表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高町亜美の物語  作者: 大仏さん
第二章―契約者―
9/31

―最期―

亜「今回あまり出番ないの?」


作「いや、ちゃんと出るよ?語りが別の奴になってるだけで」


亜「別の奴って?ハクア?ムラマサ?フュズィ?」


作「見ていれば何となく分かってくるよ。というかすぐに分かる」


亜「?」


ニュアージュという街の近くに棲み着くようになり、五年の時が過ぎた。


今まで何度か、我を倒そうと挑んできた者がいたが、どいつもこいつもまるで話にならない様な奴らだった。


最初は少し遊んでやろうと力を抜いていれば、いい気になるが、ほんの少し力を入れて掛かればなんのことはない。


一瞬で片が付く。


本当につまらない・・・何故我はこんな所に来たのだろうか?


退屈ならばどこか別の場所に行けば良いだけのことだが、どうしてか此処を動けずにいる。


まるで本能が此処にいろとでも言っているかのように、我はこの地から動けずにいる。



何だと言うのだろうか?



漆黒の毛に覆われた体の毛繕いをしながら、その理由を考えていたが、しかし答えは見つからなかった。


当然と言えば当然か。


三年前からこのことについて考えない日はなかったが、答えは見つかっていないのだ。


それが突然今日見つかるわけもない・・・。



その時だった。



縄張りに二人の人間が踏み込んできたのは。


まだ我の元までは来ていないようだが、気配だけでも強者だということは分かる。


真っ直ぐに進んでくればほんの三十分程で辿り着くだろう。


念のためにも準備だけはしておこう。


今までの相手が弱かったからと言って、今日も弱い奴が来るとは限らない。


四本の足で体を起こし、固まっていた体を解す。


この瞬間は何とも言えぬ快感があるな。



適当に当たりの魔物を狩りながら、二つの気配が近づいてくるのを感じ、先ほどいた場所に戻った。



それから約十分程が経った頃、その二つの気配は姿を現したが、その二人を見て我は些か驚いた。


「いた」


「アミ?気を抜いたら駄目だよ?」


二人ともまだ年端もいかぬ少女だったのだ。


身の丈は我と比べれば、あちらからしたらおよそ三倍はあろうに、真っ直ぐに我を見据えている。


こんな者たちは初めてだ。


おそらく他の人間達が見れば、この二人の持つ力には気付かないだろう。


黒い着物を着ている少女の、気を抜くなと言う言葉。


これは我にも当て嵌まる。


この二人には本気で掛からねばならぬ。


本能がそう告げている。


「分かってる。行くよ?ムラマサ」


もう一人の赤い着物を着ている少女が、腰に差している剣の柄に手を掛け戦闘態勢を取った。


黒い着物の少女も太股に巻いているホルスターから銃を抜き銃口をこちらに向け、牽制の弾を撃ってきた。


それを避け今度はこちらから攻撃を仕掛ける。


二人に急接近しその身を引き裂こうと爪を振り下ろすが、それは躱され地面を抉るだけに終わった。


だが、こちらも躱されたままで終わるつもりはない。


前脚を軸に体を回転され、尻尾を降る。


「アミ!?」


「大丈夫!」


アミと呼ばれた少女がそう言った通り、尻尾は片腕に防がれた。


だが、勢いを殺すことはできなかった様で、少女の体は地面に叩きつけられた。


それにしても、何だ?今の感触は?


とても少女が持つ固さとは思えなかった。


どころかあの腕で殴られでもすれば、我とて致命傷を覚悟せねばならぬ程だ。


土煙が晴れた時、そこには今し方吹き飛ばした少女が立っていた。


まるで堪えてないようだ。


「居合い術一式・一ノ型―――」


少女が最初の時の様に柄に手を掛ける。


来る。


陽炎カゲロウ


ヒュヒュン!


空を切る音が二度聞こえた次の瞬間、我は本能的に跳躍していた。


何故だ?


あの者の攻撃は届かない位置にいた。


剣の届く範囲にいなかったにも関わらず、何故我は跳んだ?


ズシン!


背後で音を立てて何かが倒れた。


見てみると、我の後にあった木がスッパリと切られていた。


だが、可笑しい。


音からして、あの者が二発の斬撃を放ったのは明らかだ。


だというのに、木は一度しか切られていない。


その答えは、直後に分かった。


「ガアッ!」


腹のあたりを何かが斬り裂いたことによって。


時間差で二発目の斬撃が襲ってきたのだ。


なんとか地面に降り立つが、横腹からは血が溢れ、ふらついてしまう。


この瞬間、決着は着いた様な物だ。


だが、このまま終わっては余りにも呆気ない。


せめて最後の足掻きはさせてもらう。


力を振り絞り、アミと言う少女に接近する。


その時、また少女が剣を構えた。


「居合い術一式・奥義―――」


おそらくこの一撃で我は終わるだろう。


だが、構わない。


我がこの場を動けなかった理由。


それがこの者だったのだから。


未開紅ミカイコウ!」


音も聞こえぬ程の早さで、少女は剣を振り鞘に戻した。


斬られたと言う感覚すらも・・・我には無かった。


攻撃しようと振り上げていた爪をゆっくりと下ろし、少女を素通りし、後を見ると少女も同じようにこちらを見ていた。


そして


キン


刀身が全て鞘に収まった時、我は終わったと同時に願った。




この者の側にいたい、と―――




ハ「出番が全然無かった」


作「いや、ごめん・・・次からはまた出番あるからさ、そう落ち込むなって」


ハ「本当?」


作「本当だよ」


ハ「なら許す」


作「サンキュ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