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魔法使いの恋  作者: にしのかなで
十一章
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ハーヴェイ

黒髪に主巫女と同じ紺碧の瞳、すらりと伸びた手足に服装は一応神らしき白い布地をまとっていた。


「あ、驚かせた?いやごめんごめん。でもさ、ハプトマンだけズルいと思わない?あんな派手な演出、いくら祝福の神とはいえ私に内緒だったんだよ⁉︎」


「ハプトマン様は余程この度の御婚礼がお気に召されたのではないですか?」


横から主巫女が口を出す。


「でもね?私は主神だよ。ちょっと位見せ場をくれたって・・・」


あ、主巫女が額を押さえている。


「・・・ですから、あの婚礼はハプトマン様の神殿で執り行われたのですよ。そこにハーヴェイ様がお出ましになればアレクシアの立場が余計面倒なことになるでしょうし、あなた様の愛し子はガウス殿では?」


主巫女に諌められる様に言われた主神は僕を見た。


「うん。私は成り行き上とはいえ君を護った。確かに愛し子と言われればそうかな。何せ赤ん坊の君は大層可愛らしかった。私は君がまだ両親と暮らしていた頃畑仕事の傍で木の陰に寝かされている君をあやしたこともあるんだよ。君の両親を守ってやれなかったのは悔やまれる。二人とも敬虔な信仰心があったからね。だから、その願いだけは聞き届けようと疫病からもあの女からも君を取り返した。不思議なことに君はジルベールやアルベリヒから非常に可愛がられたよ。なんだろうね、僕もハプトマンもそこまで意図してないのにもともとなんだろう君ら二人は周りを惹きつける魅力がある。」


いつの間にか僕の背中にしっかりしがみつき姿を隠していたカリンがひょっこりと顔を出した。


「あのぉ・・・私が夢の中でお話したのはハーヴェイ様ですよね?」


「おぉ!アレクシア、やっと顔を見せてくれた!」


「え、と。その節は失礼いたしました。」


「あぁ、私は君に振られて暫く寝込んだよ。」


「ええっ!ど、どうしましょう。私そんなつもりでは、あの時はただもうルディ様が心配で・・・」


「いや、よく決断した。私と共に来ればルディは二度と目覚めなかっただろう。君は間違ってない。私はね、ルディも可愛いがやはり女の子の方がいいからね。君は母を持ち出しても躊躇せずに駆け付けていった、かつての赤子が今度は私の恋敵となった。それにふさわしいかどうかを見に来ただけだよ。さ、出ておいで無理やり連れて行ったりしないから。」


カリンは主巫女を見た。主巫女は頷いている、次に下から僕の顔を不安げに見上げる。僕も笑って背中からカリンを引っ張り出す。


「ほう、誠に見事な銀の髪だ。夢の中でははっきりと見られなかった。よく姿を見せてくれたなアレクシア。まだ私が怖いか?」


「いえ!でも、私はルディ様のお側に居ます。ハーヴェイ様の元に行けないことはお詫びいたします。」


「あぁ、二度振られたか。ルディ、お前はもっとしっかりしろ。この国でのアレクシアの活躍はお前以上だぞ。私はちゃんと聞いていたからな神殿でのハプトマンへの誓いを。」


「はい、今回の事件解決にカリンには大変な苦労をさせてしまいました。これからは私がしっかりと護っていきます。」


「よし。その言葉私への誓いとして忘れるな。あと、悪い虫にも気をつけろよ、人間はあっという間に成長する。」


「重々承知しております。ハーヴェイ様のお目に叶うような者が現れるまでは何人たりとも近寄せません。」


なんだか、主神がニヤニヤ笑ってるけど真面目な表情は崩さなかった。


「さて、では帰るとするか。」


主巫女に向かい球体を見る。


「・・・お前、まさか帰りまで閉じ込める気じゃないよね?」


「お気持ちに整理がつかれたのであれば、帰りはあんな事は致しません。」


すました顔で主巫女が言う。一瞬主神がホッとしたように見えたのは幻か?主神はくるりとまた僕等に向き直し近づいて来ると二人に手を繋ぐように言った。それから、僕らの空いた手をそれぞれ掴み輪を作ると瞳を閉じ何やら神語で呟き始めた。途端に僕等は身体が熱く感じたが一瞬で終わる。そして瞳を開けた主神がそれぞれを交互に紺碧の瞳で見つめ微笑むと別れも言わずにその場から消えた。主巫女も当然いなかった。


ノックがしルイゼナさんが美味しそうな匂いをワゴンに乗せ入ってくる。しげしげと両手を見つめる二人に不思議そうな顔をしながらも何も聞かず食事を並べる。


「さあ、お二人ともお忙しくてお腹が空いているでしょう?たっぷり召し上がってください。」


カリンと顔を見合わせ笑いながら席に着く。時間は気にせずゆっくり召し上がれと言い残しルイゼナさんは下がって行った。そのあとは他愛のない話をしながらお互いの空っぽの胃袋を満たしていった。

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