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魔法使いの恋  作者: にしのかなで
八章
36/59

ハヴェルンからの便り

「それで二人はまだ目覚めませんの?」


ヴィルへルミナが謁見に来たオブリーに問いかける。


「はい、未だ微動だにしません」


「そう・・・あなたもちゃんと休みなさいね?少し痩せた気がするわ。」


「お言葉ありがとうございます。」


「時に兄上、ジルベール様。今回のこと重く見ていますわよね?」


開いていた扇をパチンと音を立て閉じる。今はヴィルへルミナの部屋にオブリー、両国の王太子、アナスタシアが顔を揃えている。


「私、ハヴェルンへガウス夫人に頼んで遣いをやっておりました。先程、その返信が届きましたので読ませていただきますわ。」


親愛なる王女ヴィルへルミナ

この度の事にはこちらでもガウス魔法魔術技師長が取り乱すほど驚いている。また、魔法省からも主だった癒術師団を送り出した。ガウス国家魔法魔術師のみならず我が息子アルベリヒの足らぬ考えで、シュヴァリエ公爵家侍女にまで危篤と聞き善かれと思い同行させた私の考えが浅はかだったと民の命を危険にさらした事に深く後悔の念を抱いている。大事な婚礼を控えている身なのに、却って煩わせてすまぬ。これより、ハヴェルン王太子アルベリヒはシュヴァリエ公爵家の使用人及びガウス国家魔法魔術師に近づく事を禁ずる。また、本来は其方も危険にさらされていたと聞き及ぶ。どこの国に嫁いでも同じ事だが其方がその気であれば今回の話、破談としハヴェルンに帰る事もできるのだ。よく考えて決断をくだせ。更に、ウルリヒ国王にも親書を送っておいた。おって、連絡があるだろう。

愛する娘よ、どうかお前が幸せであるように祈っている。


ハヴェルン国王

カルスティン・ツェーガル・デア・レ・ハヴェルン


「・・・え?破談⁉」


最初に口を開いたのはジルベール殿下だった。


「接近禁止命令・・・」


「さあ、どうしましょうかね。私に反旗を翻す者は片がつきました。でも、私の愛するカリンが目を覚まさない・・・このまま、衰弱していったら私、お二人を許しませんわ。」


「お言葉を挟ませて頂きますが、殿下方。私の実家シュヴァリエ公爵家でも屋敷中が二人を心配しているそうです。まだ産休前だったフェンリルには体に障るからと耳にはいれず早めに休みを取らせました。」


ヴィルへルミナは椅子から立ち上がりジワジワと兄と婚約者に詰め寄って行く。アナスタシアは片手に杖を持ちいつでも攻撃体制に入る準備ができている。


「聞いていますわよ、国境での事も。二度と危ない真似はするなとカリンに釘を刺されていますわよね!」


「そのカリンがあの場でお二人を見た時に一体どんな気持ちだったか・・・なぜあの場に来たのです⁉」


二人の女性に詰め寄られ仕方なくアルベリヒが口を開いた。


「魔女ブロワトか見極めたかった・・・そして、二人で近衛を連れ取り押さえるつもりだったんだ。まさか、あんな風な事になるとは」


「ジルベール様、他には?」


「・・・ごめん、可愛いルディの成長と出来ればブロワト嬢を助けてやりたかった。私はあの娘が正気に戻っても罪人には変わらんと言ったのだがカーテローゼが。」


オブリーはあの日、食堂で交わした会話を思い出していた、更にどこで仕入れたのかブランディーヌを斬った剣は一滴の血も流さないつまり、破魔の剣だった。

五人のいい大人が揃って溜息をつくしかない。


「オブリー、貴方はルディのところに戻って。カリンの事では私以上に怒っているウィレムに先程の陛下の接近禁止命令の事を伝えて警備を更に厳重にする様伝えて。私はヴィルへルミナ様が心配だからこちらに残ります。」


「わかりました。では、失礼します。」


「あの、ヴィルへルミナ?私との婚約は破棄しないよね?」


「知りません!二人とも暫く顔も見たくありません‼」


涙を零しながら叫ぶ王女をアナスタシアが寝室で休むよう進言し侍女に預ける。閉まった扉の向こうからは子どもの様に泣きじゃくる声が聞こえる。


「すみません、私も気分が優れないので休ませて頂きます。」


アナスタシアまでが部屋を下がった。二人の王太子はこのすぐ後ウルリヒ国王に呼ばれ叱責を受ける。そして一旦、両国の縁談は延期というかたちをとるのだった。

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