―中身―
亜「今回か、次話でラ・メールに着くんだよね?」
作「予定ではね」
ハ「大丈夫なの?まだ全然進んでないよ?」
作「うん。だから飛ばす」
亜「うわぁ」
作「何だよ、その反応?飛ばすって行ってもあれだぞ?今回の戦闘はちゃんとやるぞ?んでもって、後は移動だけにする」
ハ「魔物が来たら?」
亜「どうせ、描写せずに倒した~で終わるんでしょ?」
作「・・・・・・」
亜・ハ「図星か」
荷物のことは気になるけど、今は魔物を一掃することがの方が先だ。
ちゃんと居る方の結界を厚くしたから、普通の頭を持ってる魔物なら、別の方向から襲ってくるだろうし、そこを叩けばいい。
昨夜見たく部下を盾代わりにして突っ込んで来る奴も居るかもだけど、無傷では済まないだろう。
「ハクア、打ち上げといて?」
「りょうか~い」
ホルスターからフュズィを抜き、上空に向けて三発、魔弾を放った。
「落ちてこないな?何なんだあれは?」
「トラップですよ。ハクアが決めた範囲に敵が侵入したら、そこに向かって一直線。何メートルにしたの?」
ライトさんの質問に答え、今回はどれくらいの広さにしたのか聞いてみた。
「三十メートル」
「丁度いいかもね」
「でしょ?」
フュズィを撫でるように手を動かしながら、ウィンクをするハクア。
相変わらず可愛らしい。
「だが、三発で足りるのか?」
今度はノエルさんが魔弾を見上げながら聞いてきた。
レイユちゃんはまだ眠っている。
「大丈夫ですよ。あれ一発で十発分はありますから。あ、そういえば数は?」
「ざっと五十」
「「ごっ!」」
一瞬声を上げそうになったライトさんとノエルさんだったけど、レイユちゃんを起こさないように何とか堪えた。
さっきの発砲音でも起きなかったんだから、多分大丈夫だとは思うけど・・・。
「五十か・・・問題ないね」
「うん。二発で一体仕留められれば、後は界で十分でしょ。あ、そうだ・・・ライトさん」
「・・・え?あ、なんだ?」
少し遅れて反応したライトさんにあたしは依頼人から、荷物について何か聞いていないかを聞いた。
「なにか、ってのは?」
「あたし達、今まで長期のクエストを受けたことは無いんだけど、一週間位掛かるクエストは何個もあったんです。でも、その時も、休んでいる所を二日連続で襲撃を受けたことはありませんでした」
「それなのに、昨日夜に襲撃を受けたにも関わらず、今もこうして狙われています。確かにニュアージュから離れては居ますが、この近辺の魔物の強さは、ニュアージュ周辺の魔物と大差ありません。気を付けなければならないのは、黒獣と白獣、この二体くらいです」
「昨日の魔物は実際、ニュアージュ周辺の魔物と大して変わりません。昨日の所からも、そんなに離れてませんよね?」
あたしの問いに、ライトさんが頷き、あたしが言いたいことが分かったのか、言葉を続けた。
「昨日のことを知っている魔物は多い。ならば、何故尚も狙い続けるのか?と言うことだろう?」
あたしとハクアは頷いた。
かなり遠回しに言ったけど、結局聞きたかったのはそこ。
魔物にだって人間達と同じように情報網が存在する。
昨日の戦いを見ていた魔物はいくらでも居るだろうし、なにかの群れの一員なら、伝えている筈だ。
今こちらを狙っている魔物の中にも、数は分からないけど間違いなく居るだろう。
それなら、あたし達が自分たちより強いってことは分かってる。
にも関わらず、狙っている。
「昨日は数が少なかったから分かりませんでしたけど、今狙っている奴の大半は荷物の方を狙っています。一体、何があるんですか?あの荷物に」
箱や袋に入っているから、中身は分からないし、特別な力を発している訳でもない。
単に感じ取れないだけなのか、何の力もないのか・・・。
「俺たちも一部しか聞いていないが、あの荷物の中には何か生物が入っている」
「生物?」
「ああ。アミが気づかなかったのは、荷物全てに気配遮断が掛けられているからなんだ。ただ、術者が未熟な所為なのか、魔物には効果が無いときた」
「・・・そこはどうでもいいです。その生物がなんなのかは・・・」
「教えてもらえなかった」
首を振りながら、ライトさんはそう言った。
「ホー!」
「来るぞ!」
白梟が鳴き、敵の接近を告げた。
約二秒後、敵が攻撃範囲に入り、魔弾が魔物居る方へ向かっていった。
遠くで何度か聞こえる魔物の声。
「ライトさん、馬車を下げてください。やはり待つのは面倒なので、一気に行きます。ハクアは後ろをお願い」
「了解」
後ろは任せ、馬車が下がったのを確認してムラマサを水平に構え、
「居合い術一式・二ノ型―――一文字」
ヒュン!
