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高町亜美の物語  作者: 大仏さん
第三章―眠れる龍―
28/31

―体温―

作「えっと・・・リリアを呼んで見た所、忠実に亜美の言いつけを守っているようで、見事に無視されました。そんな訳で一人では話すことが無いので、リリアの活躍を見守ってあげてください。はあ・・・」



あみ達と分かれて、魔物を倒すことになって、あたしは今集団の前に立っている。


そういえば、黒獣の時は魔物だったから言葉が分かったけど、今はただの鳴き声にしか聞こえない。


別に困ることは無いからいいけど、最初は少し混乱した。


なんて、少し前のことを考えていると、魔物達が飛びかかってきた。


それと同時に、森の方へと吹き飛んでいく魔物達。


「あ~あ『グオ!』手伝い『ギャオン!』ったのに・・・」


言いながら、向かってくる魔物を殴ったり蹴ったり掴んだりして少し残念に思う。


でも、あみはやっぱり強いな・・・黒獣の時にあみに感じた物が何なのかは目覚めてからも、分からないけど、いつか分かるかな?


分かるといいな。


「よし。あたしも早く行こう。あみいいい!まっててねえ!」


手伝いはできなかったけど、そんなの関係なしに早くあみの側に行きたい。


『ガアッ!』


『ギイイイ!』


他の魔物よりも少し大きな、多分この集団の中ではいちにを争う強さを持った二体の魔物が地上と上空から攻撃を仕掛けてきた。


『ガルー』と『ワーゾン』。


ガルーは全長約五メートルの狼の様な魔物。


風属性の魔物で周囲には常に風の膜が張られていて、魔法なんかは並の威力ではその風に阻まれて届かない。


加えて物理攻撃の威力も半減させ、力の差が大きいと全くダメージを与えることはできない。


ワーゾンは雷属性の大きな鳥型の魔物。


羽毛一枚一枚に微量だけど、雷のマナが溜められていてその翼で直接攻撃をしてきたり、羽を飛ばして攻撃してきたりする。


でも、結局攻撃に当たってしまえば、そのマナの影響で体が麻痺してしまうという、厄介な効果を持っている。


この二体の力はほぼ互角。


それなら。


突っ込んできたガルーをバックステップで躱して、そこをねらって爪を振り下ろして来たワーゾンも躱す。


今の一撃で、ついさっきまであたしが立っていた場所の地面は爪に抉られ、大きな傷痕がそこに残った。


でも、爪にはマナが無いから食らったとしても、血が出るだけで済む。


あたしは、麻痺よりはそっちの方がまだマシだ。


痺れるといつもの半分以下の力すら出せなくなる。



ガルーがあたしの背後を取り、ワーゾンが前に来る。


他の魔物達はこの二体に命令でもされたのか何もしてこない。


その様子を確認していると、後ろからガルーが攻撃を仕掛けてきた。


振り向くと、ガルーが爪を振り下ろそうとしている。



「あの時とは逆か・・・」



あたしがあみに爪を振り下ろそうとした所で、あみは焦ることも慌てることもなく真っ直ぐにあたしを見ていた。


そして、技を放ち、あたしの黒獣としての生涯は終わった。


あたしには、居合いなんてできないけど、殴り飛ばすことなら、みんなの中では一番自信がある。


『ガアッ!』


「甘いよ!ハッ!」


『ゴアッ・・・!』


振り下ろされた爪を躱して懐に潜り込み、ジャンプの勢いを上乗せしたアッパーをお腹に繰り出すと、膜を突き抜けて拳はお腹にめり込んだ。


それによって、少しだけ体が浮く。


あたしもまだまだ甘いか・・・。


着地してガルーの下から出ると、もろとも攻撃をしようとしていたのであろうワーゾンがマナを嘴の一点に集中させていた。


かなりの量を集めているのか、バヂバヂというすごい音を立てている。


「こんな所で、そんなのを撃ったら―――」


ワーゾンの上空に跳躍して


『ギュワ!』


「みんなに迷惑でしょ!」


『ギュ!』


組んだ両手を頭に叩き落とした。


変な鳴き声を上げながら地面に向かって真っ直ぐ落下していくワーゾン。


軽い痺れを感じながら着地すると、ガルーもワーゾンも目を回して気絶していた。


