ある会話
「桜……、残るって……」
「知っているわ」
「こうなるって……分かってた……?」
「さあ、どちらでもよかったんだもの」
「でも……、桜が残らなかったら……」
「あの爺さんのことを言っているの?」
「それもあるけど……。星が……。それに私たちだって……」
「そんなのまだまだ先の話でしょ」
「……他に魔力の無い人間が現れるとは限らない」
「珍しくハッキリ言ったわね」
「私たちには……義務があるから……」
「義務ね。その義務のために、後どれほど生きなきゃならないのかしらね」
「もう生きたくない……?」
「飽きてはいるわ。皆私を置いて先に往くし。あんたはそうじゃないの?」
「私はまだ……そこまで生きていないから……」
「そう……。いつの間にか私が最年長だものね。一体、この魔力はいつになったら衰えるのかしら」
「桜がいなかったら……使い魔たちも必ず死ぬ……」
「一緒に逝けるじゃない」
「……」
「――ま、よかったんじゃない? 旅にも出るんでしょ?」
「うん……。公爵家の息子……。そのために記憶を……?」
「封じたのかって? それだけのためってわけでもないけれど。でも記憶があったら手放しはしなかったでしょうね。桜が家を出るかどうかも成り行き次第だったわ」
「南へ……行くって……」
「あんたが勧めたの?」
「桜が自分で……言った……」
「あの子って、本当に都合よく動いてくれるのね。単純だからかしら?」
「素直……」
「物は言いようね。でもあんたのことだから、そのまま爺さんの所まで連れて行くと思ったけれど、そうじゃないのね」
「……自分で行くって……言われた……」
「ふうん、やけに不満そうじゃない。でもあの甘ったれが、少しは進歩したのかしらね。ま、どうしても危なくなったら、あんたがついているからとも思ってそうだけど」
「……」
「図星? 全く、公爵家が甘やかすから……。あんたはあんたで、あの爺さんが苦手だものね」
「近寄りたく……ない……」
「ま、あんたは必要な時にでも手伝ってあげなさい。私は手出ししないわ」
「協力……しないの……?」
「言ったでしょ、どっちでもいいって。それにお膳立ては整えてあげたじゃない。双子もついているんでしょ、充分よ」
「分かった……。それじゃ……、もう行く……」
「ええ、ではね。――――――――――世界を支える十二色の光、央輝星……か」
第2章 終




