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不可思議少女は今日も可視する  作者: 幻想桃瑠
◆第二部♚第一章◆【鳥居香姫は不可思議な転校生に手を焼く】
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第十七話 ほうきの授業3

 私は、澄恋に横抱きにされたまま地上に降りていく。まさかの『お姫様抱っこ』に骨抜きだ。


「大丈夫? 香姫」

「うん……まさか澄恋君が助けに来てくれるなんて思いもよらなかった……」

「香姫はやっぱり僕が居なかったらダメだね」

「う、うん」


 澄恋と私の乗ったほうきが地面に降り立った。地面に下ろされた私は、足が震えてその場に崩れ落ちた。どうやら腰が抜けたらしい。


「大丈夫か!?」


 澄恋が慌てて私を支える。抱きとめられて私は、まな板の上の鯉状態だ。


「うん、えへへ」


 澄恋の格好良さに私はメロメロだ。

 一息ついていると、クラスメイト達が駆け寄って来た。


「鳥居さん、大丈夫!?」

「うん、澄恋君が助けてくれたから大丈夫だよ」

「鳥居さんと同じ異国の人だね! 二人とも滅茶苦茶お似合いだね!」

「彼女のピンチに駆け付けるだなんて王子様以上だよね!」


 私は何と答えたらいいのか分からずにひたすら照れていた。


「えっと、えっとね……」


 返答に困って澄恋を振り返ると、澄恋は穏やかな微笑みをくれた。格好良すぎだ。何でこんなに格好良いのだろう。そんな疑問を持った私は思わず澄恋を可視していた。

 細身ながら無駄のない筋肉がついている。髪が煌めいて、バックに薔薇が見えた。ついに私はとろけて可視酔いに陥ってしまった。


「鳥居さんの彼氏さん?」


 レヴィーが澄恋にニヤ付きながら尋ねた。


「ノーコメントだ。でも、香姫は僕の大切な人だから、傷つけたりしたら容赦しない」


 私の顔は熱されて湯気が出そうになる。女子生徒たちは私の色恋沙汰に黄色い声を上げて騒いでいる。男子生徒は「ヒューヒュー」と冷やかしてお祭り騒ぎだ。


「僕はまだ忙しいから……じゃあね、香姫」

「うん、澄恋君ありがとう」


 私は澄恋がほうきで飛び去るのを見送っていた。

 ファウラーとイザベラが鋭い目で私を睨んでいる。その事に気づいて可視酔いから醒めてしまった。


「可視編成!」


 マクファーソン先生と、ジュリアス、アリヴィナ、ガーサイド、リリーシャ、クェンティンが瞬間移動で帰ってきた。


「鳥居、無事か!」

「はい。澄恋君が助けてくれたので」


 マクファーソン先生は頷いて、クラスメイトを見渡した。


「しかし、一体何故あんな事が起きたのだ?」


 ジュリアスが、ファウラーを指差した。いきなり指差されたファウラーは、吃驚して目を瞬かせていた。


「マクファーソン先生。ファウラーさんが、香姫さんにこの授業で面白いモノを見せてやると言ったそうです」


 ジュリアスが冷めた目をしてファウラーを睨む。名指しされたファウラーは苦り切った顔をしている。クラスメイト達はざわめいてファウラーを敵意のこもった眼で見ている。けれど、一番激怒したのはマクファーソン先生だった。


「デメトリア・ファウラー! 本当なのか!」

「ち、違います! 面白いモノというのは、私が華麗に空を飛ぶことです! 香姫さん、勘違いしているんだわ!」

「そうですわ! それにほうきを勝手に暴走させてデメトリアさんの仕業だと見せかけるとは、なんて怖い人なの!」


 ファウラーとイザベラの攻め立てに、今度は私の方がクラスメイト達に敵意を向けられるという憂き目を見た。けれど、私とて黙ってはいない。


「私何もしてないよ! どうして私が、ほうきをわざと暴走させて怖い目に遭わないといけないのよ!」


 香姫とイザベラの応酬に生徒たちは動揺している。どちらが真実なのか違いが見抜けないらしい。


「いい加減にしないか! デメトリア・ファウラー! 香姫鳥居! 授業を妨害した罰としてほうきもファウラーと鳥居が片付けること! では、授業を終わる!」


 号令がかかり、マクファーソン先生は帰って行ってしまった。生徒たちもこちらを気にしながら教室に戻っていく。ジュリアスが私に声をかけようとしたとき、ファウラーがため息を吐いた。


「私が悪かったわ。片付けましょう?」

「えっ……? う、うん」


 ファウラーはほうきをリリーシャたちから受け取り始めた。

 もしかして、ファウラーが謝罪したのか。信じられない。私は唖然としてファウラーの後姿を見つめていた。

 ジュリアスが駆け寄ってきて、クスッと笑った。


「もう心配はなさそうだね?」

「うん、ファウラーさんが謝ってくれたし! ジュリアス君、先に帰ってて」


 ジュリアスは、暫く私の駆けていく姿を見つめていた。その時、リリーシャとアリヴィナに声をかけられて、ジュリアスは何かを話していた。しかし、私がほうきを回収して振り返ると、彼らの姿は忽然と消えていた。

 私とファウラーはほうきを三本ずつ抱えて、倉庫まで歩いていく。


「ここが倉庫ね」


 ファウラーと一緒に私は倉庫のシャッターを開ける。淀んだような空気が倉庫の中に充満していた。


 倉庫の中を見ていると、ドンと背中を押されて、転んでしまった。


「イタッ!」


 ファウラーが私を突き飛ばしたのだ。それだけではない。

 いきなりガシャンという音がして真っ暗になった。


「えっ!? ちょっと! ファウラーさん!?」


 どうやら、ファウラーが倉庫のシャッターを閉めたらしかった。私は真っ暗な倉庫の中に閉じ込められてしまったのだった。

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