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魔法使いの恋  作者: にしのかなで
二章
12/59

話はキチンと最後まで

手紙を読み終え胸ポケットにしまう。多分、心境に異変があった時に耳飾りに触れると思い出す仕組みになっていたんだろう。ホントにいつの間にここまで力を付けたのか、とルディはまたしても感心するしかなかった。

「すみません、オブリーさん。話の続きをいいですか?」


続きの内容はやはりあまり気分のいいものではなかった。つまり、ルディは当時の様子からウルリヒから何者かが魔力の強い子どもを攫って来るよう命じていたのだろう。しかし、国境付近には厳重に結界が張り巡らされている上、女一人で目立たず旅をするうちに力尽きたのがあの場所だ。

更に、深刻なことに内部でウルリヒに通じているものがいるらしい。そこまでは掴んでいるが何者が、どんな勢力で目的は何か、まではどうやってもわからないので魔法省でも頭を痛めている。


そこへ、安定しない魔力に呼応する存在が現れた。それがカリンだ、魔法省としてはカリンを供につける事も考えた様だが養母とアナスタシア、そして何故かヴィルへルミナまでが強固に反対し居残る事になった。確かにカリンがいれば暴走はないし王妃陛下の病ももっと早く良くなるだろう。しかし、二人揃って隣国へ旅立たせるのは人質を安安と渡すのと同じ事。ハヴェルン側でも水面下で反逆者を探している。オブリーには粗方検討がついている様だが確証がないうちは何も言えないと言われた。全く、何も知らずに呑気に暮らしてきた自分がこれほど情けなく思えたのが悔しくてならない。所詮、周りを厳重に護られていたのだ。これではいけない、このままではカリンにも身の危険があるかもしれない。せめてもの救いは離れの中に残してきた事だ。


「オプリーさん。僕、明日から王妃陛下に係りきりになります。高等魔法魔術技師学校へはあまり出られません。急で怪しまれるかも知れませんが王妃陛下の病を治すのが優先されますし、魔力の安定はこちらで十分できそうですから。」


「おや、随分顔つきが変わりましたね。承知いたしました、では私もただの執事として身の回りのお世話を表向きさせていただきましょう。正直、勉強には辟易していましたからね。」


「そうですね、お願いします。」


話を終えたオブリーさんは魔法省へと報告と手続きにでかけた。なんだか、急に知らなかった現実を突き付けられて疲れたがそっと胸ポケットの位置に手をやる。多分、ルディが忙しくしている間に自分で勉強し色々試したのだろう。研究棟も自由に使っていいと言っておいたから、あの年でここまでできれば魔法魔術師学校の学生なら主席で通る。だけど、あの子の力は魔力とは違う、それを魔力を交えてここまでの仕掛けを作るとは、誰か指導すれば僕以上になるだろうな。



一方、ハヴェルンの都アデーレにあるシュヴァリエ公爵家の離れではフェンリルが慌ててアナスタシアを呼んできていた。

居間のソファにグッタリと横になっているのは遠いウルリヒで魔法師が想いを馳せている侍女カリンであった。


「で、何があったの?」


フェンリルは真っ赤な目をして一所懸命言葉を紡いだ。


「居間の掃除をしていたのです、それまで二人で会話をしながら。それでふと急に会話が途切れたので振り返るとカ、カリンがテーブルに手をついて倒れこんで。慌ててソファに横にならせたのですが苦しそうにしながらも指輪を触って誰かに言い聞かせるように「大丈夫だから」と何度も繰り返して・・・お嬢様、ルディ様に何かあったのでしょうか?」


「・・・あったんでしょうね、多分。指輪と耳飾りは繋がっているから。でも、大丈夫よ。カリンは離れた場所から力を使って疲れているけどゆっくり休ませれば回復するわ、後でお薬を持たせるわね。私はちょっとやる事が出来たから本邸に帰るけど、気がついたら薬を飲ませて部屋で休ませてあげて。あなたも驚いたでしょう?後は離れにいる限り大丈夫だから、私も用を済ませたら見に来るし。だからフェンリル、あなたも帰って休みなさい。体に触るわ。」


まだ目立たぬ腹部を優しく見つめてフェンリルに言い聞かせる。

「わかりました。お気遣いありがとうございますお嬢様。」


もう一度労いの言葉をかけてアナスタシアは本邸へともどり暫く誰も近づかないようにと言い自室に閉じこもる。それからソファにに置いてあるクッションを掴むと思い切り壁に投げつけた。


「な〜にをやってんのよ!あの馬鹿どもがぁっ‼」




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