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禅味岸子

和菓子屋へ行った帰り道、俺と波野は二人並んで歩いていた。

波野と一緒に歩くのも久しぶりな気がする。


俺の家の前までくると波野は言った。

「今日は付き合ってくれてありがとね」

「俺も行きたかったし気にするな」

「それでも一緒に行ってくれたことが嬉しいの!」

「……そうかい。 じゃあな」

なんだか照れ臭くなって俺は家に入った。

「うん、またね!」


俺は少しだけ気持ちが楽になった気がした。

今日は気持ち良く寝られそうだな。




寝坊した……

俺は手早く準備を済ませて家を飛び出す。

今日はサボるか……?

そんな気持ちが一瞬頭をよぎったが振り払う。

とにかく急ぐか。


学園に着き、教室に入るともうすでに授業が始まっていた。

「賀谷、遅いぞ」

教師に注意される。

「すいません」

「さっさと座りなさい」

「はい」

自分の席に着くと、周りの生徒のささやき声が聞こえた。


「この前も遅刻しといて反省ナシかよ……」

「進級できないんじゃねえの?」

「つーか、何なの、あいつ」

そんな容赦無い言葉が耳に入る。

聞こえてるとか気にしないんだろう。

聞かせてるのかもしれないが。


「幹人、何で遅刻したのよ」

授業が終わると、波野がやって来た。

「寝坊した」

「寝坊した、じゃないわよ! 遅刻すると減点なんだから気をつけないと!」

「わかってるよ」

「本当にー?」

じとーっと波野が睨んでくる。

「もう、今度からわたしが朝、起こしに行ってあげようか?」

「……いい」

「何で、遅刻しないですむよ?」

波野は不思議そうに言う。

理由なんて決まってる。

「いや、恥ずかしいし……」

「そう? じゃあ、自分でちゃんと起きなさいよっ」

波野は俺の肩をパンっと叩くと自分の席に戻って行った。


かったるい授業が終わり俺はとっとと家に帰る。

帰り道、どこかで見たような女子生徒を見かけた。 ショートカットにした髪の毛に小さめの身長。

どこで見たか……

「ああ、あの和菓子屋だ」

この前波野と一緒に行った店でバイトしてた奴だ。

「あれ、イチャイチャカッポォの片割れさんじゃないすか」

向こうも俺に気づいたらしくこっちに来る。

「カッポォじゃない」

「あれ、そうなんすかー」

「ていうか、お前、うちの学園の生徒だったのか」

「まさかお客さんが先輩だったとは。 今日は一緒じゃないんすか?」

「波野か? 見ての通りだ」

「てんちょーのお友達の娘さんでしたっけ」

「そうらしいな」


「そういえば先輩のお名前なんですか?」

「賀谷幹人だ」

「禅味岸子っす。 よろしくお願いしまーす」

「それでは先輩、さよなら」

「おう」


挨拶もそこそこに俺たちは反対の方向に行った。

禅味岸子。

こいつも変な奴だ。





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