表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高町亜美の物語  作者: 大仏さん
第二.五章―リリア―
19/31

―過去―

作「昨日は結構長くなるかもって言ったけど、もしかしたらすぐに終わるかも」


ハ「あれ?そうなの?」


作「ああ。多分後、二~三話位。良かったな!ムラマサ!結構早くアミに会えるぞ!」


ム『本当か!?』


作「おうともさ。少しの我慢だ」


ム『ああ!』


ラ「嬉しそう」


フュ『ムラマサはんは、ほんまにアミはんのこと大好きやからな』




いつの間にか眠っていたのか、閉じていた目を開けるとそこは白以外何の色も無い空間だった。


そして、少し遠くには小さな黒い点があり、少しずつこちらに近づいてきている。


見えてきたのは、すっかり見慣れた黒い毛に覆われた小さな体と蒼く光る綺麗な瞳。


小さな尻尾をぱたぱたと振って喜びを表現している、この空間に現れる唯一の存在である子犬ちゃん。


『ワン!』


元気に吠えて、勢いそのままに飛びついてくる子犬ちゃんをしっかりと抱きとめて、頭を撫でる。


『君は相変わらず元気だね』


言いながら、今日は何をしようかと話しかけると、しばらく悩んだように唸り、やがて腕から飛び降りると地面、と言っていいのか分からないけど、そこに寝ころぶ子犬ちゃん。


どうやら寝るみたいだ。


あたしも隣に寝ころんで、子犬ちゃんをそっと抱く。


前にもあったけど、夢の中で寝るというのは可笑しくて少し笑えてしまう。


なんてことを考えながら子犬ちゃんを見ると早くもうとうとしていて、とても眠そうだった。


『お休み』


『クゥ~ン・・・』


小さく鳴いて、その後すぐに聞こえてきた寝息。


やっぱり子どもだからなのかな?


寝る子は育つって言うから、たくさん寝るんだよ?


だからって寝てばかりじゃ駄目だけど。



あたしも目を閉じて、子犬ちゃんの規則正しい寝息を聞いている内に意識は闇に落ちた。





夢を見ている。


夢の中で夢を見るっていうのは、初めてのことだけど、こんなにはっきり夢だって分かるのも初めてだな。


子犬ちゃんが出てくる夢もはっきり分かるけど、ここまでじゃない。



この夢では、あたしは第三者の立場の様で、上空から地上を見下ろしていた。


そこは雲も突き抜ける大きな山で、頂上には全長十メートルはあろうかと言う鳥が立っている。


金色の羽毛に包まれ、頭の毛は後方に流れるように生えていて風に靡く。


瞳はルビーの様に深紅に染まっていて、圧倒的な力を感じる。


どうして山頂に立っているのかは分からないけど、多分一番落ち着くところ何だろう。


麓には湖があり、周りは大きな木に囲まれている。


この山全体に、結構な数の魔物が棲んでいるのか、辺りからは鳴き声や木が倒れる音なんかが聞こえている。


鳥を見てみると、じっと下を見ていて、あたしもまた下に視線を戻す。


すると、湖を囲んでいた森から二体の魔物が出てきて水を飲み始めた。



その二体の魔物の名は『黒獣』。



一体は五メートル程の大きさ、もう一体はまだ一メートルにも満たない程の大きさ。


おそらく親子だろうその二体は、仲良く水を飲んでいる。


やがて水分補給が終わり、今度は親が子の体の毛繕いを始めた。


気持ちよさそうに目を細めて、子どもは親の毛繕いを受けている。


顔や背中、脚を済ませて、今度は仰向けにさせてお腹を舐める。


やがて、子どもは気持ちよさに目を閉じ、そのまま夢の中へと旅立ち、親は子を護るように伏せの姿勢で座り、優しい瞳で子を見守る。


それはとても心温まる光景だった。


そんな光景を、鳥も見守っている。


この鳥は・・・・・・何なんだろう?


魔物・・・とは言えない。


全く別の存在の様な・・・不思議な感じ。


でも、こんな存在には会ったことがない。


この状況も会っている、とは言えないかも知れないけど。



考えても分からないか・・・。



また視線を親子に戻すと、母親も同じように眠っていた。


この森がどこなのか、なんて知らないけど、周りにはたくさんの魔物がいるのに大丈夫なのかな?


