―休日―
ム『一ヶ月後』
ハ「え?何が?」
フュ『今回は前話から一ヶ月後の話らしいどす』
ハ「ああ。それで、何かあるの?」
作「いや、特に何も起きないよ。多分」
ハ「多分って」
ム『またアバウトだな』
作「そういや、アミは?ここにいないの初めてだけど」
ム『ああ。まだ寝てるよ』
作「珍しいな?いつもはもう起きてんのに」
フュ『まあ、ええやないですか。アミはんはうちらの中では一番子どもなんですから』
ム『だな』
黒い小さな犬が夢に出てきて、あたしはその子とじゃれ合っていた。
抱き上げると、頬をなめられてくすぐったくて、あたしもおかえしと言わんばかりにその子のお腹を撫でたりして。
夢なのに、とても現実感があって、なんだか不思議だった。
暫くすると、犬が急にそっぽを向いて駆けだしていった。
『あ!まって!』
呼び止めると、犬はチラリとあたしを見て
『ワン!』
と一声吠えて、走り去っていった。
「待って!」
「ひゃっ!」
「え?あ、ハクア・・・」
起きると、誰かの驚く声が聞こえて、見てみるとハクアが髪を整えていた。
おはようと、挨拶するとハクアも返してきて、どうしたのか聞いてきたけど、あたしも分からなかった。
でも、何か夢を見ていたことは覚えてる。
「最近多いね?飛び起きるの」
確かに・・・黒獣を倒してから今日までの一ヶ月。
あたしは今日の様に飛び起きることがよくある。
「何か心当たり、ある?」
「・・・多分、夢だと思う」
「夢?」
「うん。内容は覚えてないけど・・・今日みたいに起きる時は、必ず夢を見てる」
「嫌な夢?」
「ううん。そんな感じはしない」
「そう・・・それならいいけど」
心配してくれるハクアにお礼を言って、ベッドから降りて洗面台へ向かい、歯磨きと洗顔を済ませる。
「ムラマサ、フュズィ、おはよう」
『おう』
『おはようございます』
「準備できた?」
「うん」
着物を着て、髪をポニーテールに結び腰にムラマサを提げ、首から黒獣の牙を提げて、着物の下に入れる。
ハクアもホルスターを左足の太股に付けて、フュズィを差し込んで準備完了。
下に降りて、女将さんに挨拶をした後ごはんを食べて、ギルドへ向かう。
「今日はどうする?」
「う~ん・・・今までしてなかったけど、長期のクエスト受けてみようかな?いい加減他の街も見に行きたいし・・・。いい?」
「いいよ」
ハクアは二つ返事で了承してくれた。
と言うわけで、あたし達は今日初めて長期クエストを受けることになった。
長期クエストって言うのは、他の街までの護衛だったり探索に時間が掛かるエリアでの討伐・採取依頼のことを言うんだけど、これまでの十年間、なんとなく受けられずにいたんだよね・・・。
本当に何となく・・・。
「それで、どれ受ける?ラ・メールまでの護衛依頼にル・スィエルでの魔物討伐協力者依頼か・・・初めてだし、まずは簡単な物で慣れておいた方がいいと思うよ?」
「そうだね・・・。ル・スィエルの方が近いんだよね?」
「うん。ラ・メールより一ヶ月くらい早く着く」
「じゃ、護衛依頼の方にする。折角遠くまで行くんだから、途中で色々見たいし」
「分かった」
お姉さんの所に紙を持って行って、依頼を受ける手続きを済ませる。
「あら、珍しいわね?あなたたちが長期依頼なんて」
「はい。今まで受けてなかったら受けてみようと思って」
「そう。気を付けるのよ?」
「「はい」」
お姉さんといつの間にか出てきていたおじさんに手を振って、ギルドを出る。
「出発は明日だから、今日はゆっくりしてようか?」
「うん。そういえば、他にこの依頼を受けた人達ってどんな人なんだろうね?」
「まあ、気にはなるけど、明日になれば分かるからいいんじゃない?」
「それもそっか」
『変な奴がいないといいけどな・・・』
『その時はうちが斬ります』
フュズィが何か物騒なこと言ってたけど、とりあえず気にしないことにした。
亜「何も起こらなかったね」
ハ「偶にはいいんじゃない?」
作「そうそう。次話ではやっと他の街に向かうからな」
亜「どんだけ遅いのよ、って感じだけどね・・・」
作「うっせ」
ハ「あはは」