? これなら、私たちの勝ちね!」

「そうみたいですわね! 私たちの方が強いですわ!」


 それを転機に、ファウラーとイザベラの反撃が始まった。

 魔法で、畳みかけるようにリリーシャとアリヴィナを追いつめているのだ。


「嘘でしょ……!?」


 私は青ざめながらそれを傍観していた。心臓が嫌な音で鼓動を打つ。このまま、リリーシャとアリヴィナが負けたら、ファルコン組の平和はどうなってしまうのだろう!


 私は居ても立っても居られず、立ち上がった。


「どうしたの? 香姫さん?」


 ジュリアスが不振がっている。


「私……私。ちょっと行ってくる!」


 その言葉をジュリアスのもとに残して、私はあてもなく走り出した。

 ここでただ見ていたら、リリーシャとアリヴィナは確実に負けてしまう。

 私にできること。それは可視することだ。ファウラーとイザベラの弱点を可視したら、突破口が見つかるかもしれない。


 私は教室に向かおうとした。けれど、リリーシャとアリヴィナの悲鳴が風に乗ってここまで届いた。ぎくりとして立ち止まる。このまま、教室に向かったら間に合わないかもしれない。


「どうすればいいの?」


 こんな所で躊躇して右往左往していても、リリーシャたちが負けてしまうだけだ。


「とにかく、教室に向かわないと!」


 決断して走り出した私の前に、ふわりと風が舞った。


『よう!』

「えっ!? ば、バージル君!?」


 聞き覚えがある声に私は足を止めた。可視して辺りを見回すと、バージルが立っていた。可視しなければ見えないところを考えると、まだ呪いは解けてないらしい。


『お困りのようだな?』


 バージルはニヤニヤしながらこちらを見ている。こないだは、私の事を怖がって逃げていたのに、どういう心境の変化だろうか。バージルの事を無言で見ていたら、脳裏にひらめくものがあった。


「そ、そうだ! バージル君、瞬間移動できるよね! 私をファルコン組の教室に連れて行ってくれないかな?」

『どうして?』


 問い返されて、私は言葉に詰まった。私が可視使いなことをバージルに知られたらまずいのではないか。


「……ファウラーさんの弱点を探りたいの」


 だから、私は曖昧に言うにとどめた。けれども、バージルの興味を引くには十分だったらしい。彼の目が面白そうに輝いた。


『面白そうだ! 俺様も協力するぜ!』


 バージルは私の手を取った。


『可視編成!』


 バージルは魔法を唱えると、私を引き連れて教室まで瞬間移動した。


「ファウラーさんの机は……っと」


 私はファウラーさんの机の上に置かれている白いレースのハンカチを見つけた。これなら、いつも身に付けているので、弱点が分かるかもしれない。

 私はそれを手に取って、可視した。けれども――。


「えっ!? 可視できない!?」


 私は愕然となった。

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