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魔法使いの恋  作者: にしのかなで
十章
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真実を知る午後

あの日と全く変わらない容姿で目の前に現れた彼女はやはり17歳前後に見える。白い髪をやはり肩で切り揃え紺碧の瞳で僕らを見つめる。


「え・・・あ、あの?なぜここにあなたが。」


無意識にカリンを背に隠す。


「私の主に遣わされまして。この度はこの地でお二人には大変お辛い思いをさせてしまったと、それから主はアレクシアに振られてしまったとがっかりされて・・・」


「「は?」」


くすりと唇だけで笑ながら少しお時間をいただいても?と聞いてくる。まだ時間はある、ルディはカリンの手をしっかり握って彼女の後をついて行った。


「ハヴェルンと違いウルリヒは空気が澄んでいますが春とはいえまだ肌寒いですね。」


「そうですね、四季がはっきりしているハヴェルンよりも冬は長いですが、でも景色なんか絵画の様で見事なところがありますね。あの、ところでどちらへ向かってるんですか?」


「あら嫌だ、ごめんなさい。そうねぇ、三人とも目立つからやはりあそこに行きましょう。」


前を見ると教会が見えた。古いが手入れのゆきとどいている教会の扉はギィと軋んだ音をたてて開いた。奥の高い窓から陽の光が差し込みその下に祀られている大陸の主神ハーヴェイの像に降り注いでいる。


「ここは、ウルリヒで最初に出来たハーヴェイ様を祀る教会です。ウルリヒの歴史はお二人共お勉強されましたよね。」


「あ、はい。宗教に関してはまだ四方を山脈に囲まれていた時代には禍々しい神を信仰していたと。」


「ええ、皆禍々しい神と呼びますが彼の方にもお名前はあるんですけどハーヴェイ様がその名を呼ぶ事をお許しにならないのです。」


「で、あの今日のご用件は?」


「先ずはお詫びと御礼です。この度は魔女ブロワトの再来を防いでいただく事をお二人に課してしまいましたこと、そして極限までの力を使い未然に防いでいただいた事を神殿を代表しお伝えに参りました。」


「神殿て・・・」


「あ、申し遅れました私ハヴェルンに古に建造されていました主神ハーヴェイの神殿の主巫女を務めております。申し訳ありませんが今日も名乗れないのです、そこはお許しいただけますか?」


「えっ、でもあの神殿は古にそれこそ魔女ブロワトによって破壊されたと。」


「ええ、あれを機にハーヴェイ様は神殿ごと姿を隠しました。今はあちこちに祀ってくださる小さいものから大きなものまでの教会や神殿を気の向くまま回られたりしていらっしゃいます。もちろん、正式な神聖な儀式の場には呼ばれれば降臨されますけど。」


「あっ!ルディ様、私あの長い眠りの終りにハーヴェイ様にお会いしました。」


「あの時に?」


カリンはその時の事を話し始めた、今までなぜ忘れていたのだろうという風に。暗闇の中薄っすらと意識が戻り気づくとハーヴェイと話をしていたらしい。主神はちいさなカリンと変わらない位の年の子どもの声に聞こえたが段々と最後は青年の様になっていたらしい。カリンはルディを心配していて側に行きたいが行けなくて困っているという会話をし、道を選ぶ様示されたという。片方は母がいるらしい本当の居場所。反対はルディがいる場所。カリンは迷わず主を選んだ、反対に行けば母に会えるというのに・・・。


「私、何度もお母さんに似て強情だと言われました。」


母に会わない道を選んだ少女は薄っすらと少し嬉しそうに笑った。


「どうしてあの時、私達の元にいらっしゃらなかったのですか?」


「ルディ様が泣いてらしたからです。」


///え〜っ、なんだよそれ。と、顔が赤くなる。聞いてないし、あの状態から覚醒する時は大概忘れちゃってるんだけど。


「ハーヴェイ様もそう仰ってました。早く行かないといけないから母にはよろしく言って下さいって振り向きもせずにガウス様に繋がる道を駆けて行ったって、呆れてましたし残念がってました。」


「私はルディ様の専属侍女としてシュヴァリエ公爵家にお世話になっています。一生ルディ様のお世話をさせていただく覚悟です。母には・・・なにか訳があって手離されたのだろうし、だからもういいんです。」


何もかも吹っ切れた顔で真っ直ぐに主巫女向かい言い切った。それを聞いて主巫女が吹き出す。


「本当、真っ直ぐで強情そうだこと。ハーヴェイ様が落ち込んでらしたのもわかります。」


「えっ!私、神様に失礼な事を?」


主巫女は被りを振って答えた。


「貴女はどちらかを選ぶ選択肢を持たされたのでしょう?失礼な事にはなりませんよ。ただハーヴェイ様は大層貴女をお気に召してらっしゃるので今日までずっと見ていらしてましたが。」


チラリと正面の神像に目をやる。


「さて、これから大事なお話を簡単にさせていただきますね。」



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