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不思議な先輩

登校すると、波野が俺の方へ来た。

「幹人、昨日、先に帰っちゃったでしょ」

「ああ、ダメだったか?」

「ダメってことはないけど、一緒に帰りたかったなーって」

「ん、じゃあ今日一緒に帰るか」

「うん、忘れないでよ」


午前の授業が終わり昼飯の時間になった。

俺は今朝買ったコンビニ弁当を取り出し割り箸を割った。

食べようとすると、教室のドアが開き、野村先輩がやって来た。

「やあ、賀谷くん」

「……」

「む、無言か……」

「いや、待て。 これはわたしに会えたのが嬉し過ぎて放心状態にあるのではないか?」

「はっはっは、なんだ可愛いところもあるのだな」

野村先輩は一人でブツブツ言って笑い出す。

「先輩、すげー目立ってますよ」

「そうか? まあそんなことはどうでも良い」

「何しに来たんですか」

「決まってるだろう。 君とお弁当を食べに来たのだ!」

野村先輩は俺の手を掴み立たせる。

「ちょっ、断ったじゃないですか!」

「そうだったか?」

野村先輩は小首をかしげながら言う。

「そうですよ!」

「ふむ、なら今もう一度言おう」

そして野村先輩は床に膝を突き頭を下げた。

「わたしとお弁当を食べてください。お願いします」

見事な土下座だった。

「いや、やめてくださいよ! なんか俺がすごい悪い人みたい!」

「実際君は女子の頼みを聞かず、あまつさえ土下座までさせる悪い男だろう?」

「俺がさせた訳じゃないでしょ!」


「おい、見ろよ。賀谷、あの野村先輩を土下座させてるぜ」

「どんな弱みを握ったんだよ……」

「逆らえない野村先輩にメイド服でご奉仕させたり、スク水で膝枕してもらったりする気か! 許せんな」

周りの生徒も好き勝手なことを言い始める。


「わかりましたから、一緒に食べますから」

「よし、ならば屋上に行こうではないか」

先輩は顔を上げると俺の手を引く。

「引っ張らないでくださいよ」

「はっはっは、良いではないか」


そうして俺たちは屋上にやって来た。

「なんで寒い中屋上で弁当食べるんですか……」

「まだ十一月だ。 そう寒くはあるまい」

「いや、十分寒いですよ」

「十一分寒いと言ったか? はっはっは、寒いギャグだなー、君」

「言ってません」

「ちなみに今のは寒い気温と寒いギャグをかけてる」

「つまらないですよ」

「そうか……」

「え、そんなに自信あったんですか? 今のギャグ」

野村先輩はかなり変わってる。


「よし、この卵焼きをやろう」

「どうも……」

野村先輩は自分の弁当から卵焼きを摘み俺に差し出す。

だが、俺の弁当に置いてくれずに箸で摘まんだままにしている。

「あの、早く置いて欲しいんですけど……」

「君、これがわからないのか……」

「あーんしたまえ」

「え、え、いや、それは」

「あーんだ。口を開くだけでいいんだ」

俺が戸惑っていると野村先輩は無理矢理俺の口を開けさせてきた。

「早く、口を、開けたまえ」

「がぼっ! ぐふっ!」

口の中に卵焼きが押し込まれる。きつい……

「どうだ? 中々美味だろう」

「先輩、味が分かりません……」

「そうか、味も分からぬほどに感動したか」

結局、昼休みが終わるまで付き合わされた。

だが、俺は先輩といる時間が少しだけ楽しかった。


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