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魔法使いの恋  作者: にしのかなで
一章
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歓迎の宴(追加)

あっという間にウルリヒに来て二週間が経った。最初の一週間はとにかくジルベールに絡まれ、今週は高等魔法技術学校へ挨拶に赴きルディは自分の力の調整がまだ今一つな事を指摘され、まずは集中力を高める訓練をする事になった。オブリーは、ブランクなんかあるのか⁉というくらい絶好調で流石特Aランク、ここでは癒術を学ぶ事になった。ユーグ技術長が言うにはルディとオブリーさんの違いは「護るモノがあるかないか」だそうだ。確かに執事であるオブリーには主君シュヴァリエ公爵家始め離れの住人、そして国への忠誠心。違いの指摘に項垂れるほど頷ける。癒術を学ぶのは有事に3種の力があれば十分一個小隊並の勢力になるからだそうだ。それに比べてルディは名ばかり総括、つまり守護・戦力・癒し・占い全てを兼ね備えているがどれもがちぐはぐで一つ一つは確かに能力的には高いがまとまりがなく、このまま上手く使い切れないと何ともならないとまで言われた・・・。確かに、ウルリヒに来てからハヴェルンにいた時より上手く力が操れない。離れの結界あってこその自分なのか・・・と、落ち込みながらも3週目に入った。合間に王妃陛下の元に癒術を施しに行くのだが、どうやらハヴェルンの養母と遠縁に当たるらしく養母の武勇伝や、ヴィルへルミナ王女の話などをして過ごす。今回の婚約には養母の後押しもあったらしい。病の方は寒暖の差が激しい地方なので気管支を患ってた。第三王子殿下を出産してから、体調に変化がありよくこういった事が起こるらしい。


毎日の病状を観察しハヴェルンの養母に時折意見を求めるため、恐れながらと高等魔法技術学校の飼育された梟を使い手紙を飛ばす。今迄、必要を感じていなかったが自分も使い魔をそろそろ用意しないといけないなと思う。同じ歳頃には将来を真剣に考えていたというオブリーの話を聞いて、その考え方の違いにもっとしっかりしないといけないなと思い知らされた。思い返せば護られてばかりの人生だった。将来・・・まず、この留学後の進路を考えなければ。そんなこんなでひと月経つ頃、国王陛下から夜会の案内状が二人に届いた。王妃陛下には養母のアドバイスを貰いつつ調合した薬が体に合ったのか、気候も今頃が一番落ち着いていているそうでこの機会に僕らの歓迎を兼ねた宴が開かれるという。こんな時に離れの侍女達がいればいいに、と思い出していたら有能な執事がそれなりに見えるよう身なりを整えてくれた。オブリーと夜会に出るのは初めてだが、この人モテるんだろうなという容姿に今更ながら気づく。明るい鳶色の髪を撫でつけ紅茶色に似た瞳で正装して立つ姿は貴族にも劣らない。なんというか、自信があるそんな雰囲気をいつも持っている。


ルディはといえば今回も切ると何が起きるかわからないからと、ハヴェルンを出る時に養母が何事か唱えながら切りそろえた癖毛が、少し伸びたまま出かける。まだ結ぶほどには伸びてないがしかし、ウルリヒで粗相があるといけないのでとにかく切らずに伸ばす様言われている。まだまだどうにも未熟者扱いから抜け出せない。眉間に皺を寄せて会場に歩いているとオブリーがそんな難しい顔じゃ女性が近寄りがたいですよと言ってくる。女性・・・正直、そんな事を考える余裕もない。宴は堅苦しいものではなく、王妃陛下もゆったりと寛げる感じの様だった。最初に国王夫妻に挨拶に赴き、改めて会場の紳士淑女に紹介される。そして、ダンスの始まりだ。こればかりは逃げられないので最初に挨拶にこられた何処ぞの伯爵令嬢をユベール殿下に紹介されその令嬢と一曲踊り終わると次から次へと誘いが来る。他国なので愛想よく頑張ったがなんとか5人目辺りでぬけだした。飲み物を受け取りダンスの輪を見やるとオブリーが実に軽やかにそして爽やかに踊っている。ルディはあの人、ここで伴侶を見つけるかもとかぼんやり考えながらテラスへと出る。確かに湿気もなく暑くもない心地いい風が時折吹いてくるいい気候だ。飲み干したグラスを置くついでに何か食べ物を、と振り返った時だった。


「っきゃ、すみません。飲み物が零れなかったかしら?」


鈴の音のような声がした、ルディを見上げる空色の瞳が困った様に見つめてくる。


「いえ、僕のグラスは空ですし服にもかかってはいないようです。それより貴女は大丈夫ですか?」


茶色の巻き毛に瞳に似た色のドレス、うっかり見つめてしまいそうになる美人、というより可愛らしい顔立ちをしている。


「ええ、私も大丈夫ですわ。あの、先程紹介されていらしたハヴェルンからのお客様ですよね?」


「はい、ニーム・ロドリゲス・ガウス国家魔法魔術師です。失礼ですが貴女のお名前は?」


「まぁっ!失礼しました、申し遅れましたがブランディーヌ・デ・ブロワト男爵令嬢です。高名な魔法魔術師様にお会いで来て光栄です。」


にっこりと笑った顔も愛らしい。テラスにはいま二人だけだった。


「踊らないのですか?」


「ええ、夜会は苦手で・・・私より貴方の方が中に居なくては。御令嬢方が皆さんお噂していますわよ。」


「いや、僕も夜会は慣れていなくて。相方は楽しんでいるようですが。」


「オブリー様ですね。私も一曲お相手して頂きました。お話も楽しくて笑顔も素敵な方ですね。とても慣れている様子で、リードして頂いて助かりました。」


クスクスと笑いながら話すと、空のグラスを見てここで待つようにと言い残し会場に一旦消えた。暫くすると、さあ召し上がれと軽食と飲み物を渡して来た。


「苦手な事は無理なさらない方がいいかと思いまして。差しでがましかったかしら?」


あぁ、なんだか愛着を覚えると思えば置いてきたあの子を思い出させる雰囲気だ。


「いえ、お気遣い助かります。」


「ふふ、良かった」


その後は殆どブロワト嬢と過ごし、途中ジルベール様に見つかり二人で輪の中に押しやられ何曲かダンスを楽しんだ。

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