表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法使いの恋  作者: にしのかなで
四章
19/59

突き落とされた魔法使い2

「ウルリヒは古より高い山脈に阻まれどの国からも難攻不落の国であったな。中から出るのも難儀ゆえその文化も他国とは違い信ずる神々も特有の禍々しい信仰へと走った時代が何代か続いた。ブロワトと言う名はその古の神の神殿を司る司祭の家名であった。その頃の功績からつい何代か前まではまだ高位貴族に名を連ねていたはずだ。文明が華々しく開花しそれと共に大陸のあちこちで戦争が常に起こっていた。そんな時、忘れられた様な国ウルリヒが各国から目を付けられ始めた。きっかけは、大陸全土を揺るがした「神の怒り」による地震でそびえ立つ山脈の一部が崩れ去り我がハヴェルンとも幾度か戦を交えた。その度にウルリヒの大魔女ブロワトが現れ戦況は一進一退が続き、互いに疲弊した民と国土を護るため不可侵条約が結ばれたのだ。互いの条件にウルリヒ側の当時の王家を排し新しく王家を立てる事。そして、魔女ブロワトの処刑。彼女は禍々しい神への巫女として仕えていた。更にハヴェルン側も王家が潰され現在のデア家が新王制を摂ることになった。しかし、こちらにとって痛手だったのは大陸の主神に仕える神殿がハヴェルンから消滅した事だ。首都アデーレにあった立派な神殿がそこに仕える者たち共々一夜にして消えた、これを当時の記録ではウルリヒのブロワトが呪詛により起こした事となっている。翌日ブロワトは処刑されたが、真相は定かではないな。因みに、そのブロワトの処刑に立ち会ったのが戦と祝福の女神ハプトマンだと言われている。」


アルベリヒは立ち上がり窓の外を見ながら続けた。


「さて、これが私が知る限りの両国の歴史だ。古より功績があり、更に魔女ブロワトがいなくなっても何が起きるかわからない。そこで、ブロワト家はまず高位貴族に位置していたが周囲からの孤立もあり自ら下位貴族となり、それまで蓄えていた豊富な資金で商業に手を出し現在の男爵当主は成功している。魔女ブロワトから何代も経った近年はブロワト家からは魔力持ちは生まれていない。複数の他家からの血筋をいれ、元々の血族を消していこうとするまことに珍しい家柄と言えるな。」


「そうです。ブロワト男爵家には魔力持ちは生まれていない。その小瓶の中身が何者かわかりませんが、今のあの家にこの様な強力な魔術を使える者はいないはず!」


「ブランディーヌ・デ・ブロワト嬢にクララと言う名の侍女がいるのはご存知ですか?先日、私のお仕えするガウス魔法魔術技師が街で二人に会っています。歴史を紐解くとこのクララと言う名が非常に面白いところに記されています。」


「なに⁈」


「ガウス魔法魔術技師が出会った侍女の名はクララ・アルスラ。アルスラ家は古くからブロワト家に仕えています。そして、過去に遡ると魔女ブロワトの身代わりになったと伝承されているのがブロワトの腹心で禍々しい神殿の巫女であったク・ラーラ・アルスラ。このクは巫女の最上位に次ぐ称号だそうです。」


「しかし、巫女は神に一生を捧げ婚姻はしないだろう!全部伝説に過ぎない。魔女ブロワトだとて、実際にいたかどうか。」


「ブロワトの信仰する神は純潔にこだわりません。なにせ主神ハーヴェイに対抗する禍々しい神ですから。」


話がまだ終わらない中、貴賓室からノックがあった。アルベリヒが入室を促す。


「お話の途中すみません。ルディ様が気づかれました。」


アルベリヒとオブリーが揃って失礼と言い残し貴賓室に駆け込む。失礼します。と、言いながらまだまだあどけなさに溢れる侍女らしき少女が控えの間に入ってきた。イニャスに向かい傅き、王族への最高礼をとり挨拶をする。


「私の様な者からご挨拶差し上げる事をお許し下さいませ。」


「構わん、名を名乗れ。私はイニャス第三王子だ、貴賓室での事を話してもらえるのか?」


「私はハヴェルン王国より遣わされましたニーム・ロドリゲス・ガウス国家魔法魔術師の特別癒術師アレクシア・カーテローゼ・ハプトマンでございます。この度は、殿下を始めウルリヒ王国近衛隊の方々に説明もなく出立が遅れた事をお詫び申し上げます。」


見事な銀の髪を一つに纏め背中に流している。着ている服も侍女の割には軽装でお仕着せではなく侍従の様な格好をしている。


「ハプトマン?それがお前の家名か⁉」


先程の話に出てきた戦と祝福の女神の名を持つ娘が目の前にいる。イニャスは胃のあたりに重いモノを感じた。


「はい。私は生まれてすぐに孤児院に預けられた様なのでこの名が真の名かどうかは確認しようがございませんが、私を預けた者がこの名を共に置いて行きましたので名乗らせていただいております。」


「ブロワトにハプトマンか・・・よい。で、中でなにが起きている。」


「我が主ガウス国家魔法魔術師に強力な呪詛がかけられており精鋭の高等癒術師達がその呪詛を解いておりました。ハヴェルンでも見た事のない文言で複雑な術をかけられておりました故、どの様な影響が出るかわからずアルベリヒ王太子殿下、ヴィルへルミナ王女殿下にはこちらに下がっていただいておりました。現在、術は解けた様ですが何分あまりに強力な魔術でしたのでガウス国家魔法魔術師の意識の回復と身の安全を確認するまではこちらを出立しないとのアルベリヒ王太子殿下の申し付けにより術を外す為に広い空間が必要でしたのでこちらの貴賓室をお借りし、何人にも影響がでないよう入室をお断りしていました。ウルリヒ王国の方々には御説明が遅れました事大変申し訳ございません。ですが、無用な混乱を避けたいとの王太子殿下と王女殿下の御意志を汲み、この様に時間がかかりました事は私共癒術師の責任でございます。厳罰は私、特別癒術師一人にお与え下さいませ。何なりとお受けする覚悟にございます。」


「お前は幾つだ。」


「11になりました。」


「11?ルディの特別癒術師と言ったな、ではお前がアレを解いたのか⁉」


イニャスがテーブルに置かれた不気味な中身の入った小瓶を指差す。


「・・・いつの間にアレの欠片を。殿下あの小瓶を触られましたか?」


「いや、オブリーが持って来て渋々アルベリヒ殿下にお渡ししていた。」


失礼しますと、テーブルに近付き小瓶を手にし娘は続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