そして、他の魔物達を見ると、次は自分たちがこうなると思った様で一目散に逃げていった。


「ふう・・・よし、あみの所に行こう」


「あ、リリア、終わったの?」


「う?」


呼ばれて振り返ると、そこにはラーニャとハクアがいた。





あたしが目を覚ました時、目の前には目を閉じているあみがいた。


やっと、本当の意味で会えたことに感激して抱きついたけど、あみは目を覚まさなかった。


誰かが近づいて来る気配がして見ると、そこにはラーニャがいて、最初はあみの敵かと思った。


あみが眠っている間に何かをしようとしているのか、と。


でも、後ろに立っていたハクアを見て、あの時あみと一緒にいた娘だと分かり、ハクアもあたしが黒獣だと分かったみたいだった。



事情を聞いて、あみが二年前から眠ったままずっと目を覚ましていないということが分かって、その原因はきっとあたしだろうと思った。


あみはあたしの過去を見たと言っていた。


でも、その間の時間がこっちとはずれていて、あみはまだあたしの過去を見ている途中だった。


だから、あと何年かはあみが目を覚まさないことは分かっていた。


それなら、その間はあたしがあみを護ろうと思った。



色んな所に行って、色んなものを見て・・・人としての視点で見る世界は、新鮮だった。



見るだけで、十分楽しかったけど、あみも一緒ならもっと楽しいと思った。


でも、あみはその時もまだ眠っていた。



雪の降る街、コネージュに着いて、宿を取ってからもあたしはずっとあみの側にいた。


それが、あたしが願ったことだから。


でも、そのあみが何も言ってくれないんじゃ・・・。



あみの手を取り、ぎゅっと握った。


その手は、とても温かかった。


不意に、ママの温もりを思い出した。



朝起きると、いつもあたしを見ていたママ。


ごはんを取ってきて、必ずあたしの分を多くしてくれたママ。


昼寝をする時、あたしを護るように眠るママ。


夜中々寝付かないあたしを叱るママ。



短い間しか、一緒にいられなかったけど・・・どんな時もママは温かかった。


あみから感じる温もりは、ママのそれと同じだった。


その時、あたしはあみを護ることを改めて心に決めた。


もう、大切は存在が失われるのは見たくない。


そう思った。



一ヶ月程経過した時、街で毎年開催されている祭りがあるとのことで、ずっとあみの側にいたあたしは女将さんに無理矢理連れ出されて、ハクア達と祭りを見ることになった。


そこには、今まで見たことも無い数の人がいて、みんな笑っていた。


少しだけ見て回った所で、やっぱりあたしはあみの所に戻ることにした。


でも、途中で女将さんに見つかってしまって、逃げてなんとか振り切った。


宿が見えて来た時、また見つかったら面倒だから思いっきりドアを開けた。


すると、


『うわ!びっくりした』


と声が聞こえた。


その声は、あたしがずっと聞きたかった声。


見てみると、一つのテーブルに着物を着て、雪の様に白い髪をしている女の子がいた。


その姿を見た瞬間、あたしは駆けだしてあみに抱きついた。



やっと会えた。



今度こそ、本当の意味で。





「アミは一番早く終わったみたいだね?」


「わたしの所からは見えなかったなあ・・・」


『ラーニャはんが、魔法をばんばん撃ってるのは分かったけどな』


前を歩くラーニャとハクア、フュズィの会話を聞きながら、あみの所へと向かう。


空を見上げると、そこには輝く太陽とどこまで続く青い空があった。



「みんなー!」


「あみ!」


「「はや!」」


駆け寄ってくるあみにあたしも駆け寄り、自分よりも少しだけ小さなその体に抱きついた。



やっぱり、あみは温かい。



リ「あみ、頑張ってね!」


亜「ありがとう。さて、行くよ?ムラマサ」


ム『ああ。どれくらいで終わらせる?』


亜「一分」


ム『了解』


リ「むう・・・」


亜「リリア、格好良かったよ?じゃ」


リ「!うん!行ってらっしゃい!ふふ、あみに褒められた」


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