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魔法使いの恋  作者: にしのかなで
一章
8/59

仮の住処

ウルリヒ王家の方々に挨拶を図らずも一日ですます事が出来たのは喜ばしい事だと、そう自分に言い聞かせながらルディは魔法省へ向かう。オブリーは先に行って手続きをしているはずだ、いまはその知っている顔に早く会いたいと心から思う。王宮からそう離れていない場所に各省庁の集まる施設が建っていた。案内され魔法省のある階に向い留学及び王妃陛下の癒術師としての登録を済ませオブリーと合流する。事務方の女性が王宮内の敷地にある賓客様の離れの一つが滞在中、王妃陛下の癒術にもすぐ対応ができるのでそちらに荷物を運び入れている事と、高等魔法魔術技師学校への案内図を渡してくれた。やっとこれからの仮住まいに落ち着いた頃には夕食時だった。賓客用の離れと言う事で申し訳ない事に侍女や、厨房まであり恐縮しながら使用人に挨拶をする。オブリーはここでは執事としての仕事があまり必要ない事を魔法省で技術長から先に伝えられており、せっかくの素質があるので共に留学扱いにする様陛下の許可も頂いていると先手を打たれていた。


「また勉強ですよ,この歳で。全く魔法なんてほとんど使わない生活だったのに。」


「でも、オブリーさんは国家魔法魔術師何級かお持ちなんですよね。何級なんですか?」


「・・・特Aランクです、一応。」


「ええぇっ‼ちょっ、オブリーさん一体あと何を隠してますか‼この際はっきりさせてくださいよ、特Aでなんで一介の執事なんて勿体ない。魔法省のエリートの上、爵位の権利もあるじゃないですか・・・ってもしかして爵位持ってるんじゃないでしょうね⁉」


「はぁ〜、こんなとこでバレるとは・・・」


いつまで騙し通すつもりだったんだこの人はと胡散臭い目を向ける。


「確かに私は魔力持ちで魔法技術学校卒業後、特A試験も受かりましたよ。あの頃はまあ、将来を考えて魔法省も視野に入れてましたし一代限りでも爵位を戴くかまで暫く悩みましたけどね。ところが、大叔父が引退すると聞きそれまでお世話になっていた公爵家への恩返しもしたいとも思ったんです。大叔父の希望もありましたしね、公爵家も新しく雇い入れるより知っている人間それも前任の縁者で魔法技師となれば安心ですし。しかし、あの頃はそれよりもあの跳ねっ返りが・・・」


「アナスタシア様ですか?」


「ええ。公爵夫妻は身分差を気にせずある年齢までは寄宿舎生活も許していたのですが、流石に社交デビューが近くなると自宅に引き取り家庭教師を付ける事を考えていまして。」


「で、特Aの貴方に白羽の矢が立ったと。」


「そうです。でも、あの方は癒術師で私は守護と戦闘派でしょう?大変でしたよ、彼女は癒術の殆どの成績を既に修められていて私に戦闘術を教えろとしつこくて・・・。そこへ丁度ルディ様が帰られたので離れの執事に専念させて頂いたのです。爵位も下手に持つと夜会などに呼ばれてお嬢様と顔を合わせる機会が増えると思うと憂鬱で・・・執事に爵位も入りませんし、不自由ないお給料はいただけるし上司の顔色を伺う役人生活より自由の効く執事の道を選んで魔法は肩書き程度に思ってたんですよ。」


「なんか、勿体ない話ですね。オブリーさんなら出世したと思うんですけど。」


「一時は若気で野心もありましたが、今ではこの道で良かったと心から思ってますよ。何事かあれば護衛にはなれますし、公爵家には本当に大叔父の代からよくしていただいたので。」


本当に名誉とか爵位に未練はなさそうな顔だった。ハヴェルンでは魔法技術学校を卒業前に国家試験を受ける。そして同時に魔法省所属軍属扱いに全員がなる。だから、特Aランクのガルディ・スティルなんて称号を持つ者は向こうからスカウトに来るくらいの精鋭だ。それが、一介の執事に収まっている。公爵家に仕えているから何も言われないのだろうが、冷静だけど何処か飄々とした雰囲気があるのがなんだかわかる気がしてくる。とりあえず、明日からはオブリーも一緒に高等魔法魔術技師学校に通い研究なり研鑽なりする事になる。ルディはなんだか、この時ばかりは連れてきてごめんなさいと思ってしまった。

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