―光輝―
亜「みんな、久しぶり」
ム『アミイイイイイ!会いたかったぞおおおお!』
亜「うお!危ないよ、ムラマサ」
ム『おお、悪い。あまりに嬉しくて』
ラ「この前まではあんなに沈んでたのに」
作「亜美効果だな。ハクアとフュズィも同じだ」
ハ「アミ!」
亜「ハクア、久しぶり。フュズィも。何も変わりない?」
ム『ああ。お前こそ、変わりないか?』
亜「うん、大丈夫。それで?あたしがここに来たってことは」
作「ああ。二.五章は今回で終わり」
亜「で、次回からは?」
作「それは後書きでのお楽しみだ」
亜「・・・なんか、今イラッと来た」
作「なんで!?」
あたしが、黒獣に押し倒されて軽く混乱している間に、どこに行っていたのかは分からないけど、ハクア達が帰ってきた。
あたしが起きているのを見て、なにかとても嬉しそうに駆け寄ってきて、黒獣と同じようにあたしに覆い被さって来た。
「ちょ!潰れる、潰れる!」
あたしがそう言うと、ハクアとラーニャはすぐに離れてくれた。
ムラマサは思っていた通り、ラーニャが持っていた。
『おい、お前も離れろ』
「あたしに命令していいのは、あみだけだもん」
「あ、じゃあ、とりあえず立ちたいから少し離れて?」
「わかった」
あたしの言葉にはすぐに従ってくれた。
立ち上がって、着物に付いた埃を軽くはたいて落とし、ラーニャからムラマサを受け取り、腰に差す。
『やっぱ、ここが一番落ち着く』
「む~・・・」
何か不満気な声が聞こえて、黒獣を見ると頬をぷくぅ~っと膨らませていた。
可愛い。
と、それは置いておいて、
「そんなに長い間離れてた訳じゃ無いでしょ?」
いくら寝ていたと言っても、そんな何年も何十年も寝ていた訳では無いだろうし。
確かに髪が伸びたけど・・・。
「何言ってるの?アミは十年も眠ってたんだよ?」
「・・・・・・・・・はい?」
全く予想していなかったラーニャの返答にあたしは間抜けな声を上げた。
*
「えっと・・・プレールのお風呂に入ったあたしが、どれだけ経っても出てこなかったから、様子を見てみると寝ていて、運んだはいいけど、それからも一向に目を覚まさず色んな医者やら薬草やら試したけどそれも効かなくて、結局は手段が無くなってしまって、目を覚ますのを待っていた、と」
今の状況を纏めると大体こんな感じかな?
あ、場所はさっきまであたしが寝ていた部屋です。
『ほんに気がきやありまへんでしたで?どれだけ呼びかけても、なんの反応も返ってきいへんから・・・ムラマサはんなんか発狂してましたさかい』
『ば!それを言うんじぇねえよ!』
「まあまあ、いいじゃない。アミが目を覚ましたんだから」
『あ・・・それもそうだな』
ハクアの一言でなんとか騒ぎかけていた場は収まった。
その後も色々話を聞いて、この街がウルベリア最北に位置する街『コネージュ』であることが分かった。
宿に人が少ないのは、今の時期は年に一回の祭りが開催されているから。
それなら、宿が賑わっていても可笑しくないと思ったけど、女将さん自身がお祭り好きな為、毎年祭りの時は使っていないみたい。
あたし達は祭りが始まる前に来て、その間もあたしが眠っていたから使わせて貰っていたとのこと。
「そうなんだ・・・ごめんね?心配掛けちゃって」
謝るとみんな気にしてないと言ってくれた。
「・・・・・・・」
話を聞いている間、黒獣はさっきあたしが少し離れていて、と言ったからなのか、ずっとくっついてくることはせず、耐えるようにぷるぷると体を震わせている。
そんなに我慢しなくてもいいのに・・・。
「おいで?」
両手を広げてそう言うと、
「わん!」
と鳴いて飛び込んできた。
また勢いがあったから、さっきのように押し倒されたけど、今度はベッドだから大丈夫。
「ねえ、君がこっちに出てくるには、十年は必要だったんじゃないの?」
頭を撫でながら、気になっていたことを聞く。
子犬ちゃんは夢の中で、牙にマナが溜まるまで少なくとも十年は必要だと言っていた。
でも、あたしが眠っていたのは八年。
まだ二年ほど足りない。
「ううん。ちゃんと十年経ってる。夢の中だったから、全然分からなかったと思うけど、あみがあたしの過去を見ていた約八年。その間もマナは牙に溜まってたの。でも、どうしてかその間の時間とこっちの時間が合っていなかった」
「え?それって・・・えっと、夢では八年が経っていたけど、こっちではそんなに経って無かったってこと?」
どういうことだろう?
夢の中で何かがあった訳でも無いと思うけど・・・。
ん?
