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魔法使いの恋  作者: にしのかなで
序章
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小さな戦争

「まず最初にハヴェルン王から感謝の気持ちとしてツェツィーリアからすぐに癒術を施され最上級の魔法薬をその場でもらって飲んだ。するとさすが国一番の癒術師だ、長旅で疲れからますます弱っていた身体がすぐに元気になった。しかしその後だ、ツェツィーリアから子どもを授かる事はないと諦めていたが最上の贈り物を頂き感謝する必ずや二度と重い病に悩まぬよう誠心誠意を込めてお仕えすると言われた・・・僕はねぇ、びっくりしたよ。辛い馬車旅も君の笑顔に癒されてアデーレまで辿り着けた、その心の支えをいきなり連れ去られそうになっている。最初に見つけたのは僕だ、その子は僕の弟にするとツェツィーリアに宣戦布告した。」


「あの、なにか失礼があったのでは・・・」


「あったさー、ははっ。まぁ、危うく本当に国家問題になるかと思ったけど、お互い譲歩して療養中に僕は常に君と一緒にいられる権利を勝ち取った。次は命名権だ、彼女は固い名前ばかり出してくる。僕は他に思いつかないのかと辟易したけどちょうど、こちらで母が読み聞かせしてくれた物語を彼女もたまたま読んでくれた。で、その物語の英雄が勇者ロドリゲス。大陸に残る伝説の最強魔法使い。」


「・・・それが僕の名の由来だったんですか・・・」


チラッと聞いた事はある物語であるがしかし、ツェツィーリアは絶対にルディそれを読み聞かせなかったし、彼の入学前にどんな手を使ったのか国内では絶版になっている。


「うんうん、やりそうな事だねぇ。でね、5歳の僕には呼びにくいんだよその名前。気には入ったんだけど、愛称なら僕に付ける権利があるんじゃないかって言って最初はロージーと呼んでたんだ。で、そのうち体調が良くなってくると療養していた離宮にヴィルへルミナが遊びに来た、彼女は僕より小さかったからロージーも呼びづらかったらしくてある日舌っ足らずに「ルディ」と呼んだのさ。その様が何とも言えず愛らしくて、僕は何度も何度も彼女に君に呼びかけるよう言った。何度見ても飽きない愛らしさに心打たれてそして君は「ルディ」に、僕は生涯の伴侶を見つけたと言うわけ。驚いた?あ、惚気話しになったね。ごめんごめん。」


何なんだ只者じゃないなこの殿下と、ルディは思わず少し引いてしまう。5歳で僕を巡り養母相手に危うく国家紛争、あげくにまだ2歳のヴィルへルミナ王女をその場で未来の伴侶と決めたって⁉爽やかな笑顔に隠された策略家の顔。敵には回さない方がいい、あの養母と対立しつつも意見が合うんだからと笑顔が引き攣る。


「あ、ここだよ。ハヴェルンのガウス国家魔法魔術師殿を案内して来た、王妃陛下の部屋に通してくれ。」


扉の前の護衛に要求していると、中から凄い勢いで扉が開かれた。


「案内して来た。じゃ、ねーよっっ‼このボンクラ兄貴っっ‼」


バシンと頭を叩く音が響く。ルディは心の中で母国に残した養母に、今からでも代わってくれないかなと切実に願った。


中から出て来たのは第3王子イニャス殿下。こちらは金茶の髪に青い瞳をしていて、線の細く見える兄に比べ武官といった風貌をしている。もう何が起きても驚かずにおこうと、静かに心で誓い目の前で兄王子を早口で攻め立てるイニャスに挨拶をする。


「初めまして、イニャス殿下。ニーム・ロドリゲス・ガウス国家魔法魔術師です、この度はお世話になります。すみません、お待たせした様で。ジルベール殿下には直接こちらにご案内して頂き、昔話などお聞かせして頂きながらでしたので遅れてしまいました。」


「あ、初めましてルディ。ってゆうか、兄上から話をよく聞かされてたので初めての気がしないな・・・私は第3王子イニャス・ウルリヒ、王国近衛隊第3部隊長を務めている。この度は母上がお世話になるが、同い年でもあるし宜しくお願いする。では、母上ともう一人の兄が中でお待ちかねだ。どうぞ入ってくれ。」


「はい、では失礼致します。」


「うう、痛い〜。ルディ後で私の頭も診てくれ、こいつを不敬罪で暫く監禁してやる。」


「うるさい、黙れ。どうせ話しているうちに迷ったんだろう。全く、世継ぎが城内で迷うとは情けない。あ、ルディいつもの事だからこの人ほっといていいから気にせずに。」


「酷いぞ!イニャス、こんなに可愛がってるのにっ」


お言葉に甘えて軽〜くスルーして、室内に案内される。


「母上、兄上。お待ちかねのガウス国家魔法魔術師殿ですよ。」


「よく来てくれました、ガウス国家魔法魔術師殿。ウルリヒ王妃バルバラ・デヴォラ・ウルリヒです。どうぞお掛けになって。」


「ハヴェルンより参りました、ニーム・ロドリゲス・ガウス国家魔法魔術師です。今回はお招き頂きありがとうございます。お加減は如何ですか?」


「ええ、このところは陽気のいい天気が続いているので私も少し落ち着いています。イニャスは挨拶したのよね。では、この隣に居るのが第2王子ユベールよ。この子は文官として陛下のお手伝いをしていて、イニャスも訓練中、ジルベールに急に呼び出された挙句待ちぼうけを食らっていたから少し機嫌が悪い様のだけどいつもの事だから気にしなくていいですからね。皆、貴方に会えるのを楽しみにしていました。お会いできて嬉しいわ。ね、ユベール?」


「ウルリヒ第2王子ユベール・ウルリヒだ。君の事は小さい頃から兄より聞かされていて、私も初めて会う気がしないがとにかく我がウルリヒへようこそ。王家にはいま魔力持ちは居ないのだが、魔法省は私が担当している。なにかあれば、遠慮なくユーグか私に言ってくれたまえ。また、ハヴェルンのヴィルへルミナ王女と兄との婚約も整い現在両国は大変良い関係だ。君が留学してきた事で我が国の魔法省も活気づくだろう。2年の付き合いだが、我が家と思って寛いで過ごして欲しい。」


ジルベール殿下より少し背丈のあるユベール殿下は金茶の髪を降ろしたまま微笑む。それはまるで、御伽噺の王子様が抜け出てきた様な姿だった。



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