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魔法使いの恋  作者: にしのかなで
九章
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金と銀の輪舞

広間へ入ると近衛をしているウィレムが気づき近づいて来た。


「カーリン!素敵だ、よく似合っているよ。」


「ほんとですか?ありがとうございます。」


「チェッ、なんでお・ま・え・が相手なんだろうな!」


言いながら足を踏みつけてくる。


「ちょっ!痛い。大人気ないぞウィレム。お前は仕事を選んだんだから仕方が無い。」


そう、この日は大事なハヴェルン王女のお披露目なのだ、近衛として来ているからには警備に徹すると言い切ったのは本人だった。


「ウィレム様、お仕事頑張ってください。私、初めて制服姿を拝見いたしました。とても素敵です。」


カリンに褒められまんざらでもなくなったウィレムはルディに変な虫から守り通せと命令し持ち場に戻って行った。


「虫?」


「今日のカリンはいつもにもまして更に可愛いから、悪い男を近づけないようにってことだよ。」


「そんなぁ、こんな小娘に誰も興味ないですよ。」


ケラケラと笑う、それだけで釘付けになるのに本人は無頓着だから困ったもんだ。


「いいかい?カリン。広間には大勢の人がいる。仮に僕とはぐれたらヴィルへルミナ様のお側に行くんだよ、いいね?」


「はい!なるだけしっかりついていきます。」


お披露目には魔法師も来ているだろうし、前回の宴で見知った人が話しかけてくる可能性は十分ある。この人混みに見失なったらどうなるかわからない。だから、もしもはぐれた時には失礼ながらヴィルへルミナの側に行かせる事をお願いしてあった。壇上にいればどこからでも見つけて迎えに行ける。流石に今日はアナスタシアとオブリーは外交で忙しい。この手をなるだけしっかりと離さないようにしないと。


二人で歩いていると何故だか自然と道が開けていく。遠まきに僕らを見て紳士淑女が何事か囁きあっている。そうして適当な場所で待っているとウルリヒ国王の挨拶が始まった。その後にジルベールとヴィルへルミナが立ち上がり挨拶と婚約を発表する。この後の最初のダンスに賓客扱いの僕らが混じる。カリンは歳の割に背丈があるので何とか様になりそうだ。向かいあって礼をし、音楽に乗せてステップを踏む。アナスタシア直伝の軽やかなステップで最初は緊張していたカリンも段々と楽しげに笑顔を見せながら踊る余裕ができた。このカップルで3曲踊る予定だ。今日は周りに目をやる余裕もあった。アナスタシアとオブリーがとてもお似合いに見える。ヴィルへルミナとジルベールはもう二人の世界だしそこでふと、僕等を見つめる人々の何というか羨望の眼差しの様なものを感じた。いや、皆さん主役はあちらですよ〜。


「ねえ、あのお二人素敵じゃなくて?確か男性はハヴェルンの魔法師様ですわよね?」


「そうそう、この前もしっかり鑑賞させて頂きましたけど今日も素敵ですわねぇ。」


「わたしもあの金の瞳に見つめられながら踊りたいものですわ。でも、なんだか今日は・・・」


「ね、やっぱりそう思います?」


「ええ、悔しいけどお似合い。それに、前回より優しいお顔で笑ってらっしゃる。」


「ホント、悔しいけどあのご令嬢どなたかしら?見事な銀髪・・・」


「おい、あのハヴェルンの魔法師のパートナー。どちらのご令嬢だ?」


「まだ、社交デビュー前だな。ウルリヒにいればあれほど目立つ容姿なら噂になる。ハヴェルンからのご令嬢だろう。」


「いや、実に見事な銀の髪。踊る度に煌めいて・・・是非私も一曲お願いしたい。」


「それなら、私もだ。見ろ、あの愛らしい笑顔。ダンスもなかなかの腕前だぞ。」


「よし、次申し込みに行こう。」


「あ、ちょっと待て抜け駆けはいかんぞ!」


ダンスの輪の外では紳士淑女のそんな囁きや攻防がさざめいている。お互いを時折見つめ合いながら、その度に二人が微笑む。そうしてあっという間に3曲目が終わる。そこからは他の貴族の方々も踊り始める。


「楽しかった?」


「はい、ありがとうございました。ルディ様のリードで上手く踊れました。」


頬を紅潮させ話す。喉が渇いただろうと飲み物を取りに足を進めると何だか周りを囲まれている・・・何ですか皆さん?