全身の力を一瞬抜いて振り抜き、鞘に戻す。
敵の姿は見えていなかったけど、問題なし。
まあ、
ズシン!ズシン、ズシン!
直線上にある木もお構いなく斬り倒すんだけど・・・。
今更だけどあたしが使う、居合い術一式は炎帝以外は全て無属性の攻撃。
黒獣と戦った時に使った陽炎も、レクレールを使ってはいるけど無属性。
未開紅はレクレールも使わない、純粋な無属性の攻撃。
今使った一文字も同じく、無属性の攻撃でただ水平に振り抜いただけ。
だから一文字。
「終わったよ」
「うん。こっちも終わった」
「音しなかったけど?」
発砲音なんて一度も聞こえなかったのに。
「わたしだって日々成長しているんだよ」
そう言って小振りな胸を張るハクア。
人のこと言えないけど、なんか・・・頑張れって思ってしまった。
*
魔物が退いたのを確認した後、あたしはライトさんに手伝ってもらい、全て荷台から降ろして気配遮断を斬った。
そうすると確かに、荷物の中から人の気配を感じた。
「ここまで起きていないのは、眠らせられているからですか?」
「分からない。俺たちは本当に生物であるということしか聞いていないんだ」
「そこを疑っている訳ではありませんよ。ここまでの騒ぎで目が覚めていないのか、それが疑問なんです。まあ、この際レイユちゃんは例外として・・・」
レイユちゃんはさっきの戦闘の際もずっとノエルさんの腕の中で眠っていたけど、この中に居る人もそうだとは限らない。
もし起きていたとしても、声を出していないのは単に怖いからなのか、言葉を話すことができないからなのかは分からないけど・・・。
「はは・・・」
「とりあえず、開けますよ?」
「は?いや、いいのか?そんなことして」
「あたし達が受けた依頼は荷物の護衛であって、人身売買じゃありませんから」
ライトさんの言葉には構わず、あたしは木箱の蓋を開けた。
すると
ぴょこ
と、なんとも可愛らしい音を立てて猫耳が姿を現した。
『・・・・・・・・・』
あたし含め、全く予期していなかった出来事になんと言えば良いのか分からず、暫くこの場にはレイユちゃんの規則正しい寝息が響いていた。
*
「えっと・・・助けてくれてありがとう。ボク・・・あ、名前ないんだった」
降ろした荷物をまた全て戻して、猫耳に尻尾、茶髪のショートでふわふわした髪型をしていて、目は黒く、あたしよりも小さな(ここ大事!)女の子と一緒に荷台に乗ると、女の子が唐突にお礼を言って名乗ろうとした。
でも、名前が無いということを思い出して途中でそれは終わった。
「とりあえず、自己紹介するね?あたしは、アミ・タカマチ」
「わたしはハクア」
そこに疑問は感じたけど、それよりも先に、名乗ることにした。
まあ、それとは全く関係ないことなんだけど、ライトさん?
もう少しバレないようにこっちを気にした方がいいと思う。
バレバレだよ・・・。
「アミ、ハクア」
女の子はあたし達の名前を復唱した。
「その子とその子は?」
そういって指されたのは、他でもないムラマサとフュズィだった。
「名前、あるんでしょ?良かったら教えて?」
「分かるの?ムラマサ達のこと」
「ムラマサって言うんだね?その子は?」
ハクアの膝にいるフュズィをさして、女の子がもう一度聞いた。
「ル・フュズィだよ。愛称はフュズィ」
「ムラマサにフュズィ・・・アミに、ハクア」
また、あたし達の名前を復唱する女の子。
「ねえ、あなたはどうして名前がないの?」
直球だけど、特に言い回す必要性を感じなかったらそう聞くと、予想どおり女の子は直ぐに答えた。
「えっとね・・・キオクソウシツっていうやつ」
と・・・。
ム『予告なしで新キャラが出てきたぞ?』
フュ『しかも記憶喪失なんて・・・ベタやな・・・。どうせ、名前も決まってないんと違いますか?』
ハ「ううん、ちゃんとあるみたいだよ?」
亜「珍しいわよね・・・、あんたが予め決めておくなんてさ」
作「お前らの俺に対する評価ってどうなってんの?」
亜・ハ・ム・フュ「『無計画』」
作「・・・・・・・」
亜「図星か・・・あ、前書きと終わり方一緒だ。まあ、いいか。
それではまた次話でお会いしましょう!」
ハ「ばいば~い」