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匿名希望の赤目・重い思い進軍



「お名前は?」




 その言葉が気に障ったのか、女は長い髪をかき上げ質問者を睨みつける。


**紅炎のような赤い瞳**


 その瞳は、質問をした男を見据えたまま更に赤みを増しさせ輝くように宣言した。


「匿名希望よ!」





 

 **世界を燃え散らす夕暮れ時**


 長い影に引かれるような重い足取りの女が一人。

 大きな辞書を腋に抱え腰まである長い髪を振りながら歩く女は

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー―――ー――――――――――


 世界を燃え上がらせる星に対して、これでもかと言うほどの溜息を吐きかける。

 不快深い溜息。

 流石の太陽も耐えきれず、意気消沈し姿を消していった。


**世界が段々と色を忘れる逢魔が時**


 自分の影が見えなくなって更に足取りが重さを感じさせる。けれども、女は止まろうせず引きずるように先へ進む。

 女の足取りは退くことを良しとしない。

 重い足取りを思いで持って行く。

 思いを重ね帰路につく。


と、


 溜息で太陽を打消し、重い思い足取りの女の行進が不意に止まる。

 歩みを止めた女は、自宅のドアに向かって怪訝な表情を浮かべている。ドアには一枚の紙切れが貼り付けてあった。

 少し薄汚れた感じの紙には達筆な字が118文字、簡素な地図1つ。


『 人と同じ速さで歩かず

  誰よりも一歩早く歩かず

  世界よりも二歩先を歩かず

  時代よりも未来を歩くものよ


  己が先に先人はなく

  他がために道を作るものよ


  偶然がなく

  必然がなく

  奇跡を体現しその軌跡を辿らせるものよ

  

  先が見えず恐怖し歩きを止める時

  我が軌跡を辿り頂け  』


 差出人不明の意味不明な文章を女は鷲掴み。

「何て鼻につく傲慢な文章。シェイククスピアにでもなったつもりかしら。これで私が行ったらまるで救いを欲したみたいじゃない」

 言うやいなや女は踵を返して歩き出す。

「他の60数億には些細な迷文だろうけれど、私の取っては甚だしい名文だわ。その才能に免じて、あなたを私の八つ当たり相手にしてあげる。・・・・な・な・し・さ・ん」

 女は嗜虐的な笑みを浮かべ進軍を開始した。


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