深い眠りの底で
まっくらなの。
真っ暗?
だれもいないの。
寂しい?
うん、さみしい。でもね、だれかがいつもてをつないでくれてるの。
それは誰?
わかんない・・・。
忘れちゃった?
・・・すごくやさしいひと。それでね、ないてるの。かおをみたいんだけどまっくらでみえなくて、なかなくていいよっていってあげたいの。
困ってる?
こまる。そのひとがなくと、わたしすごくこまるの。はやくいってあげなきゃ。
でもさ、この先に二つ道があったとして片方は泣いてる人、片方は君の本当の世界に行けるとしたらどうする?
ないてるひとのとこにいく。
何で?
私を待ってるから。
僕らも君を大事にするよ。
名前も顔も知らないのにですか?
知ってるよ、君は。いや、結構知られてるんだよ僕は。で、変わらないの?
変わりません。早く行かないと、道はどこですか?
強情だなぁ。そっくりだ。
誰にですか?というか、貴方は誰ですか?
似てるのは君のお母さんにさ、そして僕は君らの主神ハーヴェイ。
神様・・・なぜ私のところに?
それは、ひーみーつ。じゃあ行こっか。
真っ暗だった周りが段々と仄かに明るくなってゆく。
あの道を行けば彼に会えるよ。でも、僕やお母さんにはもう会えない・・・多分。それでも本当にいいのかな?
私がそちらに行けばあの方はどうなりますか?
うーん、彼は真っ暗な中に閉じ込められたままになるかな?
ハーヴェイ様、母によろしくお伝え下さい。
・・・ほんと、そっくりだなぁ。まあ、いいや。君は広い世界に出るのがいいさ。無茶はあんまりしちゃダメだよ。泣いてるあの子が可哀想だ。
はい、すみません。では、帰りますありがとうございました。
明るい場所から迷わず先の暗い道へ真っ直ぐ走って行く。早く、早く行かなければ。
そこにいたのはちいさな子どもだった。
「へ?あ、あれ?」
「遅い・・・」
「ルディ様?ですよね。」
「遅いよ、カリンの馬鹿!」
「ば・・・そ、そうですね。すみません。」
「魔法で灯りをつけようとしたんだ。探しに行こうと思って。そしたら、誰か来て散々叱られてさ、それにここじゃ魔法も使えないって言われて」
「・・・もしかして、暗いので泣いてたんですか?」
「ちがっ・・!なんだよ、迎えに来たのに」
「わかってます。茶化してすみませんでした。あと、ご心配おかけしました。」
「死んだかと・・・死ぬのかと思った」
「すみません」
「居なくなったらどうしようって・・・怖かった・・・」
「はい」
「君、息が止まりそうだったんだもの。慌てて君の中に力を流したけど反応がないし」
「ごめんなさい」
「あんな、馬鹿王太子なんか放っとけばよかったんだよ。」
「つい、身体が動いて」
「もう、無茶しない?」
「えーと・・・約束はできませんが、気をつけます」
「そこはさぁ、嘘でも「はい」って返事するとこじゃない?」
「私、ルディ様に嘘はつけません。ルディ様ためなら多分無茶は・・・します」
「ふ〜ん。じゃあ、僕だけにだね。」
「はい、ルディ様のためだけです」
「ん、わかった。じゃあ、帰る」
そう言って立ち上がった姿は既によく知る現在の姿だった。それからカリンを抱き寄せると銀の髪に顔を埋めて
「ホントによかった」
と言い涙を流した。
二人が目を覚ましたのは結局事件から二ヶ月経つ頃だった。