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魔法使いの恋  作者: にしのかなで
十二章
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帰国

翌朝、アルベリヒの言うとおりハヴェルン一行はごく少数の侍女を残しウルリヒを後にした。そして数日かけ無事ハヴェルンの首都アデーレに帰り着く。王宮内までアルベリヒを送り届けた後、すっかり近衛隊からも妹扱いされ可愛がられていたカリンは両手に土産を沢山もらいアナスタシアとルディと共にシュヴァリエ公爵家からの迎えの馬車に乗り、ルディはほぼ一年ぶりに懐かしいシュヴァリエ邸に帰り着いた。公爵夫人は挨拶に伺うと向こうで何があったか既に知らされており労いの言葉をかけてくれた。カリンについては同じく労いとこれまでは見習いの身であったが本日付で正式に専属侍女となることを言い渡された。屋敷の使用人達は僕らを見かけると笑顔で帰宅を喜んでくれた。一年ぶりの離れはまず掃除だろうと思っていたが入ってみると離れた時と変わらず綺麗な状態だった。


「お帰りなさいませ。ルディ様、カリン。」


そこには赤ん坊を抱いたフェンリルが立っている。


「ただいま、フェンリルさん。動いても大丈夫なんですか⁉︎」


「ええ。もうこの子三ヶ月ですよ。お二人とも抱いてやっていただけますか?」


「え、なんか怖いな・・・」


首は座ってますから大丈夫と僕らに押し付けてお茶の用意をしにかかる。カリンが横からうずうずして見ているのでそっと渡すと赤ん坊は泣もせず不思議そうにカリンを見つめたり髪を触ったりしている。


「可愛い〜。女の子ですか?男の子ですか?お名前は?」


あやしながらも矢継ぎ早にカリンが問いかけるとお茶を運んできたフェンリルが笑いながら答える。


「女の子なの。名前は色々と考えてはみたのだけどね、女の子が生まれたらつけたい名前が最初からあってその名に決めたのだけど・・・セシリアよ。」


カリンが一瞬固まる。


「どう?いい名前だと思わない?」


すっかり母親の顔になったフェンリルが微笑みながらかりんを見つめる。


「僕は、凄くいい名前だと思います。きっと誰からも愛される子になるでしょう。」


あーっと言いながらカリンの顔をペタペタ触りセシリアが笑い声をあげる。カリンが軽くセシリアを抱きしめた。そして呟く。


「小さなあなたが誰からも愛され幸福に育ちますように。」


そしてちいさな頬に軽く唇を落とすとセシリアがくすぐったがってまた笑い声を上げる。


「ありがとう、カリン。あなたに祝福される子なんて滅多にいないわ。よかったわねー、セシー。」


カリンからセシリアを受け取り頬擦りをする。


「セシー?が、愛称ですか?」


「ええ、うちの旦那がセシルだと小さい時のカリンを思い出して混乱するからセシーと呼ぶって。ルディ様も大事な事を伝える時はそうお呼びになってましたよね。」


思わず赤くなってしまった。セシリアは魔力持ちでない普通の子として生まれた、聞けば名付けは僕に頼みたかったがいつ帰るかわからないため通常通り生まれて7日目に名付けの儀は終わらせたそうだ。


「あの、図々しいですがルディ様からもお言葉をいただけますか?」


「わかりました。えっと、セシリア・ドナリエで間違ってないですか?」


「はい。」


フェンリルの嫁ぎ先の名を確認しセシリアを抱き取る。


「汝セシリア・ドナリエに我ニーム・ロドリゲス・ガウスから祝福を授ける。賢く丈夫に愛らしく育つよう心から祝おう。生まれてきておめでとう、セシー。」


懐かしいその名を呟きカリンと同じように軽く頬に唇を落とせばミルクの香りと石鹸の匂いがする。そしてやはり笑い声をあげて喜んだ。


「ありがとうございます、お二人とも。さあ、お茶にしましょう・・・カリン?」


見るとカリンが真っ赤になった両頬に手をやり口をパクパクさせている。


「あれ?疲れで熱でも出たかな?」


と、額に手を伸ばそうとするとガバッと立ち上がり


「あ、あ、ああの。私、先に荷物を片付けて来ます〜っっっ‼︎」


と、止める間も無く二階に駆け上がって行った。

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