新しい日々
カリンが二階に去った後、オブリーが疲れ果てた顔で帰って来た。
「あら、やっとお帰りですか?オブリーさん。」
「あぁ、やあフェンリル。その子がセシリアかい?」
暫くセシリアをあやしてからソファにドサッと座り込む。
「オブリーさん、随分お疲れのようですね?大丈夫ですか?」
「あ、これはすみません。お帰りなさいませルディ様。私の方はあと一仕事ありますが、それが終われば落ち着くでしょう。ところでカリンは?」
ルディとフェンリルは顔を見合わせて先程の様子を話すとオブリーが記憶を辿るようなそぶりをしたあと。ああ、成る程と一人納得し始めた。
「それはね、暫く顔を出さないかもしれませんよ。」
お茶を飲みながらゆっくりと言葉を吐き出す。
「何故ですか?」
「・・・あれは、国境での出迎えの後の騒ぎの最中のことで、カリンがそうしなければ多分ルディ様は助からなかったかも・・・」
そう言って例の騒ぎに何が起きていたのかを話してくれたが聞き終わる頃にはもう、僕も二階に逃げたくなっていた。カリンもその時は夢中で後は倒れたり他にも色々と目まぐるしくて忘れていたんだろう。それをあのセシーにキスしたことで一気に記憶が戻ったんだろうな・・・。
「えーと、僕これからどう接すればいいんでしょう?」
「私が話をしてきます。ルディ様はいつも通りでいいと思いますよ。下手に意識されると余計に混乱しますから。」
「じゃ、私はこの後最後の仕上げがありますので。すみません、今日は休暇にさせて下さい。」
「あ、はい。」
あ〜気まずい・・・。暫くしてフェンリルさんが降りてきた。
「大丈夫ですよ。ルディ様が感謝をしているし、これからも今まで通りに過ごすよう言っておきました。今日は無理でしょうが明日には部屋から出てきますよ。」
「ありがとうございます。助かりました。」
「あの、ルディ様。私、通いの仕事になってますのでお食事をお作りしたらカリンの分は部屋に運んでそれから帰らせてもらうのですが、大丈夫ですか?」
「ええ、僕も食事を取ったら休みます。オブリーさんはなんか最後の大仕事があるそうで、この後また出掛けるようです。」
「そうですか。ルディ様達より随分早く帰られたと思ったら毎日早朝から多分夜遅くまでお仕事をされてたようですけど、何かあったのでしょうか?」
そういえば、ウルリヒにいた頃から急にいそがしくしていた。なんだろう?まあ、今日片が付くらしいし時期が来たら話してくれるだろう。この日は久しぶりに懐かしい食事を食べ二階に上がり悩んだがカリンの部屋のドアをノックし声をかけた。
「カリン、僕だよ。開けなくていいから、あの。ああ、もう眠ってるかもしれないけれど僕は感謝してるよ君の行動に。今回は何度も助けられた、ありがとうカリン。じゃあ、おやすみ。」
ドアに背を向けると中から声がした。
「きょ、今日はすみませんでした。明日からは普段通りにします。えっと、おやすみなさいませ。」
ホッとした、なんとか普通にやれそうだ。
「うん、おやすみ」