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魔法使いの恋  作者: にしのかなで
六章
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本命の見舞客

カリンをアルと呼ぶようになり二日後ブロワト家から侍女の喪が明けたので見舞いに来たいとの先触れがあった。いよいよ本命登場だ。だがしかし、果たしてルディの身体への薬の効果はどうなったのだろうか?国境でエラく苦しい思いをし身体中の毒は抜けたと養母は言った。しかし、なぜか僕は会って冷静で居られるか自信がない。薬を本当に盛ったのか?本人と二人で会い話がしたかった。君はそんな事をしなくても十分魅力的だったのに・・・。ぼんやりと返事もせずソファでクッションを抱えていると目の前にカリ・・じゃないない、アルが顔を近づけたので驚いた。


「ちょっ、近いよ!ち・か・いっ。男の前に不用意にそんなに近づくもんじゃないよ、もぉ。」


あんまり可愛らしい瞳に見つめられて思わず赤くなる。


「あ、すみません。気をつけます。で、お返事を待っているのですが・・・」


「ん〜、わかった。いつがいいと思う?」


「昼食後にどうでしょうか?食事に混ぜられるのは避けたいですし、お茶ならこちらで用意した物に異物が入れば弾かれる魔法をオブリーさんがかけるそうです。まあ、なんにしてもルディ様は何もお口にしないでください。では、取次の方に連絡しますね。」


部屋を出ようとするアルに慌てて声を掛ける。


「アル!ちょっと待って、君自分がブロワト家の使いに会うの?」


「はい、いけませんか?」


少し思案してやはり駄目だと言う。


「それは他の人に頼んでくれる?で、すぐ戻ってきて。」


小首を傾げながらもどうやら部屋の外にいたオブリーに頼んでいるようだ。

アルと呼ばれるカリンは実はあまりウルリヒの人間に見せてない。あまりに目立つ容姿が何と無くルディとオブリーをそうさせたのだ。更にたった今思い出した重要なことがある。一旦出た部屋にすぐにアルは戻ってきてくれた。


「あの、どうかなさいましたか?」


どうしたものかとジーッと見つめられるのは居心地が悪かっただろう。暫く見つめてから決めた。


「あのね、君のその髪だけど魔法で染めるから。」


カリンもといアルが真っ青になった。


「な、な・・何を仰るんですかっっ‼この髪がなかったら、凡人ですよ!対抗できませんよ⁉」


「イヤイヤ、まあ落ち着いてここに座って。」


パンパンと僕の隣を叩く。絶望的な顔で言われるがまま隣に座る。今日も一纏めにされている銀の髪を触りながら何色がいいか一応尋ねる。


「お好きな色にどうぞ、でも何で染めなきゃいけないか教えて下さらないと嫌です!」


中の騒ぎに気づき帰ってきたオブリーが何事か尋ねる。


「いや、この銀の髪珍しいでしょう?」


「そうですね、銀は滅多に見られません。」


「ブランディーヌはこの髪色を知らずに来て、当然顔を合わすんですよね?」


「ははぁ、成る程。確かに不味い。」


「だから、何がですか?」


「あのね、三人だからカリンて呼ぶよ。ブランディーヌは、間違いなく君のその髪に嫉妬する。」


「同感です。」


「あ、成る程。自分にないものが欲しい人ですもんね。はい、わかりました。で、何色にします?」


「う〜ん、最近の君はイメチェンしたから紅でいこう。」


「余計目立ちますよ〜っ。」


「大丈夫、それから染めると言っても外見を魔法で誤魔化すだけだから。実際は銀のままだよ。あと指輪、それどうしようかな。まずいよね。」


耳飾りと対の指輪は同じ石が使われている。


「そう思って抜こうとしたんですが抜けないんです。」


「ちょっと待って、手貸してくれる?」


カリンの手を取り詠唱を唱え指輪を外す。その輪に僕の髪を結いていた革紐を通しカリンの首にかける。輪の端は魔法で切れ目なく繋がり決して外れないようにする。それから外見に魔法をかける。


