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魔法使いの恋  作者: にしのかなで
二章
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二人の王太子

ウルリヒに来て5ヶ月、来月中旬にはジルベールの婚約者としてハヴェルンよりヴィルへルミナが来る。ちょうど夏の終わりの時期になりまだ過ごしやすい季節に移動し、年が明け春になれば国をあげての盛大な婚礼が予定されている。それまでの間、こちらの文化、作法などのお妃教育を受けるのだ。幸い、王妃陛下の状態もすっかり落ち着き最近ではお茶の時間に呼ばれハヴェルンの歴史や文化などをジルベールとヴィルへルミナ付きになる予定の侍女数名に講義する日々が続いている。ヴィルへルミナがこちらで式を挙げるまでの間の住まいに置く調度品やドレスサイズに食の好みなどジルベールが細かくオブリーと話をしている。それを見ていてふと気づいたがこの殿下、一体いつ政務に携わられているのだろう?


「心配するな、ルディ。有能な鷹は爪を隠すものだ。そして、人望ある者の下には必ず有能な者が付く。な、ユベール。」


その有能なユベールは文官として兄を支えられている。王太子がいつどこにいようとも迷わず最短距離でやってきて執務をこなさせる、苦労してるんだろうなぁ・・・と想像すると共に、そういえばと思い出す。ハヴェルンの王太子はどうしているだろうか。長い事病を患い、人気が少なく王室御用達の静養地にある離宮に移られてから久しい。養母がこちらに来られない理由の第一が王太子への癒術を施す事にあったがその様子は如何だろうか。思えば王宮に参内する度に会うのは第二王子オーランド殿下で、王太子様には随分と会っていない。兄より先にご婚約が整われたヴィルへルミナも自分の慶事の嬉しさに変わりはないが王太子の事を随分と気に掛けているとアナスタシアが言っていたのを思い出す。


国家間の王族同士の婚姻の儀には嫁ぐ方の家族は付き添えない。いくら隣国とはいえ国政を司る者はそう簡単には国外へ出られない。相手国が厳しい国であれば国境で姫君以外の全ての者、輿入れの品々まで国許に返される事もあるそうだ。更には輿入れして来る姫君にとって一番の難関は後宮にある。幸いにもこの度の両国共にその制度は現在ないがもし、王太子に跡継ぎが産まれなければいつでも側室を望む貴族の声が上がるかもしれない。


今回、ウルリヒ王国はヴィルへルミナ王女に対し随分と寛大な待遇を行っている。祖国ハヴェルンからの侍女を数名伴うこと、後継者問題はこの国は元々第一子が男女どちらであろうと王位継承権一位を持つ。更にジルベールに跡継ぎが恵まれなかった場合は第二王子が継承権一位をとなっていく。だから、ヴィルへルミナは表向きは後継者をと厳しく求められる事は無いはずだしましてや、側室問題も起きないはずだが先日のオプリーの話を聞けばそう呑気に傍観するわけにもいかないなという気になってきた。ルディ達はヴィルへルミナが嫁いで来てから更に一年こちらにいるわけだから、その間お守りしなくてはいけない。ところで、こちらへの侍女は何名伴われるのだろう。まさか、アナスタシアが選ばれるはずはないが・・・。


アナスタシアは実はハヴェルンの王太子妃候補第一位であったらしい。しかし、生まれてすぐに魔力持ちと判断されるや候補にも登らなくなった。血筋を残す事を重んじるハヴェルン王家では、ウルリヒと違い継承権は王太子の子へと継がれていく。いくら釣り合いの取れた家柄の令嬢でも子を成す可能性の低い魔力持ちは除外されていく。複雑な事にハヴェルン王国王太子アルベリヒは若くして亡くなった先の王妃陛下の遺児で、ヴィルへルミナ他オーランド第二王子その下の双子の姫君はアルベリヒの母親が亡くなり、しかもお体の弱い殿下を心配し周囲から勧められやっと数年後に迎え入れた現王妃陛下の子供達で、こちらも水面下では王太子派と第二王子派が対立しているらしい。しかし、オーランドには王位への執着は無くあくまでも兄君の補佐としていずれアルベリヒが王位を継いだ時には臣下に下ると公言している。


なんにせよ、アルベリヒ殿下が無事健康を取り戻し王宮に帰られるよういまは我が養母が片時も離れず癒術を施しているそうだ。

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