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魔法使いの恋  作者: にしのかなで
九章
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金と銀の輪舞2

「ん〜っっ!いったーい‼」


「しょうがないだろう慣れない事したから」


「でもでも、もっと他に方法が・・・」


バタンッ‼


「ルディっっ‼お前密室でカリンに何やって・・・」


どうやらカリンの叫び声に気づき飛び込んで来たようだ。


「うう〜ウィレム様ぁ。ルディ様が酷いんですぅ。」


消毒の痛さに涙を溜めて訴える。


「は?消毒⁉」


「お前は何を心配してんだ馬鹿。カリンが慣れない靴で靴擦れをしてるんで手当てしてたんだよ。はい、次そっち。」


「嫌ぁぁぁ、いったーい。」


靴擦れくらい癒術で簡単に治せるが、魔法ばかりに頼ってはいけないと言う養母の言葉を思い出し、普段無茶ばかりして心配させるカリンにお灸の意味で身体に傷がつくとどれだけ痛むか、それを教えるためにわざわざ救急箱を持って来てもらったのだ。ガーゼを貼り付け「はい終了」と言うと心底ホッとした顔で涙を拭いている。


「ウィレム、仕事は?」


「ん?ああ、交代時間でいま休み。」


「じゃ、ここで食べていきなよ。」


「おお〜っ旨そっ。至れり尽くせりだな、カリン。」


返事が出ないほどぐったりとソファのひじ掛けに縋り付いている。


「お前、やり過ぎじゃない?」


「たまには、いい薬さ。」


「以外と厳しいのなお前。甘やかしてばかりと思ってた。」


「飴とムチ」


ゲラゲラとウィレムが笑う。お互いの近況を話しながらカリンを見ると疲れたのかソファで丸まり眠っている。入城時に預けたローブを取りに行きかけてやる。


「お前らな、下手すると主役より目立ってたらしいぞ。」


「え、そうなの?でも僕はちゃんとお前の言いつけ守って虫の大群から護ったからな。」


「サンキュ。まだ子どもなのにさ、全く大人気ない奴らだけしからん。」


「カリンの婚期を遅らせるのだけはやめてやってくれよ。大体、お前聞いてるぞ縁談が幾つかあるんだろう?」


「打診、な。でも、姉上差し置いてはいけないよ。」


「それは・・・お前の婚期が延びるぞ。アナスタシア様は気にしないだろうからいい人がいたら頑張れよ。」


「お前はどうなんだよ。」


「・・・暫くはいい。懲りた、正直いま女性は怖いよ。それに未だ留学の身で無職だよ⁉そんな話は想像もできないな。」


「ああ、お前はそうだったな。ま、そのうち運命の出会いとかあるんじゃね?魔法使いらしく。」


「ははっ、なんだよそれ。」


久しぶりに親友とゆっくり話せた。そうだった、留学。何も学んでないじゃないか。今日のお披露目が終われば後は春の婚礼の儀。そしたら、ハヴェルンの皆は帰るのか。


「ん・・・お腹・・・空いた」


また二人で吹き出して笑うと寝起きのカリンが普段より機嫌悪く怒ってくる。しかし、足の痛みで動けずソファでジタバタとしながら僕らに悪態をつく。こんなカリンは滅多に見られないのでウィレムがまた余計にからかう。こうしてると、ホント無邪気な子どもらしさがあって二人はますます可愛い妹分にちょっかいを出すが流石にこれ以上はというところに丁度アナスタシアが入ってこられた。結局姉に叱られた弟組が妹分に謝り、ウィレムはもっといいものを取ってきてやると広間へと逃げた。僕はちいさなお姫様の欲しがるものを言われるがまま口に運んでやる。そう指示したのはアナスタシアだったが自分が言い出したくせに、僕らを見て笑い転げている。カリンはなかなかこれで強情なので僕のこの罰ゲームが気に入ったのか、次々注文しては雛鳥の様に口を開けて待つ。それがおかしくてつい笑うとむっと膨れてソファに横になった。


「アナスタシア様、今日のルディ様は酷いんです!靴擦れに消毒で手当てするし、染みて痛いのに・・・お腹空いて目が覚めたらウィレム様とケラケラ笑って、おまけに食べる顔見てまた笑うしっ!」


「ごめんってば。だってさ、パクバク口を開けるのが・・・っく、あ、ごめん。ホントごめんよカリン雛鳥の餌やりみたいで可愛かったんだよ。」


最後は慎重に可笑しかったとは言わず可愛いと表現してみた。それでも機嫌は治らない。


「あらら、天下の国家魔法魔術師が立った一人の女の子に手こずって・・・カリン、足を見せてくれる?」


「消毒は嫌ですっ!」


「やあね、私がそんな事するわけないじゃない。ほら、あらら。これは酷いわね、ちょっと失礼。」


アナスタシア様はなんのかんので可愛い妹分の足を癒術で見事に快復させてしまった。


「あーあ、そんな甘やかしたらこれからも無茶ばかりしますよ。」


「だって、今日はお祝いよ⁉こんなにお洒落してるのに控え室に閉じ込めるなんて可哀想よ。ほら、靴の方は貴女が直して。」


せっつかれてまた失礼、とカリンの足に靴を履かせサイズをピッタリに調整する。


「ほら、立って歩いてごらん。」


恐る恐るそっと歩くとパッと花が咲いた様な笑顔を見せる。


「さっきよりピッタリです!ありがとうございます。」


さっきまでの不機嫌はどこへいったのか上機嫌でステップを踏んでいる。


「ねえ、もう一度踊ってきたら?」


「え、でも害虫が皆カリンを狙ってるんですよ。」


ウィレムと話をしたせいかすっかり兄の心境だ。


「だって、せっかく靴も直したしいいじゃない一曲ぐらい。」


「どうする?カリン。」


「アナスタシア様、すみません。私今日はもういいんです。」


「でも、あなた」


「あのぅ、言いにくいのですがドレスに慣れてなくてコルセットもキツくて。それに、あの場所は色々な感情やご婦人の香水で人によってしまいました。」


「あら、そうね。確かにドレスは慣れないから辛いかも。じゃあルディ、このお姫様を送って差し上げて。」


「かしこまりました。では、まいりましょうか姫君?」


お姫様扱いに大喜びのカリンがルディにローブを渡してくれる。


「アナスタシア様すみません。ジルベール様にもご挨拶せずに。」


「いいのよ、上手く言っとくわ。気をつけてね、オブリーは後で帰すから。」


「はい、ありがとうございます。」


「アナスタシア様」


不意にパタパタとカリンが駆け出す、そして耳元で何事か囁くとアナスタシアが真っ赤になって口をパクパクさせながらも、


「じ、じゃあね。おやすみなさい」


「はい!お先に失礼いたします。」


?何だろう最近のカリンは年上の女性を赤くするのが特技になったのか⁉でも、何と無く聞けないまま仮住まいへと帰路に着いた。


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