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魔法使いの恋  作者: にしのかなで
六章
31/59

本命の見舞客3

ルディが滞在する離れの玄関には護衛官が立っていた。今日は王宮の人出が足りずこの時間は自分達が警護兼応対をしているという。名を名乗る前から引き継ぎで話しは聞いていると言われ、程なくして以前訪ねた客間に通される。ルディはソファでラフな服装で寛いでいた。


(やっとお会いできた・・・)


高鳴る胸を押さえ一歩ずつ近付く。


「お久しぶりです、ルディ様。お加減はいかがですか?」


「やあ、ブランディーヌ。ありがとう、随分良くなったよ。それより君の方こそクララの事は残念だったね。とにかくどうぞ、座って?」


「失礼します。今日は使用人の方が王宮の方に駆り出されているとお聞きしましたが、よろしければお茶の用意をしましょうか?」


「いや、大丈夫。最低限置いていってもらってるから。」


「・・・あの、もしかしてクララの埋葬にいらしてくださった方ですか?」


余程恐ろしかったのか、手が震えている。


「いや、彼女は王宮の方へ行った。居るのは男だけだよ、でも大丈夫お茶をいれるのは上手いから。」


カリンがいないと聞き顔色が良くなる。扉のノックと共にワゴン車をついてアルフォンスが入って来る。続いてオブリーも。


「ああ、オブリーは知ってるよね?夜会で君も踊ったと言ってた。」


「ええ!お久しぶりです、オブリー様。お元気でしたか?」


「お久しぶりですね、ブロワト男爵令嬢。その節はどうも。」


話して居る間にアルフォンスがお茶の準備を始める。


「そうだ、この子は会うの初めてだよね。アルフォンスというんだ、僕の近侍をしている。」


「お初にお目にかかりますお嬢様。アルフォンス・ベレと申します。」


にっこりと微笑みを返すアルフォンスにすっかり気を許した様子で名を名乗り打ち解けた様子だ。そして、口に合えばいいがと土産の茶菓子を出す。それは、ロールケーキで切り分ける必要がある、一旦食堂に戻ります湯も覚めたようだし、とアルフォンスが茶器とケーキの箱を持ち下がった。その間ブランディーヌはにこやかに三人で会話を楽しむ。ルディの隣にはオブリーが腰をかけ一見楽しんでいるように見えるがしっかりと守護の務めを果たしている。今日のブランディーヌからはやはり人の心を操る香りがする。


「あら、アルフォンスが遅いわね。私、お手伝いをしてきてもよろしくて?」


「いや、すぐ来るよ。このまま待っていよう。」


「そうですか?あら、そうだわ。珍しい茶葉が手に入りましたの今日はこれを召し上がりませんこと?」


「いいね。あ、ほら来た。アルフォンス、ブランディーヌが持ってきた茶葉があるんだ、今日はそれをいただこう。」


「畏まりました。」


ブランディーヌから茶葉を受け取りためらいも無くお湯を注ぎ暫く蒸し出す。ルディ達三人にはその茶器の中でパチパチと弾ける音が聞こえていた。顔色は変わってないが三人とも心の準備が出来た。まず最初の一杯をブランディーヌにそして、二人にお茶をつぎ最後に自分の分を入れてからケーキを四人分テーブルに出す。ブランディーヌは、ルディにお茶とケーキを勧める。決して自分は手をつけない。三人から少し離れて座ったアルフォンスが最初にお茶とケーキに口をつけた。それは、ルディ達にも予想外の事で流石に一瞬固まった。お茶を一気に飲み干し、ケーキを一口かじると警護に用事を思い出したと部屋を出て行った。しかし、一番驚いたのはブランディーヌ本人だった。お茶には毒が仕込んであり少しずつ飲み後からジワリと効き始めるはずたった。しかも、このような場で一気に飲み干すなど礼儀に欠ける、更にケーキにはルディだけに効果のある秘薬がかけられている。それを両方同時に口にされると何が起きるかわからない。そのとき、アルフォンスの瞳が頭に浮かぶ。見事な翠の瞳。見る角度により色が変わって見えた。あれは、あの瞳は見覚えが・・・。


「ブランディーヌ?大丈夫かい顔色が良くないよ。」


「・・・あ、の。アルフォンスの飲み方に驚いて・・・」


「ははっ、全く作法を知らないからいま教え込んでる最中なんだ。すまないね、子どもだから許してやってもらえないかな?」


「子ども・・・」


そう、あの埋葬の日に現れたのは子どもと言っていい少女。その瞳は・・・目の前が一瞬真っ暗になる。いま、自分の目の前にいるのは国家魔法魔術技師の二人だ。私はなんと愚かしい女なのだろう。私は、私は・・・「クララ・・・」いまは冷たい土の中に眠る侍女の名を縋る様に呟いた。



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