―魔法―
ハ「今回は初クエストに行って帰ってくるまでの話だって」
亜「ちゃんと纏められるの?」
ハ「それは作者次第」
契約者。
ハクアによると、この言葉はあたしの様にドラゴンと契約した者の他に、精霊や魔具と契約している人たちも纏めてそう呼ぶらしい。
精霊はマナが一か所に集まり、そのまま長い年月が経つと生まれる、意思を持ったマナで、容姿も性別もちゃんとあるらしい。
マナが集まった場所によって、その精霊の属性もかわるとか。
魔具と言うのは、所謂曰く付きの道具のことで、呪いが掛けられていたり、意思を持っていたりする道具のことの総称らしい。
精霊も魔具も契約すれば、ドラゴンとの契約と同じようにいくらかの恩恵があるみたいだけど、それは個々で全く別の形として現れるそうで、どんな恩恵が得られるのかはするまで分からない。
お楽しみ、みたいなものだろう。
契約者と言う一単語で表すのは、それを周囲の人が知った時に起こる混乱を防ぐ為。
ドラゴンとの契約者は今の時代ではあたし含め四人。
この前教えてもらった、三人の契約者。
その三人もあたしと同じように不死になってるからね・・・。
「ここにはそれしか書かれていないけど、詳しく知りたいならもう少し強く念じてみて?」
言われた通り念じてみると、頭の中にいろんな情報が入ってきた。
一つ目は『千里眼』
遠くを見渡す眼を持っているものが得るスキル。
強化不可。
強化についてはまた聞こうと思って、次に項目を見る。
『地獄耳』
意識して聞くことで、どれだけ小さな音も聞き分ける。
強化可能。
現段階レベル・1
『絶対嗅覚』
無害か有害かを嗅ぎ分けることができる。
強化可能。
現段階レベル・1
『龍燐』
任意により体を龍の鱗で覆うことができる。
強化可能。
現段階レベル・1
『気配感知』
半径一キロ内にいる気配を消している者の気配を感じ取る。
強化可能。
現段階レベル・1
他にも気配遮断とか結界破りとかあるけど、ざっと見ただけでも四十個くらいはある。
「分かった?」
「うん。結構色々あった。それで、強化についてなんだけど」
「とりあえず何かクエスト受けない?そこに向かいながら教えるからさ」
「うん」
確かに止まって教えてもらうよりは、行動しながらの方がいいか。
*
「強化っていうのは、そのスキルを使うことで、効果が上がったりすることだよ。
さっき、ギルドの人が使ってスキルは、使い込むことで人の年齢や魔力量を量ることもできるようになったり、結界の綻びを見破ったりできるようになるの。
魔法もこれに該当するけど、アミのスキルに何か魔法はあった?」
朱兎と言う魔物の討伐依頼を受けて、その魔物が主に生息しているラパ森林に向かっている。
その途中で、スキルの強化について解説をしてもらっている。
「うん。二つあったよ」
「え?二つだけ?」
「うん。一つは至って普通の魔法なのかもしれないけど、もう一つがかなり物騒なこと書いてあったんだよね・・・ちょっと見てみて?」
カードのその魔法の名前と説明を表示してハクアに渡す。
「どれどれ?・・・え!?」
それを見た途端、ハクアは驚いたのか固まった。
本日二回目の硬直。
とりあえず元に戻るまで、ハクアを引っ張っていくことにした。
三十分位して、元に戻ったハクアに説明を求める。
「えっと・・・わたしもまだ少し混乱してるんだけど・・・」
「うん」
「この『ル・ノワール・ファン』って言う魔法はね?現存する魔法と歴史に残る魔法。
それら全ての魔法の頂点なの。
最強で最凶で禁断の魔法。
意味は『漆黒の終焉』」
終焉。
あれかな?
物語の終わりによく使われる、FINて言葉のことなのかな?
正確な発音ってファンだったのかな?
まあ、いいか。
「この魔法の効果は、『無』。
ただそれだけ。
でも、それだけだから危険なの」
ハクアの声がいつになく真剣な物になっている。
「この魔法を受けた者及び物は、その存在の一切がこの世界から抹消される。親や友人、仲間。記録といった物から、全てが抹消され初めからいなかったことになる。
だから、禁断とされた。危険、なんて生易しい言葉で片付けられる魔法じゃないから・・・」
*
「レクレール」
唱えると翳した手から閃光がはしり朱兎を焼いた。
「終わりっと・・・」
焼けた朱兎から角を採って、依頼達成。
ル・ノワール・ファンの他にあった魔法、レクレール。
これは光属性の魔法の中では初級中の初級で、しかも全ての魔法の中で一番威力が低いらしい。
でも、魔法の威力は使用者の魔力に左右されるし、強化もできるから何も問題はない。
今ので朱兎くらいの魔物なら倒せるってことも分かったし。
「でも、普通ここまでの威力は出ないんだけど・・・」
ハクアはそう言っていたけど、あたしも魔法なんて物は生まれて初めて使ったからね。
ついでに補足としてだけど、魔法は使う際に強くイメージをして使うと威力が上がったりするらしい。
他にも形を変えたり、軌道を変えたり、時間差で発動できたりとか。
「さて、帰ろうか?」
「うん」
袋に角を入れて、歩いて帰るのも疲れるから飛んで帰ることにした。
スキル全然使ってないな・・・。
*
「確かに。こちらが報酬となります」
「「ありがとうございます」」
銅貨十枚を二人で五枚に分ける。
「これで依頼のことは分かったよね?」
「うん。あ、そういえばこの『D』ってなに?」
「ランクだよ。今わたしたちは一番したのDランク。依頼をこなしていけば勝手にポイントが加算されて、一定のポイントが貯まったら、勝手に上がっていって表示も変わるから、余り気にしなくていいよ?ちなみに最高ランクはS」
「そっか。それじゃ、宿に帰ろう?お風呂入りたい」
「うん」
「それじゃ、お姉さん。またよろしくお願いしますね?」
「え?あ、ええ!もちろん、またね?」
お姉さんに手を振って、ギルドを出て、あたしたちは宿に戻った。
お姉さん、嬉しそうだったけど、何かいいことあったのかな?
まあ、いいか。
お風呂、お風呂。
亜「魔法とか街の名前って、どこかの言葉なの?」
作「フランス語だけど?」
亜「なんで、そこ選んだの?」
作「なんかフランス語って格好良く聞こえるじゃん?」
亜「まあ・・・分からないでもないけど・・・。それで?今回あたしが使ったレクレールってどんな意味?」
作「閃光って意味らしいよ?ル・ノワール・ファンは漆黒と終焉って言葉を合わせてみた」
亜「へ~。じゃあ、お風呂はなんて言うの?」
作「アンバン、だってさ」
亜「アンバンねえ・・・まあ、いいか。それじゃね?」
作「あいよ~」