本命の見舞客2
憂い顔で食堂に下がったカリンにオブリーが声をかけた。
「大丈夫?」
「え・・・?」
「ブランディーヌとの対決辛そうだから。」
「・・・正しいやり方が解らなくて。あの、私ルディ様はご主人様として尊敬しています。シュヴァリエの離れは私の家でそこで生活する四人は皆、家族だと思ってきました。・・・だから、ルディ様には幸せになっていただきたいです。そのためには、なんとかブランディーヌ様を邪な魔術から引き離し説得できないかなと。甘いですか?」
「うん、甘いね。」
即答されてうな垂れた。
「私もルディ様の幸せは願っている。だけどね、カリン。この世にはいくら話し合っても分かり合えない人種がいるんだよ。」
「私の経験不足ですか。」
「君はまだ11歳の子どもだ、剣術や体術もいいがこれからは人間関係についても学び取っていかないと。そして、その経験不足は歳を考えれば無理はない。気に病む事は何もないよ。ただ、ブランディーヌが異常者である事は忘れてはいけない。それは、当事者のルディ様でさえ割り切っているからね。」
「そうなんですか?私、この後きっとブランディーヌ様に対して加減なしに手を出す事になります。それでもいいんですか?ルディ様がもしかしたら心をときめかせた方ですよ?」
泣きそうになりながら問いかけてくる。何もかも解っている。ブランディーヌが異常者でなければ二人は普通の恋に落ちていたかもしれない、その事をルディ本人も残念に思っている。だから、自分が間に入り主を守るためとはいえブランディーヌの魔術に対抗しなければいけない、しかし。話し合えば彼女の異常性をなくす事ができるのでは?その葛藤に心を痛めているまだ幼い侍女に世間は綺麗事ではないとこれから教えていかなければいけない。その優しさを無くして欲しくないと思うと共に、さらに精神的に強くなって欲しいそう願う。
「あの人が身近にいるのだから、こういう精神論も教えてやって欲しいものだ・・・」
うっかりボヤいてしまった。しかし、それに気づかず予想外の問いかけをされる
。
「オブリーさんは思いを寄せる方やお約束をしている方はいらっしゃらないのですか?」
「え?私はん〜、いると言えばいるしいないと言えばいない・・・約束は、できないんですよ。」
「それも、いつか私にも理解できる日がきますか?」
「そう・・・だねぇ。でも、私は君の幸せを願っているよ。いつかフェンリルのようにとね。」
故国で日に日にお腹が大きくなっているだろう侍女を思い出す。
「私にもきますかね?そんな日が。」
「来るさ、そしてまずウィレム様の邪魔が入る。」
そこで二人はケラケラと笑った。そのすぐ後、来客を告げる護衛の連絡が入る。
途端に引き締まった顔つきになり、二人はお茶の用意をしながら客人を通すよう指示をだした。