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魔法使いの恋  作者: にしのかなで
十一章
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婚礼の儀

いよいよ、ウルリヒ王国王太子ジルベールとハヴェルン王国第一王女ヴィルヘルミナの婚礼の儀の日になった。正装に身を包んだ王太子はここ最近はヴィルヘルミナに相応しくなるよう積極的に国政に関わっていたお陰か初めて会った時より精悍な顔つきになっている。


式は戦と祝福の女神であるハプトマンを祀った神殿で行われる。ヴィルヘルミナは別の控えの間にて身仕度を施されハヴェルン王国王太子アルベリヒに導かれ平和の象徴である青い絨毯を歩いてくる予定だ。この色は二人が二つの国の架け橋となり争いを好まず両国のより良い関係を願い選んだそうだ。


その両側には椅子が並びウルリヒの主だった貴族や神殿の関係者らが座し待っている。そして、ヴィルヘルミナが入って来る扉から真っ直ぐ正面にはこの日花嫁以上に緊張しているかもしれないカリンがこのために作られた青と白の織り混ざったゆったりとした神式の服装で立っている。その後ろには女神ハプトマンの像がどこか穏やかな優しい表情で祀られていた。今日までに何度もこちらに足を運び練習をしては、帰るなり半泣きになりながら


「無理無理無理〜絶対無理です〜!」


と、部屋に閉じこもり叫んでいた。でも、大丈夫そうだなあの顔は。覚悟を決めたカリンは強い。ルディとオブリーそしてアナスタシアは今日は側にいなくていいので、三人で並んで座っていた。神殿の儀式はまず神に誓いをたて、神が降臨しその誓いに嘘偽りないことを確かめて終わるらしい・・・簡単に言うと。カリンは儀式進行係のようなもので、両脇に控えている高位神官と高位巫女が降臨を受け儀式は進む。そんな事をつらつら考えていると静かな音楽と共に扉が開き純潔を意味する真っ白な今日のために誂えた見事なドレスに身を包みアルベリヒの腕に手を添えもう片方には花嫁のブーケを抱えて同じく真っ白なヴェールに表情を隠したヴィルヘルミナが歩いてくる。二人の前には幼い二人の巫女が花びらを撒きながら先を歩く。ヴィルヘルミナの長いドレスの裾はこれも幼い巫女が二人持ち歩いてくる。三人の横を通り過ぎる一瞬僅かに微笑む様子が垣間見えた。まだヴェールに隠されているがその姿のなんと美しいことか・・・。祭壇前で待つジルベールにアルベリヒから渡される時ヴィルヘルミナが小さく何か言ったようだ、アルベリヒも小さく頷き最前列に座る。二人は向かい合う形で立っていた。さあ、ここからだカリン頑張れ。


「本日この良き日にウルリヒ王国王太子ジルベールとハヴェルン王国第一王女ヴィルヘルミナの婚礼の儀を執り行う。これに異論のあるものはこの場で申し出よ。異論がなければ沈黙を了承とし儀式を進める。」


皆が押し黙っている。


「では、この婚礼の儀に異論がないとしこれよりわたくし、アレクシア・カーテローゼ・ハプトマンがこの神殿の女神ハプトマンに成り代わり二人に問う。王太子ジルベール汝はいついかなる時も王女ヴィルヘルミナを死が二人を分かつまで愛し敬い慈しむことを誓うか。」


「はい、誓います」


「王女ヴィルヘルミナ、汝はいついかなる時も王太子ジルベールを死が二人を分かつまで愛し敬い慈しむことを誓うか」

「はい、誓います」


「その言葉に嘘偽りはないか、なければ沈黙を持って聞き届ける」


「「・・・」」


「ではこれより戦と祝福の女神ハプトマンの降臨を行なう。神官、巫女両者ハプトマンの声を聞き届けよ。」


その瞬間、ハプトマン像から光が現れカリンを包み込んだ。その場を見た魔力持ちの僕らの三人と神殿内の神官、巫女そして魔力持ちの全てが驚いた。女神ハプトマンは、どうやらカリンに降臨したようだ・・・。両脇に控えていた二人が慌てている。それを目と手で制しハプトマンはこれから結ばれる二人に微笑まれた。その言葉は神語で僕には勉強不足でわからないが当人である二人には通じているらしい。指示があったのか王太子がヴェールをあげいつも以上に美しいヴィルヘルミナの顔を見つめ頬に口づけをする。女神は頷き、ヴィルヘルミナのブーケを見てまた神語で話す。一瞬戸惑ったあと小さくよろしいのですか?と尋ねた後王太子と共に三人の席に近づきアナスタシアに語りかける。


「・・・シア、今日まで私の我儘に付き合ってくれてありがとう。あなたも素直になるのよ。」


そう言いながらブーケを渡す。アナスタシアは涙を零しながら頷いた。二人が前に戻ると今度は頭の中に声が聞こえてきた。女神が何故かルディに近づきしげしげと上から下まで眺められた後、神語だが頭の中で人語に変換される。


(ふーん、これではまだハーヴェイも納得いかんだろうな。)


中身は女神だが外見がカリンなので混乱する。


(しかし、私の愛し子がお前の方を選んだのだ。あれを泣かせるなよ魔法師よ。今日はお前にも特別に祝福を分けておいてやろう。アレクシアをこれからも護れるか?)


「え!あ、はい。カ・・いえ、アレクシアは僕が責任を持って護り抜きます。」


女神がクッと笑った。そして隣の二人を見て微笑むと僕には理解できなかったが神語で何か語りかけていて、オブリーが神妙な顔で頷いた。その後女神は元の立ち位置に戻ると両手を広げ今度は人語で話し始めた。


「この良き日に結ばれる二人の想い我女神ハプトマンが確かに聞き届けた。若い二人と両国の結びつきに祝福を授けよう。」


すると天井から色とりどりの花弁が舞い降りる。


「では、これを持って婚礼の儀を終了する」


それを合図に主役二人が扉に向かい腕を組み歩き出す、頭上からは二人が扉の向こうに消えるまで花弁が舞い降りていた。神殿内は盛大な拍手に沸いた。誰もがこのような降臨は経験がないと中には感激のあまり涙を流すものもいる。ふと前を見るとカリンから女神は抜け出たようで神官や巫女達が周りに集まり祈りを捧げている。


「へ⁉︎な、何事があったんですか⁉︎」


ルディの方を向いた時に大成功だよとジェスチャーで伝えると一瞬ポカンとしたが、ここまで作法を教え込んでいた高位巫女に抱きしめられ説明を受けたようだ、信じられないといった顔のあと神殿の関係者らと共に喜びを分かち合っていた。




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