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魔法使いの恋  作者: にしのかなで
五章
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迷惑な見舞客

クララの葬儀は大変淋しいものだったと聞き、少し気分が沈んだ。ブランディーヌの立会いの元、墓穴に棺が納められ参列者は他には居なかったという。自分ががけた呪詛が跳ね返って来たのだからその死に際は相当苦しんだであろう。そして、宣言通り一人参列したカリンの姿を見てブランディーヌは凍りついたようになったそうだ。それもそうだろう。自分たちがかけた呪詛の服飾品を纏い墓地に居る少女を見れば疑問と恐怖で口も聞けなくなるのはわかる。


オブリーの調査でクララがほんの少しの魔力持ちであったことがわかった。更に現在のブロワト家は、様々な伝承が残るが実際は現当主夫妻は魔女ブロワトの血筋とは全く関係ないこと。ブランディーヌには魔力が全くないこと。だがしかし、ブロワト家は男爵でありながら、過去の功績から築き上げた立派な古城を郊外に持ち新たにブロワト男爵位を得た現当主もそこに暮らして居る。つまり、魔女ブロワトの生まれ育った城は現在まで残っており何かしら文献や薬品などがそこに同じく残っていれば例の毒物や惚れ薬などか魔力持ちのクララの手により容易に作られたのではないかとの見解をハヴェルンとウルリヒのごく少数の人間達は思った。


他国から、それも近々王太子妃となる王女を迎える国から留学生として預かっている国家魔法魔術師に対し何の意図があったのかは解らないが禁忌の術を用いている。クララは亡くなったが薬や毒物、呪いの道具などはまだブロワト城の何処かに残っているかも知れない。しかし、ブランディーヌがこの件に関わっているという確証がなければウルリヒ側も男爵家へ踏み込むわけにはいかなかった。


果たして、ブランディーヌの目当てがルディなのかそれともハヴェルンからの王太子妃を阻むもの達までが関わっているのか・・・クララの死に様といい、不気味な謎が多く当面は向こうの出方を待つことになった。それにしても、埋葬に参列したカリンの身が心配だった。例の魔術をかけられたままの衣類を身につけ出かけたのだ、何事かあればいけないからとオブリーさんが馬車に同乗して行ってくれたが墓地に着いた時には必ず大丈夫だからと強固に一人で馬車を降りたらしい。


「全く、いつからあんな頑固になったのかなぁ・・・」


つい独り言が出てしまった。


「そうですね、お留守の間に一緒にいた方が何らかの影響を与えたのではないかと・・・」


はああぁ〜。オブリーと二人同時にため息をつく。いまルディが窓際のソファから見ているのはアルベリヒと剣術の鍛錬をしている銀髪の侍女だ。国境での出来事を知ったウルリヒ王家はこちらにいる間はカリンを正式な賓客扱いにすると申し出てきた。僕ら離れの三人組は恐縮して丁重にお断りしたが、特にジルベールが可愛いルディの命の恩人だから自分にとっても大事な人間だと言い張り、王宮内の客室では普段侍女の身ならば気を遣うだろうという配慮までしてくれ、彼らと同じ離れに滞在するよう手配し更には警備の強化まで配慮された。


なのになぜあの方は・・・今回の中でもトップクラスの賓客で一番護衛も大変なのに・・・なぜ、毎日の様に来てうちの侍女に剣術を教えてるんだろう・・・。


「ひと汗かいた、いや。実にスジがいい。女なのが勿体無いな、そう思わんか?」


庭から入ってきて上機嫌で話す殿下の後ろからカリンが息も切らさず入って来た。


「アルベリヒ殿下、お相手頂くのは大変ありがたいのですがこちらはハヴェルンとは違います。気楽に動き回られると護衛の方も大変なのではないですか?」


ルディの留守中、どのような関係だったのかはわからないが、カリンは王太子であるアルべリヒに割とピシリとものを言う。


「ヴィルへルミナは王太子妃教育が始まっているし、ジルベールはそれにべったり。ユベールは捕まると厄介だし、イニャスは仕事が忙しい。だから、こうして毎日我が国が誇る国家魔法魔術師殿の見舞いに来ているのだ。・・・まさか、迷惑なのか・・・」


明らかに演技の入ったわざとらしい傷ついた表情を作る。これが未来の国王なのかと頭が痛くなってくる。



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