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魔法使いの恋  作者: にしのかなで
五章
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迷惑な見舞客3

話はこうだった。埋葬に参列したカリンはブランディーヌから恐怖と不安とそしてほんの一瞬物凄い嫉妬を感じ取った。そして、帰りながら今までの事を考え、まずはアルベリヒにブランディーヌはルディが目当てではないかと仮説を話す。更に半年共にいたオブリーが呼ばれ歓迎の夜会の話を聞きそこからブランディーヌへの徹底した調査が行われた。彼女は身分こそ下位の男爵令嬢ではあるが容姿は十分申し分なく、また実家が経営をする商業なども順調で資産もある。おまけに自宅はかつてのブロワト城を使用しているのである意味特殊な恵まれた娘だ。


しかし、彼女は幼い時から欲しいものはなんとしても手に入れたかった。実家は資産などでは他の高位貴族にも劣らないが男爵家に甘んじるしかなく自分はこのままでは終われないと周囲に漏らす事もあったらしい。何より忌み嫌われるブロワトの名を継ぐのを嫌悪しており社交デビュー前からなんとしても高位貴族に嫁げるようにと考えていた。そこへ、昔からブロワト家に仕えていたクララが侍女として雇われる。クララの実家は旧ブロワト家つまり、魔女ブロワトとされる女性がいた昔より主の血族が途絶え全く縁のない血筋がブロワトの名を名乗る様になってもずっとこの家に仕えてきた。


そして、ある日ブランディーヌはクララにほんの僅かだか魔力の兆候があるのを見定めると城の地下に封印されている古の魔術書などを二人で読み漁りある計画を立てた。社交界に出れば夜会にも頻繁に招待される、その時に将来の伴侶候補を見繕っては例の惚れ薬のまだ試作段階のモノを忍ばせ効果を見たのだ。しかし、たかだか二人の魔法知識のない少女がそう簡単に薬を完成させられる訳はない。


しかも、そう何度も試せば飲み物食べ物の味がおかしい事に気づかれ騒ぎになられると困る。魔女ブロワトの再来などと言われでもすれば嫁ぐどころか婿さえ来なくなるだろう。そして、二人はとうとう禁書にある相手の心を操る薬を禁断の魔術により完成させる。そして、薬の効果も事前に試した。屋敷の若い使用人に飲み物に混ぜて飲ませたところ見事に彼は主の娘に夢中になった。しかし、今回は慎重に事に及んだ。一度の成功の持続時間を調べ、体に害のない量を測りそして薬を口にできない場合にはその香りを身につける事で成果がでるとわかった頃には用済みとなった使用人の男が不審な死を遂げる。


恐ろしい事に二人の少女は禁断の書を元に毒薬まで作り出していたのだ。程なく王宮で隣国からきた国家魔法魔術師の留学を歓迎する宴が催された。その場に着くまでブランディーヌは幾つかの候補を絞っていた。しかし、華やかというよりも素朴で幼さが残るという容姿は社交の場に咲く華麗な華々に蹴落とされてしまう。そこで自分の魅力をどう活かして近付くか計算していたとき、彼女はあり得ない事に自ら恋に落ちた。壇上で紹介される二人の魔法使い。その幼さから大人の男へと変わろうとしている顔立ちに映える金の瞳にウルリヒでは珍しい真っ黒な癖のある髪、片耳だけにつけてある耳飾りすら謎めいてブランディーヌにはその時から彼、ニーム・ロドリゲス・ガウスしか見えなくなった。壁の華となりジッと目でルディの行動を追う。どうやら彼はこの様な場が苦手らしい。情報を手に入れるためわざとルディではなくオブリーにダンスに誘われやすい様に近付き目的を果たす。根掘り葉掘り聞き出すのは得策でない。彼はこの様な場に慣れていないとだけ聞き出し満足した。ルディがテラスに一人で出るのを視界の隅で確認し、にこやかにオブリーと別れる。そこからは、ルディ本人も知る通りだ。


「僕、飲み物と軽食を取って来てもらいました・・・そんな、あの時何も気づかなかった。」


「ルディ様、私もです。魔力なしとはいえ、あの様に危険な薬を持ち込んでいる事に全ての魔法魔術技師が気づかなかったのです。」


「馬鹿な・・・あり得ない」


呆然とする僕の呟きにアルベリヒ殿下が答える。


「それが魔女ブロワトの力さ。私はかの古の魔女の影響をまだ否定しないぞ。」


殿下によればブロワト城の地下には魔女ブロワトの遺産が眠っている。遺産と言っても秘薬や禁断の書などだ。これらは持ち出し処分しようとする度に必ず事故や病人が出た。そこで王家は厳重に鍵をし魔法魔術技師らが封印をかけ長い間眠っていたのだ。そう、その欲望が己の復活に相応しいと思われる者が現れるまで。それが長い時を経て現れた、ブランディーヌ・デ・ブロワトだった。これがアルべリヒとカリンの出した仮説にオブリーの裏付けを取った話の結果である。




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