「ガウス国家魔法魔術師殿、こちらのお嬢さんを紹介していただけませんか?」


ウィレムの心配した虫が早くもやってきた。


「いや、実に見事な銀の御髪だ。ガウス殿の金の瞳とあまりにお似合いで魅入ってしまいましたよ。」


「失礼ですがお名前は?」


「この後是非一曲」


「それなら私もチャンスを」


「申し訳ありません。今日はヴィルへルミナ王女殿下からガウス国家魔法魔術師様のお相手だけを務めるよう申し使っておりますの。機会があればまたその時には皆様とお願いしたいですわ。ね、ガウス国家魔法魔術師様。」


よしっ!よく言ったぞカリンと心の内で拍手する。


「では、お名前だけでも」


困ったようにカリンが僕を見上げる。ブロワトの件でハプトマンの名が世間にどれだけ出ているのかわからないが、あの事件の後だ正式に名乗らないのが得策か。


「こちらはハヴェルン王国シュヴァリエ公爵家所縁のアレクシアと申します。まだ成年の儀を終わらせておりませんので皆様、今宵はここまででご容赦を。」


「アレクシア殿か、良い名ですな。」


「失礼ながらガウス国家魔法魔術師殿の御婚約者では・・・?」


男女が集まり彼の耳飾りとカリンの指輪を見ている。違う、違うと言いたい。でも否定するとうちの嫁に〜攻撃がやって来る。助けてウィレム、ここで絡まれてる二人がいますよ〜!


「そうですね、その可能性も無きにしも非ず。すみません、慣れない場で疲れているようなので失礼致します。」


営業スマイルを精一杯使ってその場を切り抜ける。あー、疲れた。


「ごめん、カリン。大丈夫?」


「あの、ルディ様。色々とお気を使っていただきありがとうございます。」


やっと給仕から飲み物を受け取り壁際の椅子に腰掛ける。二人とも確かに喉が渇いていたのでよく冷えたアルコールの入っていないモノで喉を潤す。


「足、大丈夫?」


「あ〜、それが慣れない靴なのでちょっと靴ズレが痛くて・・・」


「それはダメだな。ちょっと待ってて。」


ルディは、カリンからそう離れずに近くの侍女に何か言付けている。


「よし、あと少し歩ける?」


「あ、はい。どちらへ?」


「こういう時は休息を取る部屋が用意されてるんだ。シュヴァリエ公爵家の名でヴィルへルミナ様が貸切にして下さっている部屋があるからそこで休もう。」


廊下に出ると気が抜けたのかカリンの顔が苦痛に歪んだ。広い廊下にはいま近衛しか立っていない。ルディは一旦立ち止まりちょっと失礼とカリンの足を見た。


「・・・はぁ〜、だから無茶はダメだって。歩くの辛いよね?はい、正直に言う!」


「すみません・・・痛くて歩けません・・・」


そう言うと同時にカリンの身体が宙に浮く。


「きゃっ。ちょっとルディ様!人目がありますっ///」


顔を赤くして暴れる。


「貴婦人は暴れないものだよ、落っこちたらもっと痛い思いする。その足で歩かせられないよ。」


そう言い、いわゆるお姫様だっこで控え室まで運ぶ。部屋の前には警備がいて名乗ると扉を開けてくれた、カリンはこの姿を人に見られているかと思うと恥ずかしいのだろう顔を隠している。部屋に入り二人だけになると寛ぎやすいソファにそっとカリンを降ろす。


「ごめん、もっかい失礼ながら靴ぬがすからね。」


踵部分に痛みが走る。


「〜っっ‼痛・・・」


まだ恥ずかしさで顔を両手で覆ったままつい声が漏れた。


「いや。い、痛くないです平気です。」


慌てて取り繕うが既に遅し。


そこへワゴン車に軽食と飲み物そして肝心な救急箱を乗せて先程の侍女が入ってくる。テーブルに軽食などを並べ、救急箱をルディに渡す。礼を言われて侍女は頬を赤らめながら下がって行った。






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