「それじゃあ、君はどれくらい待ってたの?」
「多分、六年くらい」
「てことは、実質夢を見ていた間に流れていた時間は、二年か・・・どうしてこんなに差が出たんだろう?何か思い当たることある?」
黒獣はあたしにくっついたままの状態で首を横に振った。
ハクア達を見ても、同じ反応。
「・・・・まあ、いいか。これからよろしくね?」
「うん!」
黒獣は元気に返事をした。
「それで・・・えっと・・・」
でも、打って変わって今度はもじもじとし出して、顔を赤くしている。
そのまま、あたしの顔を見ては逸らし、また見ては逸らすを繰り返していた。
それを見てまた可愛いと思ったあたしは、可笑しくないはず。
「あの・・・」
「ん?あ、名前のこと?」
「!」
言うと、目を見開いてあたしを見ながら、こくこくと何度も頷いた。
「そうだね。六年も待たせちゃったんだもんね」
「ううん。ずっと、どんな名前を付けてくれるのか楽しみにしてたから」
「うん。ありがとう、ずっと待っててくれて」
背中に手を回してぎゅっと抱きしめる。
「その子、アミが起きるまではどんな名前も名乗らないって、頑として譲らなかったんだよ?」
ハクアの言葉を聞いて抱きしめる力を強くする。
『さっきみたいに、誰かが命令したりすると、全く同じ反応を返してさ・・・結構大変だったんだ』
『今日は祭りやってことで、女将さんに無理矢理連れて行かれてしまいましたけど、今日の朝まで、ほんに片時も離れんかって・・・苦労しました』
「無理矢理離そうとすると、暴れられたもんね?」
六年の間に色々あったらしい。
『あ、でもよ、そいつ戦いとかに関しちゃかなりのもんだぞ?』
「あ、そうそう!樹海を通った時に面倒な敵が出てきたんだけど、一回も攻撃させずにあっさり倒したり!」
「空気の匂いから、いつ雨が降るとか、雪が降るとかそういうのも分かるの!」
『上手く気配を隠している敵の位置も寸分違わず割り出すことができたり。まるで、アミはんの力をそのまま受け継いだみたいでした』
起き上がった所で、ムラマサが言ってそれにハクアとラーニャが興奮しながら言ってきた。
フュズィはいつも通り。
「そっか。頑張ったね?それから、ありがとう。みんなの助けをしてくれて」
「あたしはあみを助けただけ」
「ふふ、そっか。でも、結果的にみんなも助かったから、やっぱり、ありがとう」
「・・・うん」
さらさらの髪を撫でると、気持ちよさそうに目を細めて小さく頷く。
「―――リリア」
『え?』
みんなが、いきなりの言葉に首を傾げた。
「リリア。それが、貴女の名前だよ?」
撫でていた手を頬に添える。
「リリア」
「うん。どうかな?」
復唱する黒獣にそう聞くと、
「リリア」
今度は笑顔で、その名を復唱した。
「うん。あたしの名前は―――リリア」
「リリアか・・・いい名前だね」
「うん」
『なにか、響きがいいどすな』
『何か意味とかあるのか?』
ハクア達もこの名前を良いと言ってくれて、ムラマサが最後にそう聞いてきた。
あたしが頷くと、真っ先に聞いてきたのは、リリア本人だった。
「昔ね?少し興味があって、異国の言葉を調べたことがあるの」
『チキュウ、とかいう世界のか?』
「そう。それで、ブリリアントっていう言葉があって、その言葉の意味が『光輝く』っていう意味だったんだ」
「光輝く?」
リリアは首を傾げる。
あたしはまたその頭を撫でた。
さらさらと流れる髪の感触が心地良い。
リリアも気持ち良いのか、頭を手にすり寄せてくる。
『でもよ、リリアの属性は闇だぜ?』
「うん。でも、だからって暗い訳じゃない。折角、こうして新たな命として生まれたんだから、その未来が輝くことを願うのは当たり前でしょ?だから、『ブリリアント』から、間の『リリア』を取って」
「『リリア』」
あたしの言葉に続いて、リリアがその名を言った。
名前と言うのは、不思議だ。
『リリア』という三文字で、リリアは喜んでいる。
人によっては、自分の名前が嫌いだって言う人もいるけれど。
きっと、その何文字かには、大切な意味が込められている。
リリアの様に。
願わくば、この娘達の未来が輝かんことを―――
リ「あみ、これからはずっと一緒だね?」
亜「そうだね。待たせちゃった分、たくさん遊ぼう」
リ「うん!」
ハ「いいなあ」
ラ「そうだね。でも、ボク達もアミとは一緒にいられるんだから、大丈夫だよ」
ハ「・・・そっか。そうだよね」
ム『心配しなくても、アミがお前達のことを忘れたりするなんてことはあり得ないんだからな』
フュ『そうです。アミはんは、うちらのことみんな、大切に思ってくれてはりますから』
作「なんか、パーティの母親的ポジションだもんな?」
亜「はいはい。それで?三章はどんな話にするの?リリア、この人は危険だから、貴女は口きいたら駄目よ?」
リ「うん」
作「(そういう所が、だよ)三章は、契約者に会いに行こうと思ってる」
ム『お、やっとか?』
作「ああ。前にハクアが言ってたいつでも寝ることができる奴に会いに行こうと思ってる」
ハ「あ~・・・あの娘は結構大変かも・・・」
亜「どうして?」
ハ「・・・会えば分かるよ」
亜・ム・フュ・ラ・リ・作「『?』」