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せかいさいきょうのパーティー

作者: 暇神

今回も勢いだけで書いたため、やはりグダクダ感が否めません。すみません。(土下座)


 溢れんばかりの正義感を持つ勇者

 勇猛果敢に敵を薙ぎ倒す戦士

 常に冷静な目で戦局を見通す魔法使い

 慈愛に満ちた心で癒やしをもたらす僧侶


 あなたは誰が好きですか?






 限りなく高く、蒼く、そして広い空。雲はほとんど無く正に快い晴れ、快晴と呼ぶに相応しい天候である。

 しかし、心地良いそよ風が駆け抜ける草原とは裏腹に、今この草原の中心で戦闘が繰り広げられていた。

「ブァアアアアアッ!!」

 雄叫びを上げるのは、ゴツい鎧を纏った大柄な戦士。その太い腕は巨大な戦斧を振るい、筋骨隆々の体から繰り出される一撃一撃は、モンスター数体を容易く葬り去る。

「フハハハハハ、お前らなどこの俺が全員血祭りに上げてくれるわ!!」

 大量に襲いかかってくるモンスターを次々と肉塊にし、血飛沫をその身に浴びながら戦士を高笑いを響かせた。

「ヒィッ!!」

 風の唸りを纏う斧をかいくぐって、一人の中年が戦士の後ろに倒れ込んだ。商いのために隣町へ馬車向かっていた中年である。隣町に行く途中で大量のモンスターに襲われかけ、逃げてた所を助けられたのだ。

「ウ、ウワッ!!」

 斧を同じくかいくぐってきた一匹のモンスターが、中年に襲いかかる。

 しかし、モンスターの爪は中年には届かなかった。モンスターの爪は届かなかったが、代わりに中年の腹を何かが裂いていった。

「大丈夫ですか!?」

 モンスターの影から現れたのは、爽やかな印象を受ける好青年だった。強い意志が宿っているのが、瞳の輝きからも見てとれる。恐らく勇者であろう。

「あ、血が出てる!! 少し待っててください、戦闘の後で治療します!! クソ、モンスターめ!!」

「ち、違……これは、あなたが……」

 中年の言葉が聞こえていないらしい勇者は、それだけを言うとモンスターの群れへと向かっていった。中年の血がついた剣を持って。

「……痛い」

 中年は腹を押さえながら、痛みに呻く。

「た、助けて……リーン」

 愛しい妻の顔を浮かべると少し気力が湧いてきた。

「死ぬもんか、死ぬ……あれ?」

 そこで中年の横を二つの影が過ぎていった。その影に目でやると勇者と戦士の背中だという事がわかった。

「ど、どこ行く、ッ!?」

 嫌な予感に中年が視線を足の方に向けると、そこには中年を見て舌なめずりをする大量のモンスターがいた。

「助け……!!」

 モンスター達が飛びかかり、中年が叫ぼうとした瞬間、辺りは凄まじい爆発と轟音に包まれた。

「やっぱり僕の直感は当たるな!! 魔王め、罠にかからなかったぞ!!」

「……馬鹿か、罠なわけねえだろ」

 勇者の言葉に、つば広の帽子をかぶったいかにも魔法使いらしい青年が呟いた。

「そういえば、モンスター以外にも何かいたな……まぁ、いいか。そのお陰でモンスターを一掃できたし」

 独り言のように呟く魔法使いは、つばの影で口角を上げた。

「あらあら、あれはひょっとして人ですか?」

 間延びした口調で喋るのは、温厚そうな笑みを浮かべた美人だった。純白で清楚な服装から僧侶だという事が伺える。

「まあまあ、大変。今薬草をあげますね」

 黒こげの中年に膝枕をすると、道具袋から薬草を取り出す。やっと出会えたまともな人物に、中年は僧侶に女神の姿を見た。

「はい、薬草ですよ。」

 薬草を口に含むと、それを咀嚼する。苦味に顔をしかめるが、良薬は何とかという言葉を頭に思い浮かべる。

「はい、ドンドンいきますよ」

「ちょ、待っ……マッヘェ」

「重症ですからね。しっかり回復しなくては」

 次々と放り込まれる薬草に呼吸ができず、次第に顔を赤くしていく。

「ムグォ……ム、ァ…………」

 重症の中年は暴れる事すら叶わず、とうとうその場に沈黙した。

「そうそう、安静も大事なんですよね」 僧侶は相変わらず笑顔のまま喋る。


「しかし……魔王め、許せないな!! 何の罪も無い一般人を巻き込むなんて!!」

 正義感のあまり、前しか見えていない勇者。

「チィ、まだ足りんな。俺の魂が戦いを求めていやがる」

 血肉に魅入られ、戦闘狂になり果てた戦士。

「丁度良いからあの馬車を使おうか。持ち主も死んだし」

 冷静を通り越して冷徹な魔法使い。

「起こすのも可哀想なので、ここに寝かせておいてあげましょう」

 相変わらずの笑顔が返って怖い僧侶。


「クククククク、これで終わりだ。確実に、な」

 玉座に頬杖で座る男が、一人呟く。

「ハハハハハ、今度こそ、今度こそだ!! 世界最強……いや、世界最凶のパーティーを送ったのだ、今度こそ娘を返してもらうぞ!!」

 男は玉座から立ち上がると、両手を上に掲げて高笑いをした。






 溢れんばかりの正義感を持つ勇者

 勇猛果敢に敵を薙ぎ倒す戦士

 常に冷静な目で戦局を見通す魔法使い

 慈愛に満ちた心で癒やしをもたらす僧侶


 あなたは誰が好きですか?



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― 新着の感想 ―
[一言]  拝読しました。  確かに、「世界最凶」なパーティーですね。短い文章の中で、それぞれの特色がよく表現されていたと思います。  一般人に危害を与え、更にそれに気づかない勇者一行…そんなパーティ…
[一言] 私は貴方の作品を他にも少し閲覧させてもらいましたが、なかなかの力量はあるみたいですね^^なかなか面白いです。がんばってください^^
2006/08/03 12:29 グレイト真田
[一言] 面白かったです。最初はよくありそうな短編ファンタジー物かとタカをくくってましたが、中盤からの展開が良かったです。キャラクター一人一人の個性が強く、上手い具合に空回りしている所にオリジナリティ…
2006/07/28 01:40 伊之口浩作
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