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魔法使いの恋  作者: にしのかなで
三章
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恋に落ちた魔術師

翌朝、目が覚めるとルディの気分は高揚していた。王女殿下の花嫁行列の行程を確認しながら胸に手をやる。昨日の事、夢の彼女を思い出し鼓動が早くなる。朝食は胸がいっぱいだからと断った。さて、これからどうしようか。


オブリーにヴィルへルミナが国境に到着するのを迎えに行くべきか問われる。その前に向こうからのメンバーを知りたかった。その中に養母がいることを望む・・・オブリーが手に入れてきたハヴェルンからの護衛の中にその名はあった。良かった、これで何とかこの薬の効果を消してもらえる・・・。その上アナスタシアの名もあった、自分がこうも不甲斐ない目にあっている今、女性の魔法魔術技師が王女の側についているのはありがたいことだった。彼女はどうやら婚礼の儀までの間こちらに滞在するらしい。


「あ・・・」


「どうしました?」


「いや・・・予想外の方が入っていらっしゃいます。お知りになりたいですよね。」


「え、誰ですか?オーランド殿下ですか?」


「いえ、国賓として・・・王太子殿下がいらっしゃるそうです。」


「ええええぇぇぇ〜っっ⁉まさかっ!」


「いいえ、間違いございません。更にですね、あ〜・・・。」


「もーお、驚きませんよっ!養母上にアナスタシア様更には王太子殿下っ‼これ以上誰がいますかっっ⁉」


「いるじゃないですか、あと一人。」


「誰ですか、一人?ウィレムが来ても驚きませんよ僕は。仕事柄当然でしょう。」


「・・・王太子癒術師団属・・・特別任務にてニーム・ロドリゲス・ガウス魔法魔術師担当癒術師」


「はっ!?」


「アレクシア・カーテローゼ・ハプトマン」


黒髪の魔法師は思わず耳を塞いで現実逃避してしまった。


「驚かないって仰ったじゃないですか・・・」


「驚きますよっ!いや、すみません。でも、だってなん・・なんで・・・」


「とりあえず、これでルディ様の悩みも解決しそうですね。さぁ、あまり日がありませんよ。作戦を練りましょうか。」


金の瞳に映るオブリーが悪の手先に見えてきた。しかし、確かに心強いことではある。カリンが来れば魔力の安定が確実になるのだ。


今回の王太子の婚約は実はかなりの反対派がいるらしい。そのトップは勿論、国内有数の貴族であるイヴァン公爵家当主である。こちらの令嬢はジルベール殿下がまだ5歳になる前に生を受け、遡ればウルリヒ王家にも繋がる由緒正しい御家柄で生まれた当時は未来の王太子妃誕生と騒がれた。勿論その容姿は華の様に美しく誰もがヴィルへルミナの名が出るまで王太子との婚約を疑いもしなかった。更に、他にも勿論その座を狙う親子は多い。しかし、権力・血筋など敵わないとわかると標的を第二・第三王子に変更したもの達も数しれず。しかし、ユベールは仕事一筋の堅物といわれイニャスは軍事活動に忙しい。そこでやはり飄々としたジルベールの側室にでもと、とにかくその寵愛を手に入れようと水面下で盛んに動いている。これらは非常にわかりやすい心理で敵の正体目的もはっきりしているので潰すのに手間はかからないだろう。


問題はブロワト男爵家の思惑だ。うまい具合に禁忌の惚れ薬を調合し夜会からこちら僕の関心を引きつけた。未だに抜け切らない効果に養母の到着が待ち遠しい。更に、彼女は決してやってはいけない事をした。ルディは自分だけが被害にあうならまだ許せた。しかし、身重であるフェンリルと面識もないカリンへのあそこ迄手の込んだ仕打ち。ブランディーヌ自身には魔力はない。侍女クララも気配はなかった。しかし、前もって仕込んでおいた品を選び気づかぬうちに魔法石まで忍ばせ、あの後訪れた店で飲んだ紅茶にまで薬を入れていた。


わからない。


目的はなんなんだ?ルディを手に入れる事でブランディーヌ及びブロワト家が得をする事。それは、やはりこの器にふさわしくない魔力のせいか・・・。考えながらさみしくなった。あれが、演技ではなく本当の姿なら二人はまずはいい友人になれたと思う。もしかしたら女性に慣れていないルディの事だから本当に恋をしたかもしれない。だから、とても残念だ。薬の効果は強烈で、気を抜くとすぐ彼女を思い浮かべる。しかも、薬の中身まではハッキリと彼程度の癒術師にはわからない。それが単なる惚れ薬ならまだいいが、他の作用があれば非常に危険だ。だから、いつも側にオブリーが守護の結界を張り巡らせ他者とも接触を避けている。


例のストールらは処分すれば失敗したことが相手にわかるため未だに、ここにある。今朝の胸の鼓動は残念ながらブランディーヌ嬢を想ってではない、上着の内ポケットに入っているカリンの手紙がなによりルディの正気を保たせ護っている。恋に落ちた魔術師・・・暫くは、そうヴィルへルミナが無事入城するまでは周囲にそう見せなければいけない。歓迎の夜会がまた開かれるだろう、ジルベールをを相手に動く者達にも注意しなければいけないが、ブロワト家の動向も監視しなければいけない。件の令嬢たちも立場への執着もあるが、本当に三人の殿下それぞれへの恋慕もやはりあるのだろう。恋とはなんと恐ろしいものか・・・。この時、ヴィルへルミナ様到着まで一週間となっていた。

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