それとも、湖には魔物が近づかない・・・なんてことはないか。


それならどうしてこの親子は近づけるのかって話になるし。



動けないのかな?



考えは全く別の方向にシフトして、あたしはこの場所で動くことができないのかについて考え始めた。


まずは腕を動かしてみようと、力を込めるとなんのことはない。


簡単に動かすことができた。


足もちゃんと動く。


それを確かめて、あたしは少し探索をしようと思い空を歩こうと足を動かした。




――人の子よ




でも、突如聞こえた声に動きを止める。


男性の声にも女性の声にも聞こえる、不思議な声。


なに、この声は?


いや、そんなことよりどうして夢の中の筈なのにこんな語りかけるような声が聞こえるの?


頭に直接響く様な声が・・・。




――驚かせて済まぬな。だが、心配するな。妾はお主になにもするつもりはない




『だれ・・・なの?』



聞こえる声に、問いかける。



――先ほどからお主の目の前にいるであろう?



言われて思い当たったのは、山頂に佇む大きな金色の鳥。


『あなたなの?』


――そうだ。今、お主は精神だけが時を遡っているのだ・・・俄には信じられぬがな。おそらく夢を通じて、その様な現象が起こったのであろう


『遡る・・・ここは誰の過去なの?』


どういう訳か、あたしはその言葉をすんなり信じることができた。


ハクアと契約した時の分からないのに分かった感覚に似てる。



――先ほどからお主が見ていた者だ



言われあたしは、今も寄り添い合って眠っている黒獣の親子を見た。


それを肯定するように、鳥さんは頷き言った。



――もう間もなく、あの子の親は殺される



『―――ぇ?』



どういうことなのか、理解する前に、聞こうとする前にそれは起こった。



グオオオオオ!!



咆哮が轟き、次いで聞こえてくる轟音。


森の木々を薙ぎ倒しながら、十メートル程の蜥蜴の様な魔物が湖に向かって進んでいた。


その先には黒獣の親子がいる。


今の轟音で親子は目を覚まし、母親が子を護ろうと前に立ち迫ってくる蜥蜴を威嚇する。


やがて迫ってきた蜥蜴は、親子を見つけまた咆哮する。



――あの魔物・・・リザールは、この森に棲む魔物の中でも他の魔物とは一線を画している。並の魔物では、五分と持たぬであろう。無論、あの親子も例外ではない



この鳥さんなら、対抗することはできるだろうけど、動かない所を見ると助けるつもりは無いみたいだ。


それとも、動かない、ではなくて動けないのか。


どちらにせよ、鳥さんは何もするつもりはないみたいだ。



親子を見ると、既に戦いは終わった後で、リザールが横たわる母親に近づいている所だった。


子どもは、小さいながらも必死に吠えて母親を護ろうとしているけど、母親の鳴き声によって吠えるのを止めた。


その一鳴きにどのような意味が込められていたのかは分からない。


でも、それを聞いた子どもは母親とリザールに背を向けて森の方へと駆けていった。


それと同時に、母親は首もとに噛み付かれて、絶命した。



――これから、あの子は独りで生きていくこととなる。誰の手も借りられず、誰かを頼りにすることもできず、唯独りで・・・



これは過去に起こったこと。


それが分かっていても、何もできないというのは悔しい。



――お主が今何を思っているのかは分からぬ。だが、これは既に起こったことなのだ。どうすることもできぬ



あたしはその言葉に、何も返すことはできなかった。



――追いたければ追うがいい。ここで追わなければ、お主の精神は元の時間に戻る。そうなれば、二度とこの時間に来ることはできぬぞ?



それを聞いたあたしはすぐに翼を出して、子どもの後を追った。



あの子どもとあたしの間に何があるのか?


それは分からないけど、追わなければいけないと強く思った。





――妾の名は『フェルニクス』。人の子よ、次に会う時を楽しみにしているぞ?





ハ「なんだか、不思議な展開になってきたね?」


ラ「あの親子、可愛そう・・・」


ム『仕方ねえよ。野生の世界は常に弱肉強食なんだからな』


フュ『それが分かっていても、悲しいどすな・・・』


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