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魔法使いの恋  作者: にしのかなで
十章
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小さな村に生まれた子ども

「アレクシアさん。貴女のご両親について全ては明かせませんが限られた範囲でお話できる事になりました。」


「りょうしん・・・」


「あの、僕も聞いていいんですか?」


「はい。じゃあまずガウス様のお話からしましょうか。このウルリヒに来る途中貴方が拾われた場所をご覧になられましたよね?それからなぜあの場所にいたかの仮説も。」


「はい、聞きました。仮説、と言うか当てはまると思っています。」


「貴方はハヴェルンの首都より少し離れた村で農家の若い夫婦の初めての子として産まれました。大層可愛がられて育てられた様です。産まれて直ぐに魔法技師の検査も受けています。そこで大きな魔力の子として魔法省にも記録があります。しかし、三ヶ月後に夫妻は病で亡くなり遠縁だと名乗る女性が やって来て貴方を引き取って行ったそうです。」


それが、あの行き倒れになった・・・。


「・・・ハーヴェイ様は大昔にウルリヒの禍々しい神への信仰に辟易し・・その、あの方神様ですが気が短くて・・・。ある時ウルリヒを囲む山脈を怒りのあまり崩してしまった事があります。それで、魔力持ちと神殿はまた別のモノなのですが国一番の祝福されるべき魔力持ちの赤ちゃんがウルリヒの何者かによって攫われるのを見過ごせず神の怒りに触れあの場で行き倒れたのです。勿論ウルリヒから王太子一行が来られるのを知っていて。」


「あの、僕の両親の死因に不振な点は・・・その、大丈夫です。ここまで聞いたらきちんと知っていたくて。」


そう言いながらも無意識にカリンの手を握りしめていた、言葉とは裏腹に手は汗をかき震えている。


「お二人には知る権利があるとハーヴェイ様から言付かっています。ご覚悟はよろしいですか?」


凛とした声で静かにしかし重く語りかけてくる。震えるルディの手をカリンが両手で包み込む。


「はい。聞かせて下さい。」


ハヴェルンの首都アデーレから馬車で一日ほど離れた街道沿いの小さな村に彼は産まれた。誕生後直ぐに来た魔法技師は素晴らしい子どもが生まれたと祝福してくれた。お互い苦労をして出会い結ばれた両親は我が子の将来の安泰を喜んだ。そんなある日村に疫病が流行り幼い子どもや年寄りから先に次々と亡くなっていった。不思議な事に疫病は農作物にまで及び土壌は枯れ果て何も育たなくなった。孤児院で育った敬虔な主神への信仰を持つ両親は毎日子どもが病気にならない様に、村がまた豊かな大地に戻る様にと祈りを捧げた。しかし、まず産後の弱った身体の妻から病に伏せった。まだ病の兆しのない父親はせめて子どもだけは守ろうと魔法省へ手紙を出した。しかし、魔法省から迎えがくる前に相次いで夫妻は息を引き取り疫病のため通常より早く荼毘に付された。残った村人は魔法省からの迎えを知らず現れた女の言うままに引き渡してしまった。魔法技師が着いた時には既に女は立ち去りどう辿ってもその行き先がわからなかった。そして暫くしてウルリヒからの一行に混じり無事魔法省の管轄に戻ってきた。


行き先を辿らせない、何より得体のしれない疫病の元は全てやはりあの家に繋がっていた。ウルリヒ王国ブロワト男爵家。当時仕えていたクララの祖母に当たる者が男爵家が雇っていた魔法師の女を使い仕掛けていたのだ。これは今回同様男爵夫妻は全く無関係でその老婆も神の怒りに触れ悲惨な最後を遂げたという。


「ブロワト家・・・」


「大丈夫ですか?」


「ええ、胃が痛くなる話でしたが真実を教えてくださりありがとうございました。」


カリンが涙を溜めて唇を噛み締めながらもルディの手を離さずにいてくれている。


「それで、貴方のご両親が付けたお名前があるのですが。お聞きになられますか?」


不意の言葉に一瞬驚いた、そうだ三ヶ月は両親といたのだから名前はついていたはずだ。けれどルディは大きく被りを振った。情けない、カリンほど強くないな・・・涙が零れるのを見ながら下を向いたまま話す。


「いえ。僕は魔法技師ガウス夫妻の養い子として育てて頂きました。この名以外はもう、僕の名ではありません。」


ただ・・・顔を上げて思い切って聞いてみた。


「ただ、僕の両親の墓はありますか?」




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