「おや、以外と紅毛も似合いますね。」


「情熱家をイメージしてみました。」


「くくっ、成る程確かにこの半年ですっかり逞しくなってますからね。」


二人で話していると気になるのか鏡の前に駆けて行き確認している。


「ふわ〜、すごいホントに変わった。さすがルディ様ですね!」


紅毛を翻し振り返って満面の笑みを見せる。不覚にもドキッとしてしまったのは内緒にしておこう。そこへノックもなしにドアが開く。


「おおっと、見違えたな。」


「アルベリヒ様、ずいぶんお早いですね。」


「いや、今さっき本命がくるって聞いていてもういてもたってもいられなくて」


子どものようにワクワクしてるのが何だか羨ましい・・・。


「今日はアルは貸せませんよ。これから準備があるので。」


「え、そうなの?じゃあ仕方ないな、帰るか。」


「いやいや、殿下最後の詰めはしなくていいのですか?」


「ん?だってほら、私は魔力持ちじゃないから安全なとこにいないと。オブリー、ウルリヒ王家にはこの離れ一つ潰すかもしれんと言ってあるからな。あと、ブランディーヌと反王太子妃派は全く関係ないことがわかった。奴らに気づかれ利用される前にブロワト家は取り潰しだ。勿論、この後の双方の出方にかかっているがな。」


「そうですね。とにかく、今日は殿下は王宮内の魔法師達に警護して頂いてください。あの人なに持ってくるかわからないですし、私怒ってますし。ガウス夫人と高等魔法魔術師の方々にはお手伝いをお願いするかもしれませんが。あとこの離れの使用人さんも、うまく言って下がってもらわないと。危ないですからね。」


すっかりアルフォンスになり切ったカリンが何の為か柔軟体操をしながら話す。見られていることに気づくとサラッと


「だって、何が起きるかわからないでしょう?」


と言いながら今度は服やブーツの中に刃物を忍ばせている。


「あ、と。これを見られたら大暴れされるから隠さなきゃ。」


そう言いながら指輪のネックレスを大事そうに服の下に隠し髪を後ろで縛る。


「よし!準備万端。」


ホントになんでこんな子になったんだろうとオブリーと二人遠い目をしてしまった。


離れの使用人は午前中に下がってもらった。昼食だけは用意してくれていたので3人で食べながら話をする。


「目的はルディ様。手段は、秘薬。」


「それ以外になんか持って来たりして。」


「この離れの結界は十分強化してますから、簡単なものならすぐにわかるんですが・・・恋する女性は何するかわかりませんからね。」


思わず吹き出しそうになった。むせていると、水と背中をカリンがさすってくれる。


「私、この前ブランディーヌ様を見た感想ですが十分な容姿でしたし何も魔術を使ったりしなくてもお相手は望めば見つかると思うんですが。」


「仕方ないですよ、高位貴族に執着してましたしね。なにより夜会で恋に落ちた。」


また、むせる。


「それがホントならちゃんと言ってくれればいいのに。」


むせながらも何とか応じる。


「自信がない。その一言ですね。見た目も悪くない、資産もあり男爵とはいえ爵位もある。中にはそれを魅力に思う高位貴族もいたとおもいますよ。ただ・・・やはりブロワトの名が邪魔するのかな。」


「でも、一旦養女に出てそこから婚姻を結ぶ手もありますよ。」


「ですね。とにかく彼女はプライドが高く、ブロワトを嫌いながらも離れられなかった。しかも城の地下には今や彼女にとってお宝があるわけですし。これも持参金の一部としてとにかくルディ様を手に入れたいんでしょう。」


怖くなってきた、その異常な執着心・・・


「あ!なんか、それって昔のカリンに似てますね立場が。」


「はい。カリンもセシリアと名乗る間は離れから一歩も出られませんでしたから。似たもの主従関係です。だからカリンもその執着心が面白くないんじゃないですか?」


「そうです。仮説でルディ様狙いを立てた時からなんかイライラして、私も攫われかけた事が施設でありましたから。こういう自分本位なのは許せません!断固立ち向かいますよ、昔皆さんに護って頂いたご恩返しです。」


両手の拳を握り頑張るポーズを取る。・・・ブランディーヌ。なんの策略もなくお近づきになれたら、きっとこの二人も歓迎してくれただろうに。なんか、毒を盛られても憐れに感じてしまう。カリンが食器を片付け始めながら、ポツリと言った。


「すみません、ルディ様。せっかくの出会いを潰してしまいます・・・」


「いや、仕方ないよ。人が一人亡くなってるんだ。あ、もう一人試薬を試された使用人もか。つまり、僕が出会った彼女は薬を盛る前から異常だったんだ。それで薬なしでお近づきになっても、やっぱりカリンやフェンリルさんに言われの無い嫉妬をしたと思うし。気にしなくていいよ。このまま見過ごせばいずれウルリヒ王国にとって、本当に魔女ブロワトの再来扱いされる。」


「・・・・」


何か思うところがあるのか黙って片付けに専念し始めた。



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